第13話

「村が龍人の契りの相手を殺害することを、”落とし前” と言います。その落とし前は今でも行われていると、父から聞いています」

「つまり、あの映像は落とし前だった、ということですか」

「はい。そうだと思います」


 倉持の質問に、隼人は答えた。


「ふうむ。要するにですよ。あの映像が落とし前という行為だとすれば、つまり映っているのはその当事者。林辰巳は、龍人と恋人になっていたということになりますよね。もし崎守家が把握している龍人が龍堂家のみだった場合、林辰巳の恋人は龍堂家の者だと絞り込めます。何せ落とし前を行う判断をするには、恋人の関係かどうかを把握する必要がある。その把握は龍人の家系を把握していないと不可能です」


 じろりと倉持は隼人を見た。


「龍堂家で林君と恋人になれそうなのは、同年代の龍堂尊さんでしょう。どうなんですか隼人君。林君は尊さんと付き合っていたんですかねえ?」


 倉持は何かを勘ぐっている様子だ。俺は口を挟まずに、隼人の返答を待つ。


「いえ。林の恋人は、僕の姉である、梓です」


 隼人は白状するように言った。


「なるほど。となると、崎守家は龍堂家の他にも龍人を把握していた。それを警察に伝えていない。ふうむ。ますます怪しいですなあ」


 恐らく倉持の中で、龍人と崎守家がグルである可能性が上がったのだろう。


「倉持さん、ちょっと待って下さい。龍人と村は対立関係ですよね。その二つが協力なんて、有り得ますか?」

「ふうむ、どうでしょうなあ。村がなくなればお互いが困るわけですから、有り得なくはないでしょうが……。確かに、久遠君の指摘通り現実味が無い様な気がしてきました」


 その後も話し合いを続けたが、特に何の進展もなくお開きとなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る