第56話王都付近にて

 さて、王都を出て初日の夜営だ。

 

 俺は火を眺めながら、シノブから教わったことを思い出していた。


 まずは、エデンの仕組みについてだ。


 エデンは、亜人の国である。

 基本的に、人間は好かれていない。

 迫害された過去があるからだ。

 我が国は、長年にわたり友好を深めて、信用を得た。

 それでも、信頼には至っていない。

 教会とは、犬猿の仲である。


 次に、種族だ。

 色々いて、全部は無理と言われた。

 なので、最低この5つの種族を覚えれば、平気とのこと。


 まずは、ハーフエルフ族。

 古代エルフの血を受け継ぐ種族である。

 もう純粋なエルフはいないらしい。

 人間に絶滅されられたらしい。

 ただ、ごく稀に先祖返りで、それに近い個体が生まれることはあるそうだ。


 この種族の特徴は、寿命と容姿と性質にある。

 まずは、寿命だ。

 彼等は、軽く200年は生きる。

 俺ら人間は、65~80くらいだから、相当だな。

 ただ、純血のエルフは500年は生きたらしい。


 次に、容姿だ。

 彼等は、全員が整った容姿をしている。

 顔立ちは、作り物のように綺麗に整っている。

 スタイルも、皆がすらっとしていて、肥満とは無縁のようだ。

 さらに、女性も平坦な身体つきなので、男と女の区別がつきにくい。

 ただ、声は違うので、そこで判断する。


 次に、性質だ。

 彼等は、とても排他的な種族だ。

 同じ亜人でさえ、仲が良いとはいえない。

 そして、誇り高い種族だ。

 間違っても、貶したりしてはいけない。

 なるべく関わらないのが、正解だと言われた。

 そして、肉や魚などは食べない。

 きのみや果実などだけで、生きていけるらしい。



 次は、ドワーフ族だ。

 彼等は、とても陽気で豪快らしい。

 人間にも、優しく接してくれると。

 寿命は50~70ほど。


 特徴は、2つある。

 1つは、男女で容姿がまるで違う事だ。

 男性は、ずんぐりむっくりしている。

 立派な髭を生やしている。

 女性は、見た目はか弱い少女のようらしい。

 だが、中身は肝っ玉母ちゃんで、男性は尻に敷かれているらしい。


 2つめは、身長にある。

 彼等は、成人しても140~150が限界のようだ。

 なので、そこは弄ってはいけない。

 そこさえ気をつければ、大丈夫らしい。



 次に、獣人族だ。

 彼等は、人への憎しみが強い。

 奴隷にされていたからだ。

 なので、注意が必要だ。

 ちなみに、寿命は40~60と短い。

 

 特徴は姿形と、性質にある。

 一言獣人と言っても、沢山種類があるらしい。

 狼族、虎族、兎族、猫族、犬族……とまあ、キリがない。

 なので、容姿がそれぞれ違うようだ。

 とりあえずは人間の身体に、獣の特徴がある種族ということだ。


 次に、性質だ。

 さっきも言ったが、彼等は人への憎しみが強い。

 だが、例外もある。

 彼等は強い者に、尊敬の念を抱く。

 なので、戦って認められれば、友好的になることもある。

 まあ、良くも悪くも、単純な種族らしい。

 


 次は、鬼人族だ。

 彼等は、穏やかで真面目な種族だ。

 人間にも、普通に接する。

 理由は、

 彼等は、とても強い種族なので、人間を返り討ちにしたそうだ。

 寿命は80~120。

 ちなみに、彼等の王がエデンを作った。

 なので、今でもエデンの王様をしている。


 彼等の特徴は、その見た目だ。

 物凄い強面の顔と、ゴツイ身体であること。

 そして頭から、一本の角が生えている。

 大きさも、2メートルを超す者もいるらしい。


 後、間違ってもしてはいけないことがある。

 彼等を、オーガと一緒にすることだ。

 彼等が人間に襲われたのは、それが原因だからだ。

 確かに、似てない事もないらしい。

 とりあえず、それさえしなければ大丈夫だと。

 


 次は、ヴァンパイア族だ。

 これは、以前シノブに聞いた通りだ。

 男が生まれにくく、女は婿探し。

 元々の人数も少ない。

 ただ、その戦闘能力と特殊能力には、一目置かれる。

 所謂、少数精鋭の種族だ。


 付け加えるなら、シノブのような陽気な種族ではないと。

 規律に厳しく、厳格な種族だと。

 ただ、彼等も強い者には尊敬を抱くそうだ。


 とりあえずは、こんな感じかな?


