第85話目覚める力の片鱗

 俺が建物を出ると、魔物が溢れていた。


 ゴブリン、オーク、オーガ、トロールまでいるか……!


「ユウマ!平気か!?」


「叔父上!すみません!もう、大丈夫です!」


「なら、お守りは任せる!俺は、奴らを蹴散らして来る!!」


 叔父上は前に出て、魔物の波に呑まれる。


 だが、一瞬で叔父上の周りに空白地帯ができる。


 今の一撃だけで、一体何十匹殺した?……相変わらず、凄いな。


 だが、今の俺なら引けは取らないはず!!


 俺はいづれ、アレを越さなくてはいけないんだ……!


「アキト!エリカ!」


「はい!師匠!何ですか!?」


「何!?お兄ちゃん!?」


「ここの入り口は狭い!ここなら、一度に来る魔物の数は限られる!お互いにフォローしつつ、戦え!できるな!?」


「はい!やります!」


「私も頑張る!」


「ホムラ!2人の後ろから、援護を頼む!」


「ワタクシに任せてください!」


「シノブは遊撃!叔父上には近づくなよ!?死ぬからな!」


「了解でーす!団長は!?」


「俺も突っ込んでくる!」


「え?だ、団長ー!!」


 俺は気を抜くと、身体中から溢れ出そうになる魔力をコントロールする。


 そして、その魔力を身体中に纏わせる。


 よし!魔闘気を完璧にものにできている!


 そのまま、ミストルティンに魔力をする。


「行くぞ!ミストルティン!俺に力を貸してくれ!」


 俺の声に応えるかのように、ミストルティンが輝きを放つ!


 俺は叔父上のような真似はできない……だが!俺は俺のやり方で叔父上のように!


「行くぞ!ミストルティン!連続魔斬剣!」


 魔力の斬撃が、いくつも飛んでいく!


 それは、魔物の群れに吸い込まれるように消えた。


 だが次の瞬間、魔物達の四肢が飛び、鮮血が舞う!


 よし!これが俺のやり方だ!


「団長!どうしたんですか!?絶好調ですね!」


「ああ。なんだか知らないが、身体が軽くてな。魔力も充実している……!」


「この間まで、それ1発で疲れていましたもんねー。よーし!シノブちゃんも負けられませんよー!」


 そう言うと、真祖化状態に移行した。


「おい!大丈夫か!?まだ、これからだぞ!?」


「私だって成長してます!コントロール出来るようになってきましたし」


「そうか、頼りになる奴だ。では、行くか!俺の背中を預けるぞ!?」


「はい!お任せを!」


 その瞬間に、後方から炎の塊がいくつも飛んできて、魔物の群れに着弾する!


 轟音と共に、魔物の群れの一部が消えた。


「ホムラの奴……まるで、ワタクシもいますわ!とでも言うかのような魔法だな」


「ホント、そうですね。高笑いしてるのが目に浮かびますねー」


「本当に、頼りになる奴らだよ。よし!ホムラが開けた穴を広げるぞ!」


「あいあいさー!」


 俺とシノブは、叔父上とは反対の方へ行き、魔物共を駆逐していく!


「シノブ!無理するなよ!?お前の武器は普通のやつなんだからな!?」


「わかってますよ!ああ!こんなことなら、早く貰っておくんでしたね!」


 シノブはカロン様を助けた褒美として、宝剣バルムンクを授けるという話になったのだが、他国の人間ということで、俺と婚約を結んでからということになった。


 一応、シノブの両親には会えたので、いつでもできる。

 だが、ホムラと同時がいいということで、まだできていない。

 公爵閣下から認められたので、もう婚約していいのだが、この任務があったからな。


「じゃあ、帰ったら婚約するか?」


「はい!?それ、今言うことですか!?」


「いや……駄目かね?」


「だ、ダメじゃないですけど……」


 その瞬間、近くに火の玉が降り注ぐ!


「ほらー!ホムラも怒ってますよ!?まずはワタクシからですわ!って」


「んなわけあるか!……ないよね?」


 俺達は喋りながらも、問題なく魔物を葬っていく!


 大分、魔物の数が減ってきたな……。


「お、お兄ちゃん!」


 エリカが、駆け寄ってくる。


「どうした!?」


「カラドボルグが消えちゃった!」


 ッ!!このタイミングでか!マズイな……!


「とりあえず、今は俺の側を離れるなよ!?」


「う、うん……ごめんなさい……」


 やはり、宝剣を扱うには早すぎたか……だが、悪いことばかりじゃない。


「エリカ、理由はわかるか?」


「……多分、私が剣を乱暴に扱ったから……魔物が来て焦って……お兄ちゃんに教わった剣の扱いをできなかったから……」


「おそらく、それだろうな。わかっているならいい」


「うう……!これから、どうすればいいの?」


「簡単な話だ。己がまだ相応しくないというなら、相応しくなればいいだけだ。そうすれば、カラドボルグの方から戻って来るだろう。それまで、 一から修行だ。いいな?」


「……うん!私頑張る!カラドボルグに認められなかったからじゃなく、単純に悔しいもん!」


「その意気だ。俺も手伝おう」


「ユウマ!」


「ユウマ師匠!」


「2人とも、平気か?」


「大丈夫です!」


「ワタクシも」


 辺りを見回すと、ほとんどの魔物は倒したようだった。


「ん?あれは……」


 俺は、ソレに近づく。


「やはり、ここにも召喚の魔法陣……。何故、この距離で二箇所ある?」


「おい!ユウマ!」


「叔父上!どうしました!?」


「あらかた片付いた!今のうちに退くぞ!」


「…気になるが、仕方ないか。ええ!退きましょう!」


 俺は、予備の剣をエリカに渡す。


「いいか?剣は道具じゃない、自分の命を預ける相棒だ。大切に使えば、剣も答えてくれるはずだ」


「うん!わかった!」


 そして、全員で来た道を戻っていく。


 叔父上が先頭に立ち、木々をたおし、残りの魔物を切り伏せる。

 シノブが、取りこぼしを仕留める。

 アキトとエリカは、自分の身だけを考えて行動させる。

 俺の魔斬剣とホムラの魔法で、後方からくる魔物を倒していく。


 幸い、ジェネラルやキングなどの大物が出ることもなく、なんとか魔の森を抜け出す。


「ふぅ、なんとかなったな」


「さすがの俺も、少し疲れたな」


「叔父さん、凄い……私、もう駄目……」


「俺も駄目です……」


「ワタクシも……」


「私は……平気でーす!」


「はいはい、お前はいつも通り元気だね」


「そういう団長だって余裕ありませんか?」


「まあ、正直まだ余裕はあるな。体力も魔力も」


「ユウマ!そいつら見ていろ!俺がノアに話して来る!」


「わかりました!」




 そして、叔父上が報告をして戻ってくる。


「あとは、ノア達が見ててくれるってよ。今日は休んで行けともな」


「それは、助かります。まだ暗くないとはいえ、今から国境までは疲れてしまいますから」


 俺達は有難く申し出を受けて、一晩を過ごすことにした。


 俺は眠りにつく前に、考えていた。


 とりあえず、アースドラゴンが押し寄せた原因は、あの毒の持ち主だろう……。


 なにせ、特級がやられるほどだ。


 アースドラゴンが逃げ出しても無理はない。


 だが、どこから?そして、どこへ?やはり、召喚された?


 そんなことを考えているうちに、意識が遠のいていく……。








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