第111話叔父上対シャロン

 さて、いよいよ本丸に突撃をしかけるわけだが……。


「守りはどうしますかね……」


「ユウマ。我等ハーフエルフと、獣人族に任せよ。城の中では、魔法使いがたくさんいても邪魔だろうしな」


「……そうですね。すみません、ではお願いします」


「うむ、任された。其方も気をつけるのだ」


「ええ、ありがとうございます。では、皆行こうか」


 結局メンバーは俺、叔父上、シノブ、エリカ、ホムラ、そしてゼノスとなる。


 正直、エリカを帰そうかと思ったのだが……。


 実はこの国に入ってから、転移魔法が使えないんだよな……。


 何か、阻害されているような感じだ。


 まあ、エリカの強さが想定以上だったのは嬉しい誤算だな。


 これなら、足手纏いにはなるまい。


 何より、俺の中の何かが言っている……宝剣が必要と……。




 扉にを開けて、中に入る。


 中に入ると、天井まで5、6メートルほどの通路が続いている。


「ユウマ殿、なんかおかしくないか……?」


「そうですね……外観との差がありますね」


 見た目はただの大きな城で、こんな先の見えない通路はあるはずがない……。


「んー?どうなっているんでしようね?」


「ねー?」


「ですわねー?」


「そんなことはどうでもいい!行くぜ!」


「……おい、ユウマ殿。俺は、不安になってきたぞ?」


「……大丈夫です。俺もです……」


 しまった……!


 俺以外の人間は、猪突猛進タイプだった……!


「ユウマ殿……苦労してるな」


「わかってくれるか……ゼノス」


 そうこうしているうちに、叔父上は進んで行ってしまう。


「ユウマ!グズグズするな!行くぞ!」


「はぁ……まあ、いいか。考えたところで、わかるわけでもないしな」


「そういうことだな。では、行こうか」


 俺はゼノスに肩を叩かれ、歩きだす。





 15分ほど歩き続けると、広いホールにでる。


 天井の高さは10メートル以上はある。


 そしてドラゴンがいる………!


 その前には、奴がいる……!


「……来ましたね」


「よう、シャロン。久々だな?」


「そうですね、シグルド。剣聖大会以来ですね」


「なんだが知らないが、裏切ったそうだな?」


「それは、正確ではありませんね。シャロンーグラムは、国を裏切ったつもりはないでしょう。私は彼の闇につけこみ、この身体を支配したまでです」


「よくわからんが……お前は、シャロンではないってことか?」


「まあ、貴方に伝わるように言えば、もう一つの人格といったところですかね。厳密に言えば、転生した魂が蘇ったということですが」


「なるほど……二重人格ってことか。……元のシャロンが、裏切った理由はなんだ?アイツは、そんなヤワではないはずだ」


「そうですね……。強靭な精神と、肉体の持ち主ですから。理由は簡単です……貴方の所為ですね」


「……なんだと?」


「彼は、常々思っていました。何故勝てない?アイツがいなければ、俺が剣聖になっていたのにと」


「そういうことか……。ユウマ!こいつの相手は俺がする!ドラゴンは任せるぞ!?」


「了解です!思う存分やってください!


 さあ、こっちはこっちで気合いいれないとな!




 ▽▽▽▽▽



 さて、これでいいな。


 今のユウマなら、ドラゴン程度にやられはしないだろう。


「じゃあ、やるか?」


「ええ、そうしましょう。シャロンとしても、私としてもそれは一致していますから。私は王の天敵である貴方を。シャロンは新たな力で貴方を。それぞれ、殺したいと思っていますからね」


「そんな難しい話はしらん!強いか、弱い。ただ、それだけだ」


「……そうですね。では、行きますよ……!魔剣グラムよ!我に力を!!」


 黒いオーラがグラムから溢れ出る!

 一対一じゃ、1本でいいな。

 俺は地面に、ティルフォングを突き刺す。


「行くぞ!デュランダル!!俺に従え!!」


 デュランダルが唸りを上げる!


