火けしねじり
倉井さとり
1
僕は多分、
同じ学年の女子が死んだ。その知らせは、まるで
授業中に鳴り響くSNSの通知。なのに怒るわけでもない先生。こんなに
僕はこんな大人にはなりたくないと
――死んだのは3組の
けたたましい様々な通知音は、どれも同じ内容なんだろう。
顔を寄せ合う女子、あからさまな
――朝の通学で電車にはねられたらしい――
問題の解けないのを
――体は
教室の
そんな
窓の外の、彼女の見つめる先では、遠くの
僕は星川さんと同じクラスになってから、ずっと彼女のことが気になっていた。同じクラスになるのは今年が初めてだったが、1年の頃から
でも彼女は普通とは違った。変わり者という
気になってはいながらも、僕は、彼女に一度も話しかけたことがなかった。
多分、この教室の
お祭りのような
「虫が好きなんだ?」と僕が声を
「虫が好きなわけじゃない」
反応をかえせない僕に、彼女はさらに言葉を重ねる。
「色が好き」
「いろ?」
「こんな
僕は
「それで、なんの
問いかけのニュアンスの
「……ん、ああ、いや、
うろたえる僕に顔を向けた彼女は、首をかしげもしないで、ただこちらを
「……いや、ほら、すごい
「そうかな。
「それは言えてるかも」
「これと私が、どう
「……ただ、君だけ、いつも
「へぇ。
「……好き?」
「そういう福田くんこそ、
「……ほら、ただ、うんざりしてて、人が死んじゃったってのに」
「いつも
「えっ?」
「これがみんなのいつも
「……いつも……」
「人がいつも
「……まぁ、確かに。でも
「これが、お
「……
「きっと、ミズコもよろこんでるよ」
「……よ、喜ぶ? こんなに
「ミズコは
「……。……というか知り合いだったんだね。ごめん僕……」
「知り合いといっても、たまに、一緒に帰るくらいだったから」
「そっか。ならよかった」
「ええ」
「ねえ」
「なに」
「もしよかったらさ、
「いいよ」
「ほんと?」
「どうして」
「いや、ほら、いつも
「
「グループ?」
「
彼女はそう言うと、
「ありがとう。そうだ、SNSはなにかやってる? よかったら交換しようよ。その方が簡単だし……」
「SNSは得意じゃないの」
「得意じゃない?」
「どうしても時間差があるから」
「時間差? ……うん、まぁそれは、メッセージだから」
「過去があいだに入るから」
「過去?」
「そう、過去。私と相手、2人でやりとりしているはずなのに、時間差があると、3人で話してるのと一緒になる」
「よく分からないけど……それはいけないこと?」
「過去はね、私たちの
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます