アサシン・サイドキック

たみねた

アサシン・パーティー

「クソが……」


厄介な野郎だった。

流石に慣れてやがると言うべきか、恐ろしいアサシンだった。

俺は目の前で眉間と股間から血を流して倒れてる相手に弾薬を使い切った。


「ハイ、オシマイ」


声のした方向に、まだリロードが終わってない銃を構えた。

そこにはスーツの女がいた。

俺の師匠だ。


「ハイ、負けた」

「よろしい。予備の銃は?」

「これだけだ」


俺は咄嗟に銃を師匠の後ろへ投げた。

くるくると回転した拳銃は後ろから師匠に襲い掛かろうとしていたチェーンソー男の脳天をかち割った。


「おっと……」

「師匠、予備の銃くれ」


師匠はスーツから出したデリンジャーを投げ寄越してきた。

まだ俺の事をナメてやがる。


「よ、よろしい。これは貸しだ」

「おあいこだろ」


「逃がすな!」


「それにちゃんとした銃くれ」


BANG!

デリンジャーが火を噴くと、俺の後方で銃を構えてただろう野郎が悲鳴を上げた。


「ちゃんと構えて撃ってほしいね」


師匠は俺を押しのけながらきっちりと構え拳銃を撃つ。

BLAMN!

横で銃を構えてた野郎の脳髄がバラ撒かれた。


「これじゃ構えられねえよ」

「いつ何時でも構えるのがアサシンってものだ!」

「手榴弾!」


師匠がいつもの説教面でベラベラ喋り始めたところに、手榴弾が転がって来やがった。

今日は朝のニュースで俺の星座が最下位だったか?

俺は師匠を庇いながら咄嗟に転がった。

KABOOOM!

後ろで手榴弾の破裂音。

破片が俺に背中に突き刺さったのか、痛い。


「助手くん!」


師匠は心配そうな顔で俺の方を見てきた。


「庇ったな!半人前の癖に!」

「でも俺がいねえと生活すらできねえだろ!」

「痛い事を言うな君は!」


BLAMNBLAMN!

師匠は銃を連射した。

俺の後ろの方で、クソッタレどもの悲鳴が聞こえる。


「これは私の落ち度だ!あとでお菓子を買ってやる!」


師匠は俺の肩を持ち、立ち上がらせた。

どうやら俺はまだ師匠から見たら子供のようだ。


「主催者さんはどこにいるのやら!」

「調べてねえのかよ!」


BLAMN!BLAMN!

BLABLABLAMN!

師匠は俺を引きずりながら後ろのアサシンに拳銃を連射する。

後方ではクソッタレどもの苦痛の叫びが上がっている。

流石は師匠だ。

俺の肩を持っていても、ちゃんと銃弾を命中させてやがる。


「ホントはあの場で一発で仕留める予定だったんだ!」

「いや流石に無理だろ!」


BANG!

デリンジャーの最後の一発を立ち塞がってきたアサシンにぶち込む。

眉間を狙ったはずが、銃弾は肩に命中しやがった。

このデリンジャーがクソなのか、俺の腕前がクソなのか。

BLAMN!

怯んだアサシンに、師匠が正確に眉間に銃弾をぶち込んだ。


「まあそうだね!もう少し下調べした方が良かったかもしれないな!」

「良かったかもしれないなじゃねえよ!クソ、いてえ……!」

「この先に銃を隠しておいた!ショットガンとアサルトライフル!」

「医療キットは!」

「ある!」


BLAMN!

師匠が拳銃を遮蔽に隠れてやがったアサシンの喉に撃ち、股間を蹴り上げてノックダウンさせた。


「これを使え助手くん!」


呻いていたアサシンの頭蓋を踏み砕いた師匠は、靴で拳銃を蹴り上げた。

俺はそれをキャッチし、弾薬の数を確認する。


「この野郎四発しか弾倉に入れてねえぞ!」

「今ここはバトルロイヤル状態だ!きっと他のアサシンに弾をぶち込んだ」

「そりゃあ大変だ!」


半ばヤケクソに俺が叫ぶと、前方と後方からアサシンが現れやがった。

前方の野郎はサブマシンガン、後方の野郎は銃身を切り詰めたショットガンを持ってる。

どっちもやばい得物だ。


「こっちだ!」

「おわっ!?」


BLABLABLAMN!BLAMN!BLAMN!

