第61話ゴラン殿、爆弾発言する
さて、無事に決闘を終え、俺は回復魔法を2人にかけている。
他の皆は、オルガ殿に案内され、集落を見学している。
「イージス、よくやった!流石は、俺が見込んだ男だ」
「へへ、団長に褒められるのは、嬉しいです」
「お主がイージスの主人か。ならば、我も敬意を払わなければな。エルバという。よろしく頼む」
「ああ、こちらこそよろしく。確認だが、貴方は長の息子か?」
「ああ、そうだ。俺は1人息子だ。次の長候補といったところか」
それにしては、弱いな……。
イージスでも、勝てるくらいだしな。
いや、イージスが弱いと言ってるんじゃない。
イージスは、人族でも強い部類だ。
次期長候補なのに、
オルガ殿が出てきたら、イージスにほとんど勝ち目はなかっただろう。
「……なるほど。さて、2人ともどうだ?」
「オイラは、大丈夫です。団長、いつもありがとうございます!」
「おお!凄いな!これが回復魔法……まさか、獣人族に使ってくれる人族がいるとは……感謝する」
「いえいえ。これくらいなら、お安いご用です」
俺とイージスは、エルバ殿に集落を案内してもうことにする。
「随分と他とは様子が違いますね」
木造住宅などはなく、簡易な家が中心のようだ。
「ああ、我らは外で過ごすことが多いのでな。そこまでしっかりとした住処はいらんのだ」
「なるほど……。やはり、亜人といってもそれぞれ違いますね」
うん、これだけでも来た甲斐があった。
やはり友好を深めるには、文化を知らなくてはな。
「それは、こちらの台詞だ。お主達からは、我らを蔑む視線や態度を感じない。同じ人族なのに、教会の連中とはえらい違いだ」
「……やはり、酷いのですか?すみませんが、国内を中心に活動していたので、あまり詳しくないのです」
「なるほど……まあ、良い奴も稀にはいる。だが、ほとんどのやつは酷いもんだ。獣人族というだけで殺しにくる。不浄の生物だ!とか言いながらな。我らは、魔法に弱い。やつらとは、相性が悪すぎる」
「そこまでですか。やはり、誰かがどうにかしなくてはですね」
「ああ、そうだな。……ところで、その敬語やめてくれないか?」
俺は、ドワーフ族と同じ感じなのかと思った。
「え?ああ、わかった。だが、良いのか?時期長候補だろうに」
「いや、時期長候補といっても、まだまだ先の話だ。俺はまだ13歳だしな」
「はぁ!?13歳!妹と同い年!?子供じゃないか!?」
「あ、危なかった……オイラ、子供に負けるところだった……」
なるほど……道理で。
オルガ殿との比べ、弱いわけだ。
まだ、子供だったとは。
見た目は、完全に大人だもんな。
しかし、子供と考えたら強いな……。
やはり、最強の獣人族ということか。
「ああ、まだ成人もしていない。15から成人だ。やはり、人族には見分けがつかないか」
「ああ、正直まったくわからん。何か、それを象徴する物はないのか?」
「そうだな……人族が見てわかりやすいのは、毛のフサフサ具合か?より、フサフサなのが大人だ」
「言われてみると……確かに、オルガ殿との違うな。わかった、ありがとう」
そうして話しているうちに、皆と合流した。
「ユウマ殿、どうやら親睦を深められたようだ」
「ええ、ゴラン殿。これもイージスのおかげです」
「うむ、家臣の手柄をきちんと評価するか。当たり前のようでいて、中々出来ないことだ」
「そうなんですよね……。俺個人としては、そんなに難しい話ではないと思うのですが」
ただ、真面目に仕事を頑張っている人は、評価されるべきだと思う。
それなのに、ちょっと要領がよかったり、付き合いが良いやつが評価される。
それが悪いとは言わないが、もうちょい見て欲しいと思う。
後は、もう少し長い目で見て欲しい。
すくに、こいつは使えないと切り捨てる奴が多すぎる。
イージスみたいな大器晩成型だっているのだから。
「ユウマ殿の部下になれる方は、幸せですね」
「オイラは、とても幸せです!」
「……まあ、アタイも幸せだよ」
「ワタクシも部下ではありませんが、ユウマと出逢えて幸せですわ!」
仲間達が、そんな嬉しいことを言ってくる。
「はは、照れるな。まあ、その、なんだ……これからも、頼む」
「はい!」 「あいよ!」 「もちろんですわ!」
「ふむ、これはもう認めるしかないか……」
「ん?ゴラン殿、何か言いました?」
「いや、独り言だ。気にしないでくれ」
なんか、たまに俺を見てボソボソ言っているな……。
あれか?俺の評価でもしてるのかな?
