02 私、暴走



「ねぇっ、可哀想ですよね! 今の私、なんて可哀想っ!」


 私は話し相手になってもらっていた、道端の露天商に詰め寄る。


 異世界にいって、途方にくれた私。

 知り合いがいないので、頼れる人もいない。

 だから仕方ないので、話し相手になってくれそうな暇な人を探していたのである。


 そしたら、何か話しかけられたから。

 つい。


「お嬢ちゃん、嘘を吐くならもっと頭使って言わないと、誰も楽しんでくれないよ」

「嘘じゃなーいっ! 全部本当のことっ! これ証拠! ほら、魔導書! 私異世人! ここに知り合いいないの! 誰か助けてーいっ!」

「こらっ! 店先で騒がないでくれよ。まともな客がこなくなっちまうだろ」


 失礼な、私がまともな客じゃないとでも。

 そんな意地悪な事を言うおっさんなんて、こうしてやるっ。


「うわっ、やめろ、残り少ない髪をむしるなっ。ひげを掴むなっ!」


 がるるるるっ。


「誰か助けてくれーっ、おかしな嬢ちゃんに絡まれてるんだっ!」


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