俺と師匠は銃弾をばら撒きながら遮蔽に隠れた。


「主催者を殺すのは俺だ!」

「いいや俺だァーッ!」


さっきのアサシン達は敵同士らしく、撃ち合いを始めた。

師匠はふうと息を吐き、隙間に置いてあったショットガンを俺に寄越してくれた。

一方の師匠はアサルトライフルを持ってた。


「ポンプアクション!六発!それが銃に入ってるとの合わせて四セット!」

「十分だな!」

「あとこれ、痛いけどガマンだ!」

「ちょ、待てんがああ!?」


師匠は俺の制止も待たず、注射器を俺の腕に突き刺した。

刺された箇所から高騰感が俺の中を駆け巡り、痛みなんかどうでも良くなってきた。

アドレナリン剤を注射しやがったのだろう。


「ハァ……!これ、アドレナリンか?」

「そう!それでガマンだ!」

「医療キットってこれだけかよ!」


遮蔽のすぐ傍では他のアサシンのクソッタレたちが銃弾を叩き込み合っている。

今出るのは危険なのは、流石に俺でも分かった。

師匠も様子を伺っている。


「主催者のお通りだ!」

「血のレッドカーペットを敷け!」


「主催者……!?」

「どうやら主催者自ら来たみたいだね……!」


俺は師匠と同じように遮蔽から片目だけを出し、様子を伺った。

そこには、主催者と呼ばれてる白帽子に白帽子、赤いネクタイに白いスラックスとかいうクソッタレな恰好の壮年の男が、ガトリングガンやらアンチマテリアルライフルやらの重火器を持った黒ずくめのやつらにアサシンを始末させていた。

シャワーみたいにばら撒かれる銃弾はアサシンをバッタバッタと薙ぎ倒すように殺していく。


黒ずくめが殺し損ねたヤツは、これまたクソッタレな黄金装飾が施された拳銃で主催者自らが殺していた。

腕前もクソッタレのようで、二、三発撃ってやっと倒れていたアサシンの眉間に銃弾が命中した。


「アサシンは始末し終わったかね」

「いいえ、まだです。パーティー会場の方ではまだテーブルを遮蔽にして撃ち合いをしているアサシン達が」

「腰抜けどもが!ささ、始末しに行くとしよう。そろそろ見飽きたから、殺さないとね!」


クソッタレ主催者が。

パーティーに全国からアサシンを招待し、主催者が持つ黄金の小切手を争奪させるべく殺し合いをさせた挙句、アサシン達を自らの手勢に殺させる。

アサシンを一網打尽するゲームのつもりなのだろう。


俺が主催者をショットガンで狙おうとすると、師匠が俺を引っ込ませ、手で合図した。

一緒に殺す、と。

3、2、1……。


BRATATATATATATATATATATT!

BLAMN!BLAMN!

師匠と俺は同時に遮蔽から飛び出し、アサルトライフルとショットガンで銃弾をバラ撒いた。

咄嗟に黒ずくめたちが主催者の盾となって銃弾を受け、倒れていく。


「アサシンは殺したんじゃないかね!?」

「隠れていたようでアガァ!?」


重火器を持っていた主催者の護衛の黒ずくめたちは、師匠と俺のバラ撒いた銃弾でアッサリと片付け終わった。

主催者のクソッタレは血のレッドカーペットの上で尻もちをついた。


「よくやった助手くん!」

「俺は言われたとおりにやっただけだ」

「照れなくても良いんだぞ!」


師匠と俺は、アサルトライフルとショットガンを主催者に突きつけた。

主催者のヤツは恐怖に顔を染めている。

ナンデ、とか、ファック!とか、思っているのだろう。


「照れてねえ」

「まあそう言わずに。で、主催者さん。私達は黄金の小切手が欲しいんだけど、貰えますかね?」

「お、お前達のようなアサシンにやる小切手はない!」


案の定そう言うと思った。

師匠もそう思っていたらしく、俺と師匠は顔を合わせ笑った。

俺はショットガンをポンプアクションし、更に銃口を主催者の皮膚にねじ込んだ。


「どうなるか、わかってんだろうな」

「ふふふ、私の助手くんは血気盛んなお年頃だから、何をするかわかりませんよ?」

「わ、わかった!わかったから!持って行ってくれ!」


主催者は小さいポケットから黄金の小切手を取り出した。

この小切手の金額はなかなかなもので、良い装備を買っても一年は豪遊できるらしい。


「よし、確かに受け取りましたよ。主催者さん」


師匠は主催者のヤツから小切手を取り上げ、スーツのポケットに入れた。

そしてアサルトライフルを主催者に押し付けた。

師匠は俺に向かってウィンクする。

やることは理解できた。


「じゃ、さようなら。主催者さん」

「そうだな。クソッタレ」

「いや待て!私を殺せばどうなるか……」


BRABLAMN!

ショットガンとアサルトライフルが同時に銃弾を吐き出し、主催者をクソッタレな顔を屑肉に変えた。


「さて、パーティーは解散。私達は早めに帰ろっか」

「わかった」


師匠はアサルトライフルを担ぎ、来た道を帰っていく。

俺はその後を追った。

師匠の旅の同行はきついが、俺はあの人を殺さなきゃいけない。

そしてそれは、今日と決めている。

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