第36話外伝~イージス~

オイラの名前はイージス。冒険者を仕事にしています。年齢は23歳です。


オイラの出身は、この国の北のバルザック国境に近い田舎の村です。


オイラは、そこの村人の長男として生まれました。


下には妹が2人、弟が1人います。


オイラは、そこで14歳まで育てられました。


オイラの身体は、同世代と比べても大きく、よく食べていました。


両親は、いつもオイラ達を腹一杯まで食わせてくれました。


だから、馬鹿なオイラは気づかなかった。


うちが貧しいことに。


両親が限界まで働いて、オイラ達を養ってくれていたことを。


ある時、オイラは木の上で昼寝をしていました。


すると、他の村人が話しているのを聞いてしまいました。


ああ、あそこのうちはイージス君さえいなきゃラクできるのにねと。


オイラは固まりました。どういうこと?


そしてそのまま、じっと話を聞いていました。


要約すると、両親は大切な祖父母の形見などを売るほど、家計が苦しいらしい。


そしてそれは間違いなく、育ち盛りのオイラの所為らしい。


確かにオイラは下の兄弟よりよく食べる。


でもひもじい思いなんて、一度もしたことない。


きっと両親が一生懸命働いたり、形見を売ったりして食べさせてくれていたんだ。


それに気づいたオイラは考えた。どうすればいいのか。


きっと両親に言えば、そんなことは気にしなくていいって言うに決まっている。


でも、まだ次男は10歳、長女は7歳、末っ子は4歳の子供だ。


これから、どんどんお金がかかってくる。


特に長女は賢い子で、勉強が出来るので、良い学校に行かせてあげたい。


なので、オイラは王都で冒険者になることにした。


この辺だとあまり魔物も数も少ないし、有難いことだが騎士の方々が討伐してくれる。


オイラは早速、両親に言った。冒険者になりたいから王都に行きたいと。


母さんは反対をしたが、父さんが説得して認めてくれた。


イージスも、もうすぐ成人の男の子だしな。ただ、辛くなったらすぐに帰って来なさいと。


オイラは泣きながら、両親に感謝を伝えた。ここまで育ててくれてありがとうと。


そしてそれから準備に1か月使い、オイラは王都に向かった。


そして王都に着き、15歳で冒険者登録をした。


最初は15歳にしては身長も170を超えて、体格も良いので色々なパーティに誘われた。


期待のルーキーなんて言われて、その気になってる田舎者だった。


もちろん、すぐに化けの皮は剥がれた。


武器もロクに扱えないし、鈍臭いし、空気読めないし。


もちろん、最初の1年くらいは周りの人も温かい目で見てくれた。


だが冒険者として3年経って18歳になってもオイラは8級だった。


それも戦闘系はほとんどせずに、雑用系ばかりを受けていた。


もちろん訓練は欠かさずにやっていたが、なかなか上手くいかず。


そして希にパーティー誘われても、足を引っ張ってばかり。


ついには、役立たずの烙印を押された。


ほとんど仕送りもできず、何回も家に帰りたいと思った。


そんな時だった。団長に出会ったのは。


オイラがいつものように訓練をしてると、綺麗な顔をした少年が声をかけてきた。


なあ、なんでいつも1人で訓練してるんだ?と。


まだ新人さんだから、オイラのこと知らないんだなと思った。


実際団長は、14歳の期待の新人だった。オイラとは違う、本当の期待のルーキー。


オイラは役立たずで、誰も組んでくれないんですと言った。


すると団長は、いや良い身体してるけどと。


オイラは鈍足で、武器も中々上達しないと言いました。


すると団長は何を思ったのか、じゃあ俺が訓練の相手になると言いました。


今までもそういってくれた人もいたけど、しばらくすると去っていった。


どうせこの人も同じなんだろうなと思ったが、一応お願いしてみた。


そして、1か月が経った。2か月が経った。3か月が経った。


そして、なんと半年が経った。


もちろん、こんなに付き合ってくれた人は初めてだった。