 すると、ホムラが隣に座ってきた。


「ユウマ、何を考えていたのかしら?」


「いや、シノブから教わったことを思い出していた」


「ふふ、あの子には感謝をしなくてはですね」


「ん?どういうことだ?」


「貴方が領主となる街で、色々とお話をしたのですわ」


「ああ、よく2人で出かけていたな?珍しいと思ったよ」


「まあ、そうですわね。そ、その……ワタクシはシノブに嫉妬していましたから」


 ホムラはそう言って、俯いてしまった。

 耳まで真っ赤だな……。

 最近デレるから、俺も正直どうしていいやら。

 もちろんだが、手を出す訳にもいかないし。

 でも、抱きしめたいとかは思ったりするし。

 でも、それで済むのか?俺は?ということもある。


「そ、そうか。ちなみに、どういう所だ?」


「……だってシノブは、ユウマの傍にいつもいられます。ワタクシは、偶にしか逢えませんわ」


「まあ、傍付きだしな。今回は珍しいことだ。いくら仲の悪い種族がいるとはいえ、そもそも俺ら人間が好かれていないわけだしな」


「そうですわね……もしかしたら、ワタクシに気を使ったのかもしれません」


「ん?そうなのか?でも、ホムラはそういうの嫌なタイプだろ?」


「……嬉しいですわね。す、好きな殿方に理解してもらえるのは」


 ホムラはそう言い、俺の肩に寄りかかる。


「お、おい。どうした?」


「ふふ、良いじゃないですか。ワタクシだって、甘えたいこともあるのですわ」


 こうして、夜は更けていった。


 ちなみに、手は出してないぞ?

 みんな見てるし、公爵家の者もいるし。



  ▽▽▽▽▽▽


 さて、次の日に新たな人物が合流した。


 俺の尊敬する上官のルイベ準……いや、今は昇格して男爵だ。


「ユウマ殿!お久しぶりです。今回はよろしくお願いします」


「ルイベ殿が居てくれたら心強いです。こちらこそよろしくお願いしますね」


 国王様に、国防に影響がない人物で、誰か信頼できて人はいるか?と聞かれた。

 なので、ルイベ男爵をお願いしたのだ。

 戦闘能力はあまりないが、交渉ごとには向いている。

 なにより、俺が信頼できる人だ。


 何故ここで合流かというと、この近くの町がルイベさんの地元だからだ。

 通り道なので、ここで合流というわけだ。


 そして、其々挨拶を済ませて出発する。






 さて、2日目の夜営も終わり、次の日になる。


 そして、そのまま進むこと4時間ほど経った。


 ようやく俺達は、国境までたどり着いた。


 後は、無事に入れるかだな。


 さて、今更だがメンバーを確認しておこう。


 まずは、オレとホムラが代表だな。

 そして、護衛のイージス、アテナ。

 飛び入り参加のゼノス。

 この5人がメインだな。

 バランスがとても良い。


 そして、御者兼お世話係として、公爵家からノインさんが参加。

 年齢は30歳と若いが、とても優秀なようだ。

 戦闘能力もあり、賢く、気配り上手でもある。

 見た目は、爽やかなイケメンって感じだな。

 ただ、趣味はホムラをからかうことらしい。


 そして俺の補佐として、ルイベ男爵だ。

 細かな配慮ができ、人当たりが良い。

 昨日の夜営でも、皆とコミニケーションをとっていた。


 以上の7人だ。

 少なすぎると思うのが、普通だろう。

 ただ、あまり刺激を与えたくないとのこと。

 さらに少ないことで、貴方達を信用してますよというアピールでもある。

 まあ、一応友好国だしな。


 そんなことを考えているうちに、関所にたどり着いた。

 

 そして、俺は王家の紋章を、兵士に見せる。


「ホムラ様御一行ですね。どうぞ、お通りください」


「ああ、ありがとう。ご苦労さま」


 俺達は緊張しながら、関所を通り、エデン側の関所に行く。


 そこには、鬼の様な男が立っていた。

 なるほど……あれが、鬼人族だな。

 大きい身体、2メートル以上あるな。


「ようこそ、デュラン国の皆様。わが国、エデンへようこそ」


 見た目とは違い、とても丁寧で腰が低い……違和感だ。

 だが、有り難いことでもある。


「御丁寧にありがとうございます。私は、護衛隊長のユウマ-ミストル伯爵と申します。おそらく、私が話をすることになりますので、よろしくお願いします」


 皆も、其々挨拶をする。


「良かった。若いが、しっかりした方のようだ。私の名は、ゴランです。よろしくお願いします」


 そうして、ゴランさんについていき、無事関所を通過した。


 ふう、どうやら第1関門は突破したようだ。


 さて、見知らぬ土地だ。

 気を付けて行動しなくてはな。


 ……だが、不謹慎にもワクワクしている自分がいる。


 さて、どんなことが待っているのかな?

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