第104話激戦を終えて

 さて、無事に終わったが……どうしたものか……。


 あの後、国王様や宰相様を集め、俺の実家に集まった。


「ユウマよ、まずは感謝する。よくぞ、王都を守ってくれた。だが、どうやって帰ってきたのだ?どう考えても、不可能じゃが……」


 皆も、頷いている。


「どう説明していいのか、自分でもわからないのです……。ただ、結論から申しますと、俺は転移魔法を使えるようです」


「……なんと……!信じられないが、証人もおるし、そうでなくては説明もつかんな……」


「俺は、最近変な夢を見るのです……自分ではない誰かの夢を……。それに、自分が知らない場所の映像が流れてきたり……カロン様に言われました。前世の記憶が蘇ったのではないかと」


「ふむ……宰相、これは……」


「ええ、その可能性がありますね。希にいるのです。何かをキッカケに、思い出す人が。何か、変わったことはありませんでしたか?また、それは、いつからですか?」


 いつから……?

 変わったこと……?

 あれしかないな……。


「今思うと、親父と兄貴が死んだ後に、魔力がどんどん増えていきました……。そして、剣の腕も上がっていきました……。それからです。変な夢を見るようになったのは……」



「ここからは推測ですが……もしかしたら、ユウマ殿は無意識のうちに、ご自分を抑圧していたのでは?」


「宰相様、どういうことですか?」


「希にいるのです。人より優れた者の中には、空気を読んだり、周りに配慮をし、自分の才能や能力を抑えるといったものが……。ユウマ殿は、父親や兄のために、無意識のうち力を抑えていたのではと……」


 俺が、親父や兄貴のために……?

 確かに、これ以上関係が悪くならぬように、色々制限はしていたが……。


「自分で言っておいてなんですが、あまり気にしないでください。ただの推測に過ぎませんから」


「いえ……貴重なご意見でした。ありがとうございます……」


 すると、黙っていた叔父上が話し始める。


「いや、俺はガレスの意見に賛成だ」


「どういうことですか?叔父上」


「ずっとおかしいとは、思っていたんだ。お前の才能は、俺に匹敵……いや、超えるものだ。なのに、お前は俺に勝てなかった。俺の予想では、お前が17ぐらいで互角の勝負になると思っていた。それが、ここ半年ほどで、俺に匹敵する強さになった。そうなると、理由はそれしかあるまい……」


 叔父上が、そんなことを思っていたなんて……。

 確かに、最近は叔父上に勝てないということはないと、密かに思ってはいた……。


「そうですか……」


「それで、ユウマお兄ちゃんは何か変わったの?わたしの知ってるユウマお兄ちゃんじゃなくなったの?」


 エリカが涙目になり、そんなことを言う。

 俺も含め、皆が目を見開く……。


「エリカ、そんなことはない。俺は俺だ。エリカの兄で、お前はおれの大事な妹だ。それだけは、変わらない……!」


「なら、わたしはいいと思う!わたしは、どんな力を持っていてもユウマお兄ちゃんが大好き!!なのに……なんか、国王様も宰相様も、お兄ちゃんを怖がってるみたい……」


 エリカ……俺は、良い妹を持ったな……。


「そうじゃな……ユウマは、ユウマだ。すまんかった。つい、転移魔法ということで、警戒してしまった……それを使えるのは、文献ではウィンドル出身だけじゃからのう……」


「そうですね……。国を救ってくれたユウマ殿に対して、失礼でした。謝罪致します」


「……いえ、当然のことです。自分でも、不気味に思いますし。ただ、エリカ……ありがとう。俺は、とても嬉しかった」


「団長!私だって変わらないですよ!」


「ワタクシだって!!」


 他の皆も、頷いている……。

 俺は、恵まれているな……。


「ゴホン!余達が、悪者じゃのう。では……ユウマは変わらず、この国の為に動いてくれるのか?」


「もちろんです。大事な人がいるこの国が、俺の守りたい場所です」


「そうか……感謝する。そして、すまなかった。では、話を進めるとしよう」


「まず、ユウマ殿。その転移魔法は、どういったものですか?」


「そうですね……まず、行ったことのない所には行けません。そして、恐ろしく魔力を使います。俺でも、2回が限度ですね。そして、俺自身も飛ぶ必要があります。何より、制御が恐ろしく難しいです」


「なるほど……そもそも、使い手があまりいないということか」


「ええ、おそらくは。ところで、文献の解読は?」



「……解読をしてわかったことは……もしかしたら、魔導王が復活したのやもしれん」


「それは、どういう意味ですか?」


「ヒュドラ、それは魔導王の最強の使役獣。かの魔物現れし時、魔導王復活の兆しあり。宝剣を絶やすことなかれ。それこそが、唯一の倒す術。そして、闇をも切り裂くだろう」


「なるほど……それが、解読内容ですか」


「もちろん、まだまだ分からない文字が多いがな。国に残る文献と照らし合わせたところ、色々と似た内容もあった」


「宝剣はそのためにあったということですか……」


 そこで、宰相様が手を叩く。


「さて、ではこの辺で終わりにしましょう。皆さん、お疲れでしょうから」


「宰相の言う通りじゃな。皆の者、感謝する。ゆっくりと休んでくれ。また、明日にでも話し合おう」


 そうして、その日は解散となった。




 俺は部屋に戻り、考えていた。


 エリカにはあのように言ったが……。


 俺じゃない誰かが、身体の中にいるようで、気分が悪い……。


 もちろん、俺は俺だと思っている。


 ただ、どうしても疑問に思ってしまう。


 転移魔法?再生魔法?


 俺は、何故使える?


 どうして、理由がわからない?


「団長?どうしたんですか?」


「……いや、なんでもない。寝るか」


「久々の二人っきりですねー。ふふふ、いい事でもします?」


「魅力的なお誘いだな……だが、やめておこう。流石に、疲れたしな」


「ですよねー。睡眠削って行軍して、そっから王都に行ってヒュドラですかねー」


「そうだよな……。シノブ、ありがとな」


「なんのことですかー?私は何もしてませんよー」


 全く……相変わらずだな、コイツは。


 俺の気を紛らわす為に、軽口を言ったのだろうに……。


 さて、これからどうなるのだろうか……。


 だが、今だけはゆっくり休むとしよう。


 本当の戦いは、これからなのだから……。


















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