第106話真面目な回のはずが……
さて、一夜明けて会談の日を迎える。
俺はシノブとホムラを連れ、玄関前にいた。
「では、叔父上。エリカ達をお願いします」
「ああ、任せとけ。今度こそ不覚はとらん……!」
「シグルド、そんなに気負わなくて良いのよ」
「母上も、すっかり元気になり、良かったです」
「ふふ、ユウマのおかげよ。身体が嘘みたいに軽いわ」
「お兄ちゃん……」
「エリカ、母上が無茶しないように頼むな」
「うん!任せといて!」
「では、行ってくる」
王城前で待っていると、宰相様と国王様がやってくる。
「おや?待たせてしまいましたか?」
「いえ、宰相様。今、来たところですよ」
「では、ユウマ。よろしく頼む」
「では、どこでもいいので触れてください」
よし、全員触れているな。
さて、イメージしろ……!
あの風景……空気……今!!
「空間の狭間を超えろ!テレポート!!」
オレ達は、光に包まれる!
そして光が収まると、以前訪れた、鬼人族の集落の入り口付近に着いたようだ。
よし!ドンピシャだ!大分コントロールが出来てきたな。
「ーーなんと、これが転移魔法か……。大陸制覇を考えるわけじゃな……」
「こんなものが何十人も使えたら、それだけで重要人物を暗殺出来ますからね……」
「それに関しては、安心していいかと。昨日も言いましたが、これを使うには膨大な魔力を要します。使えても、数人程度でしょう。それも、片道分だけですね」
すると、見覚えのある方が歩いてくる。
「なにやら、急に人族が現れたと報告があったが……貴方達であったか」
「これは、ゴラン殿。お騒がせして、申し訳ない。転移魔法を使ったので……」
「……報告は受けています。俄かには信じがたいが、現実のようですし……受け入れるしかありませんね」
「ありがとうございます。国王様、こちらはゴラン殿といいまして、グラント王のご子息にあたる方です」
「これはこれは。王子自らお出迎えとは、感謝する。デュラン国王である、よろしく頼む」
「こちらこそ、よろしくお願いします。親父殿が、気に入っておられましたよ。では、行きましょう」
「あの!そ、そのですね……」
「シノブ殿、美しく成長なさいましたね。何も言わなくて大丈夫ですよ。ユウマ殿に、未練を断ち切ってもらいましたから……。ユウマ殿とお幸せに……」
「ゴランさん……ありがとうございます!そして、すみませんでしたーー!」
「いえいえ……寧ろ、私なんかより大変な方々がいますからね?では、気を取り直して参りましょう」
皆で、ゴラン殿の後をついていく。
「……まさか、お母さん?いや、お父さん?うー……来なきゃ良かったかな?」
シノブは、ブツブツと独り言を呟いている。
まあ、いてもおかしくはないだろうな……。
そして、以前来た祭壇のような場所に着いた。
「おう!デュラン王!よく来た!ユウマもな!」
「ほほ、会談以来じゃのう。元気そうでなによりだ」
「お久しぶりです。先日は、途中で帰ってしまい申し訳ありませんでした」
「なに、気にするな!寧ろ、こっちが世話になった!よく、我が国の民を守ってくれた!亜人を代表して言う!感謝する!」
「いえ、同盟国ですから。ですが、受け取りましょう」
「うむ、そうだな。……ところで、ゼノスという者は?」
「もうすぐ着くだろう。それまでは、自由にしててくれ」
一先ず、解散となる。
宰相様や国王様は、グラント王に集落を案内してもらうそうだ。
俺が側にいる必要はないな。
「さて、俺らもどうするかね……ん?あれは……?」
「貴様ーー!ここで会ったが百年目!!成敗してくれるーー!!」
「あ、お義父さん。こんにちは」
「誰がお義父さんだーー!!俺は認めないぞーー!!」
「もう!!お父さん!!恥ずかしいからやめて!!」
「ッーー!シノブなのか……?そんな……あの小さいシノブが、こんなに立派な女性に……!シノブーー!!」
お義父さんは、シノブに突撃してくる!
「やめんかい!!」
あ、後ろから蹴られた……痛いぞ、あれ。
「あ!お母さんだー!お母さんーー!!」
シノブが、ヤヨイさんに突撃していく!
「こんの!馬鹿娘がーー!!」
あ、拳骨を食らった……痛いぞ、あれも。
「「痛いよ!?」」
「全く!この猪突猛進供は!どうなっているんだい!?親や妻の顔が見てみたいよ!!」
「「いや、貴方ですけどね」」
「黙らっしゃい!!」
「「はい!!ごめんなさい!!」」
なんというか……強烈な親子だな。
「ヤヨイさん、ご無沙汰しております」
「うむ、そちも元気そうでなにより。ちょっと、こ奴らを連れて行くが、よろしいかえ?」
「ええ、どうぞ。煮るなり焼く好きにしてください」
「貴様ーー!!まだ話は終わっていないぞーー!!」
「団長ーー!?この薄情者ーー!!」
二人は、ヤヨイさんに引きずられていった。
まあ、仕方あるまい。
心配かけた分、叱られるといい。
「なんというか……嵐のような出来事でしたわね……」
「そうだな……。ところで、俺まだお義父さんの名前も知らないんだけど……」
俺はいつになったら、正式に挨拶が出来るのだろうか?
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