妹が第３王子に惚れたというので成り上がることにする

第103話ヒュドラ

　理由はわからないが、エリカは気づいたようだ。

　依存することと、頼ったり甘えたりすることは違うということを……。

　その気持ちに、カラドボルグが応えてくれたのだろう。

　そして同時に、建国当初から行方知れずだったティルフォングが現れた。

　何はともあれ、これで奴を倒す術は出来た。

　ここに今、宝剣が五つ揃ったからだ！

　さて、首を同時に斬らなければならない……どこから攻めればいい？

「……ユウマ！お前が指示を出せ！俺らは、それに従う！」

「私も、従います！団長！」

「お兄ちゃん！私も！」

「……わかった！まずは、俺が奴の左足を狙い、魔力を吸い取る！シノブは牽制！叔父上はエリカを頼みます！エリカはそこで待機！」

「「「了解！！！」」」

　まずは、魔力を回復する！

　俺は駆け出し、ブレスを避けながら、接近する！

　おいおい！なんて太い足だ！……これは、一撃で斬れないぞ……！

　俺は純粋なミストルティンの斬撃のみで、すれ違い様に足を斬る！

　足から血が吹き出す！……よし！魔力は吸い取れる！

　まずは、魔力を回復しなくては！

「ウラァ！！」

　叔父上の一撃が、首を切断する！……が、すぐに再生する！

　なるほど……やはり再生が早い……時間差は無意味……ただ、宝剣なら切断できる……。

　あとは、どのように同時に切断するかだな……！

「エイヤーー！！」

　なるほど……シノブでも確実に首を切断出来ると……次は……。

「叔父上！シノブ！次に首が来たら、エリカにやらせてくれ！フォロー頼みます！」

「おうよ！エリカ！お前は斬ることだけを考えろや！」

「守りはお任せを！」

「ありがとう！2人共！頑張る！」

　俺はヒュドラを斬りつけ、注意を引く！

　3本の首から、ブレスが放たれる！

「ホーリーガード！！」

　そして同時に、2本の首がエリカに向かう！

「させるかよ！」

　叔父上が1本を切断する！

「こっちです！」

　シノブが、もう1本を引きつける！

「いきます！！カラドボルグ！お願い！」

　エリカの斬撃は、見事に首を切断した！

「エリカ！良くやった！一度、下がれ！そしてホムラに伝えてくれ！準備をしとけと！」

「うん！わかった！」

　ホムラには、それで伝わるだろう。

　俺はその後、魔力回復に努める。

　ただ、ひたすらにヒュドラを斬り続ける！

　どうやら、魔力も無限か……だが、おかげで全快した！

「エリカ！準備が出来た！来てくれ！」

　エリカが慎重に、こちらに来る。

「お兄ちゃん！ホムラさんがわかったって！タイミングよく、1発デカイのを撃てばいいのですねって！」

「さすがホムラだ！よし！皆！こッちに来てくれ！」

　叔父上とシノブもこちらに来る。

　こうすれば、奴は……来た！

「ホーリーガード！！」

　ブレスを防ぐ！

　そして、作戦を伝える！

「叔父上！時間を稼ぎたい！俺が左足を斬る！叔父上は右足を！」

「おうよ！任せろ！」

「シノブ！気を引いてくれ！」

「お任せを！」

「エリカ！そこから動くなよ！」

「うん！わかった！」

　シノブがヒュドラを斬りつけ、注意を引く。

「ウォォォ！！！」

「ハァァァ！！！」

　俺と叔父上は、同時に駆けだす！

「ぶった斬れろや！！」

「魔光剣！！」

　叔父上はその斬撃のみで、足を半分以上斬る！

　俺の魔力剣も、足を半分以上斬る！

　ヒュドラはバランスを崩すが、倒れるまではいかない！

　足がグジュグジュと気味の悪い音を立てながら、再生していく……！

　だが、少しの時間が出来た……！

「叔父上は右側！シノブとエリカは左側！それぞれ、俺に掴まれ！」

「どういうことだ！？……いや！わかった！」

「そういうことですか！」

「なに！？どういうこと！？」

「叔父上！エリカ！一度だけ言います！俺は転移魔法を使えます！それでアイツの頭上に飛びます！」

「……俺は、どうすればいい？」

「……お兄ちゃん、私は？」

「この並びに出現するので、叔父上は右の２つを。シノブ、お前が左端の首を。エリカは左から２つめを。俺は真ん中の首を。良いですか？」

「おうよ！」

「はいはーい！」

「はい！」

　奴の再生が終わろうとしている……早いな、クソ！

　俺は逸る心を抑え、集中する……！

　その瞬間、ヒュドラに炎を纏った隕石が降り注ぐ！

　その威力は凄まじく、ダメージこそ大してないが、ヒュドラの再生が遅れる！

　ホムラだな！良くやってくれた！全く！良い女だよ！お前は！

　この時間を無駄にするな……！

　イメージしろ……正確な場所を……今！！

「空間の狭間を超えろ！テレポート！」

　俺らは空間を超え、空中に出現する！

　よし！ドンピシャだ！

　奴が首をもたげ、こちらに気づいた……！

　だが、もう遅い……！

「ぶった斬れ！デュランダル！！ティルフォング！！」

「やっちゃいますよ！バルムンク！！」

「力を貸して！カラドボルグ！！」

「俺に力を！ミストルティン！！」

　それぞれの宝剣が、光り輝く！

　そして、同時に剣を振り抜く！！

　ヒュドラの首が、おもむろにずれていく。

　俺はエリカを抱えつつ魔力強化により、危なげなく地上に降り立つ。

　シノブも問題ないだろう。

　叔父上は……地面にめり込んだな……まあ、大丈夫だろう。

　さて、どうなった？

　ヒュドラは再生する様子は……ない。

　そして、胴体と首が塵のように消えていく……。

　再生能力を失ったからだろう……。

「団長！やりましたね！！」

「お兄ちゃん！やったね！」

「おい！抱きつくな！剣持ってんだぞ！？」

「えへへー、照れないでくださいよー」

「お兄ちゃん、照れてるのー？」

「……おい、まずは俺を助けるべきじゃないか？」

「叔父上！今引っ張ります！」

「あら？埋まってますねー」

　叔父上は着地に失敗し、地面にめり込んでいた。

　まあ、2本の首を斬るために、無理な体勢になったからだろう。

　2人で叔父上を引っ張りあげる！

「ふぅ、助かったぜ。やったな、ユウマ」

「ええ。この4人でなければ、無理でしたね」

　まるで、宝剣がこの為にあるようだ……。

「ユウマーー！終わりましたのー！？」

　後方に下がっていたホムラ達が、駆け寄ってくる。

　さて、俺自身もよくわかってはいないが……どう説明したらいいやら……。