第48話俺はとりあえず子爵になったようだ

あの戦いから3日が経ったが、まだ俺達は街にいた。


冒険者ギルドから報酬も貰い、外のゴブリンやオークの片付けも終わった。


街の人達からのお礼も、沢山頂いた。


そして、激戦での傷も癒えた。


もうすぐエデンに行かなくてはならないので、帰りたいのだが理由があり留まっている。


激戦から一夜明けた昼頃に、伝令がきたのだ。


なんでも国難を救ったので、偉い人が直接街に来られるようだ。


なのでそのまま、待機という命令がでた。


まあ、という訳で皆で観光をしたり、軽く稽古をして過ごしていた。


そしていよいよ、王都から来た人が到着したようだ。


俺は皆を代表して、お迎えにあがった。


「やあ、ユウマ殿。この度は、街を救ってくれて感謝する。国王様も、大層喜んでましたよ」


「いえ、ガレス様。貴族として、当然のことをしたまでです。宰相様が、国を離れてよかったのですか?」


「まあ、あまりよろしくはないのですが……ことがことですから。国王様が行きたがっていましたが、流石にお止めしました。なので、代理で私が来たのです」


「はは、それはご苦労様です。確かに、国王様が国を離れたら一大事ですから」


俺は、宰相様をつれて人々が集まる広場へと向かう。


そこには、市民や兵隊が詰めかけていた。


俺が姿を現すと、歓声が上がる。


はぁ、すっかり英雄扱いだな。まあ嬉しくはあるが、くすぐったい気持ちだ。


「いやいや、大人気ですね。これなら、問題なさそうですね」


「はい?どういうことですか?」


「まあまあ、とりあえず行きましょう」


俺達は、領主が市民に向けて挨拶をする、お立ち台の上に上がった。


「皆の者!静粛に!宰相様がお話があるそうだ!」


皆が、嘘のように静かになる。そして拡声器を使い、宰相様が話し出す。


「ご紹介にあずかりました、この国で宰相を務める、ガレスと申します。この度は我が国の貴族がご迷惑をおかけしたことを、申し訳なく思います。国王様も直接は来られませが、同じ気持ちでいらっしゃいます」


皆が、少しザワザワする。

だが、すぐに収まった。


「私が今日きたのは主に謝罪と賠償と報酬ですが、それだけではございません。この街の、新たな領主を決めなくてはいけないからです。既に国王様と議会から許可を得たので、発表します」


皆が、さっきよりザワザワする。

無理もないことだろう。

新たな領主によって生活は変わる。

今度は、良い領主が来てくれると良いのだが。


「では、発表します。新たな領主の名はユウマ-ミストル!私の隣にいるこの方です!」


市民が一体となり叫んだ。


ウオオオオオオ!!!!!!!


だが、俺は頭が真っ白になっていた。


は?俺がなんだって?いやいや!そんな馬鹿な!?


「さあ!この新たな領主にユウマ-ミストルが良いという方は声を上げてください!」


ウオオオオオオ!!!!!!


「バンザーイ!!」「ユウマ様!!」「よろしくお願いします!!」


え?マジなの!?何がどうなっている!?


「ではユウマ殿。まずはこちらを」


俺は混乱しながらもなんとか平静を装い、書状を受け取る。


「これは……ここにいる者を子爵に命ずる。そして任務を遂行した際は伯爵とする。これは決定である。それまでは国の直轄地とし、代官を置き預かることとする」


俺は震えそうになるのを抑え、なんとか読み上げた。


すると、また歓声が上がる。

しかも、中々鳴り止まない。


「では!皆さん!ユウマ-ミストルは国からの任務を終え次第、帰ってきます!それまでお待ちください!」


こうして、俺は呆然としたまま広場を後にした。





「一体どういうことですか!?俺はガレス様だけは普通だと思っていたのに!」


俺は、宰相様に食って掛かる。

さすがに、理解が追いつかん。


「いえ。これに関しては私が正しいのです。いいですか?説明しますので、よく聞いてください」


混乱する俺に、ガレス様は説明をする。


まず、これは国難を救ったので当然とのこと。


何故なら、あのまま放置していたら、この街は滅んでいたと。


それどころか、他の村や町にも被害がでたであろうこと。


それを、未然に防いだ功績は大きいとのこと。


むしろ、そのまま伯爵にしてもまったく問題がないこと。


ただ、建前があるので子爵とのこと。


そして任務を遂行したら、正式に伯爵になること。


なので、エデンでは伯爵と名乗って良いこと。


何より、今更ユウマ殿以外の人を任命したところで、市民から反発が予想されることなど。


確かにそう言われれば、そうなのだが……やはりピンとこない。


何故なら、そんなことは何も考えていなかったから。


ただ民を守りたかったのと、貴族に絶望して欲しくなかっただけだ。


「……でもあれですね?実は、最後に言った市民の反発が1番の理由ですね?」


「……否定はしません。もちろん、ユウマ殿の功績があってのことです」


「はぁー。わかりました。では有り難く受け取ります」


「ええ。その方が収まりがいいでしょう。では、私は代官の用意をしますので」


そう言って、ガレス様は去って行った。




俺はどれくらい立ち尽くしていただろうか?


とりあえず、領主の館に戻ることにした。というか、俺の館になるのか?


俺が戻ると、仲間達が全員揃っていた。もちろん、ホムラもいる。


どうやら、皆も知ったようだな。


「「「「「「団長!おめでとうございます!!!!!!」」」」」」


「ああ、ありがとう。全員実感はないがな」


さて、これからどうなることやら。


どうやら俺は、とりあえずは子爵になったようだ。






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