オイラは、この年下の少年のことを尊敬し始めていた。


オイラの槍の腕も、相手がいることで徐々にだが上達してきた。


そして、なんと団長は戦闘系の依頼を一緒に受けてくれた。


相変わらず鈍臭かったけど、団長とアロイスさんという人が助けてくれた。


アロイスさんは渋い顔をしていたが、団長が説得していた。


そしてピンチの度に、団長が助けてくれた。


その上、傷だらけのオイラに貴重な回復魔法を惜しみなく使ってくれた。


そして何回か実戦をするうちに、オイラはなんとなくだが身体の使い方がわかってきた。


ただそんな時、オイラと団長の訓練終わりに、ニヤニヤしながら声をかけてきた人がいた。


おい、期待のルーキーさん。そんな役立たずの相手していたら、時間の無駄だぜと。


オイラは、その通りだと思った。期待のルーキーさんを、オイラなんかに付き合わせてしまった。


でも、団長は言った。俺のパーティメンバーに文句を言うんじゃねえと。こいつは、ただ大器晩成型なだけで役立たずなんかじゃない!と。


そしてその人は、団長の剣幕に驚いて立ち去った。


オイラは驚いた。オイラなんかのために、そんなことを言ってくれる人がいるのかと。


そして何より、パーティメンバーって?と団長に聞いたら、団長は照れくさそうに言った。


なんだよ?俺はとっくにお前のこと仲間だと思ってるんだけど?と言ってくれた。


オイラはこの王都にきて、どんなに辛くても泣かなかった。


しかし、その言葉に涙が溢れて止まらなかった。


こんなオイラにここまで付き合ってくれるだけじゃなく、仲間にしてくれるなんて。


そしてそこから、今まで以上に訓練に励んだ。


この方に見合う自分になりたい!と強く思った。


その甲斐もあってか、いきなり槍の腕前が上がってきた。


身体も出来上がってきて、フルプレートを装着しても疲れなくなった。


団長はただ、今までのお前の努力が実っただけだと言った。


でもオイラは、全部団長のおかげだと思った。だって普通の人は、ここまで付き合ってくれない。


そして、ずっと聞けなかったことを団長に聞いてみた。


どうしてオイラにここまでしてくれるですか?と。


団長は頬をポリポリ掻きながら、笑うなよ?と前置きしていった。


お前、妹のためにお金稼いでるんだろ?俺にも可愛い妹がいてな……なんつーか、ほっとけなかったんだよ。


オイラは笑ってしまった。そんな理由かと。


団長は笑うな!って言うけど止まらなかった。


オイラは、この心の優しい方についていこうと心に誓いました。


そして正式に、パーティメンバーに入りました。


そしてその後シノブさん、アテナさんといった女性が加入した。


そして、ホムラさんが最後に加入した。


そしてオイラは、アテナさんのことが気になっていた。


ちっちゃくて可愛くて、でも男前で面倒見も良くて。


もちろんオイラなんかじゃ釣り合わないから、この気持ちは未だに誰にも言っていない。


そして、そこからしばらくは6人パーティで活動した。


その甲斐もあって、なんとか妹の学費を稼ぐことができた。


団長には、本当に感謝しかありません。


今度、団長に何かあればオイラは恩返しがしたいと強く思いました。


その後、色々あり団長は男爵を継ぐことになったらしい。


オイラは迷った。仕送りもしなきゃいけないけど、団長にもついていきたいと。


するとアテナさんが、悩んでるオイラに言った。


ぐじぐじしてないで、団長にお前の気持ちをぶつけてこい!アタシも後押ししてやるから!と。


もう、惚れ直すしかないですよね?


そして、団長に直談判しました。


最初は渋い顔した団長だったけど、アテナさんの後押しもあって兼業という形で認めてくれた。


そしてオイラは、このパーティに入ってからずっと言い続けていることを言った。


オイラは団長の盾です!団長のためなら命張れます!









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