 そして、剣が交差する!


「ほう!腕は鈍ってはいないか!」


「この剣圧……!こうなれば……!」


 次の瞬間、シャロンが消える……!


「何!?どこだ!?……そこか!!」


 剣のぶつかる音が響く!


「なんと!?空間移動したというのに、見切ったのか!相変わらず、化け物め!」


「なんだよ、お前。そんなつまらんものに頼っているのか?そんなんだから、俺に勝てないんだよ。お前には期待をしてたのにな……つまらん」


「……ふざけるな!!元の力が戻ってきて、短距離なら転移もできる!さらには、グラムに認められた!新たな力も手に入れた!貴様のより強い!グラム!!全てをやる!奴を殺せる力を!!」


 シャロンの身体を、黒いオーラが包み込む。


 そして現れたのは、正真正銘の化け物だった。


 体長が2メートルを越し、身体がふた回りも大きくなり、爪や尻尾まで生えている……!


 そして顔は目や鼻がなく、裂けた口のみが不気味に笑っている……!


「チィ!これか!ユウマが言っていたのは!シャロンの奴、グラムの呑まれやがったな!」


「ククク……奴と一緒にされては困るな。俺は、このとおり自我を保っている。それにしても、最高の気分だ……!力が溢れる……!誰にも負ける気がしない……!」


「可愛そうなやつだ……。そんなんで、強くなったつもりか……!いいだろう、見せてやる……!」


 俺は剣士の戦いではないので、二刀流に切り替える。


「グハハ!行くぞ!!」


 奴は、一瞬で間合いを詰めてくる……!


「ウオラァ!!」


 爪と、剣がぶつかる!


「隙ありだ!」


 奴の尻尾が、俺の顔めがけて飛んでくる!


「あめぇ!!」


 俺は首を横にずらし、避ける!

 そして、その尻尾に噛み付く!!


「グギャャーー!!」


「グヌヌヌ……。ウガァ!!」


 俺は尻尾を引きちぎる!


「グォォーー!!」


「ペッ!!たく、汚ねえぜ」


「き、貴様ーー!なんと、野蛮な……!」


「今のお前の姿には、言われたくないね」


「だが、甘い!!」


 奴の尻尾が再生する……!

 さらに、尻尾が二股に分かれる……!


「ククク……次は仕留めてやる……!今みたいには、いかんぞ?」


「別に、あんな手を使わなくても問題ない。さあ、こい……!まやかしの力に頼ったことを後悔させてやろう……!」


「グハハ!!負け惜しみを!!では、シネェェーー!!」


「死ぬのはテメエだ!ウォォォ!!!」


 二つの宝剣が輝きだす!


 そして、奴が二本の爪と二本の尻尾で迫ってくる……!


「これなら、受け切れまい!!」


「受ける必要なんざねえんだよ!!消え去れ!覇王剣!!」


 宝剣から凄まじいエネルギーが放出され、奴を呑み込む!


「グァァァーーー!!!……なんだ……これは?温かい?俺が消える……?」



 そして収まると、元のシャロンが倒れていた。

 そして、横には折れたグラムがある。


「……負けたよ、シグルド。完全にな……」


「……シャロンだな?たく、お前は元から強い。あんなのに頼らなくても、時間をかければ、俺と同格にはなれたのによ……!」


「こんな私のために、泣いているのか……?すまなかった……。目先の力に囚われたようだな……。なあ、シグルド。あの大会でお前は本気だったか?」


「当たり前だ!お前は強かった!正直、危なかったぜ……」


「ユウマ殿のいう通りであったか……。ならば、いい。もう、思い残すことは……」


「また、生まれ変わったらやろうぜ。そのうち、会えるだろう」


「……そうだな。それを楽しみにすると……し…よ…う……」


 シャロンは、完全に息を引き取った。


 あばよ、シャロン。


 あの世でもあるなら、あっちでも腕を磨いておけよ。


 いずれ、また戦おう。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る