それを後で、グラント王に報告するとか……あり得るな。
「はあ、そうですか」
その後は、色々な種族を紹介された。
犬族、猫族が多いようだ。
後は、少数の狼族、虎族、兎族のようだ。
皆、人の身体に獣の特徴を持つ。
ただ、それだけだ。
他は、何1つ俺らと変わらない。
家族と過ごし、笑い、楽しく生きている。
「さて、こんなものか」
「オルガ殿、ありがとうございました」
「いや、こちらこそ感謝する。これで、皆も少しは理解しただろう。人族すべてが悪ではないと」
「だと、良いんですけど。では、ここらで失礼しますね」
「ああ、すまんな。さすがに泊める訳にはいかないからな。まだまだ憎しみに囚われている奴も多いのでな」
「ええ、わかっています。これから、少しずつ友好を深めるしかありませんね」
「ああ、それに関しては同意しよう。そして、同盟の件も同意する」
「ありがとうございます。では、また会いましょう」
こうして、獣人族との交流も無事に終わった。
まだまだ、課題は沢山あるけど。
それでも、大きな一歩だ。
「さて、ではヴァンパイア族の里に行きましょう」
「わかりました。案内お願いします」
さて、いよいよか……。
シノブの両親に挨拶をしたいところだ。
少数民族だから、シノブの名前を出せば、すぐにわかるだろう。
どうやら、結構距離があるようだ。
2回ほど野宿をすることになった。
その間に魔物に襲われたが、なにも問題はなかった。
というか、ゴラン殿が強かった。
正直、俺と互角以上に戦えそうだ。
さすがは、最強と言われる種族だ。
そして、ようやく辿り着いたようだ。
「あれが、ヴァンパイア族の里か……」
「ええ、そうです。まあ、彼らについてはよく知っているでしょう」
「え?ああ、まあ。でも、俺の知るヴァンパイア族とは性格違うらしいですけどね」
「まあ、そうでしょうね。シノブ殿は、奔放な女の子でしたから」
「え!?シノブを知っているのですか?」
その言い方だと、結構知っている感じだぞ?
「ええ、まあ。とりあえずは、里に入りましょう」
「え、ええ。わかりました」
そうして、
「勝手に入っていいんですか?」
「ええ、ここの里にはよく来ていたので」
すると、黒装束の男達が駆け寄ってくる。
「これは、ゴラン殿!申し訳ありません!今、取り込み中でしたので、お出迎えできず」
「いえ、お気になさらずに。無理もないことです」
「今日は、なにを……人族!?」
「ええ、来ることは通知したでしょう」
「ええ、もちろん。来ることは知っていました。だが貴方が案内役とは……その人族の中に、貴方から婚約者を奪った男がいるのですよ!?」
ん?今、なんか聞き捨てならないことが聞こえたが……?
「ええ、知っています。ユウマ殿、改めて自己紹介します。エデンの国の王が息子にして、この里の姫である、シノブ殿の元婚約者のゴランと申します」
おいおい、今なんて言った!?
どうやら、そう簡単には、ことは運ばないらしい。
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