第26話家族と仲間に報告する

俺は、母上とエリカが居る部屋に入る。


そこには、不安な表情をした2人がいた。

まあ、無理もないか……。


「ユウマ……」 「お兄ちゃん……」


「母上、エリカ。俺は当主として、戦争にいかなくてはなりません。家のことを、よろしくお願いします」


「ええ、わかっています。それが、貴族当主の務めですから。ただ、ユウマ……元使い手として言いますが、回復魔法は万能ではありません。貴方の優しい心を母はとても誇りに思い、嬉しく思います。でも決して無理をして、回復魔法を使わないでくださいね。無理をすれば、命に関わりますから」


「はい、肝に命じます。でも、大丈夫ですよ。今、魔力がどんどん上がってきてますから。それに、俺1人ではありませんから。ただ、決して無理はしないと約束します」


母上は、安心した様子。


エリカの方を向くと、今にも泣き出しそうな顔をしている。


「お兄ちゃんは、ちゃんと帰ってくるよね?」


「ああ、もちろんだ。俺が、エリカとの約束を守らなかったことがあるか?」


エリカは、首をブンブンと横に振った。


「なら心配ないだろ?大丈夫。今回は、後方支援らしいしな」


「でも……」


「エリカ、お前には笑って送り出してほしいんだ。そうすれば、俺はシスコンパワーで元気百倍!必ず、帰ってくるだろう」


「ふふ、お兄ちゃんってば」


「そう、それでいい。お前には、笑顔がよく似合う」


「わかった!お兄ちゃん、気をつけていってきてね!」


多少無理はしているが、エリカは笑顔で言う。


「ああ。では母上、エリカ行ってきます」


そうして、俺は部屋から去った。


さて、次はと考えていると、叔父上がやって来た。


「よう、ユウマ。気負ってはなさそうだな」


「ええ、不思議とそうですね」


「今回は後方支援だが、戦場では何が起こるかわからん。最悪、人間を切ることになるが大丈夫か?」


「ええ。大丈夫とはいえませんが、割り切ります。戦争ですから。それに、盗賊退治も何回か経験あるので」


叔父上は、なにやら神妙な表情だ。


「そうか。ならいい。そうだな……もうガキじゃなかったな」


「どうしたんです?珍しい」


「はは!確かにそうだ。いや、すまん。昨日な……お前がまだ小さく、可愛かったころの夢をみてな。柄にもなく、センチな気分になったらしい」


「勘弁してくださいよ。逆に、不安になるじゃないですか」


「悪い悪い。まあ、お前の腕なら油断さえしなきゃ大丈夫だろ。俺は戦場に出たとこで役に立たんから、王都で待機だ。大物の魔物がでたら、頼むと言われたがな」


「そうですね、叔父上は最強の剛剣使い手ですから。本気で剣を振るったら、味方ごとバッサリ斬ってしまいますもんね。かといって1人で敵の中突っ込んだら、さすがの叔父上もどうにもなりませんし」


「そういうことだ。俺は一対一なら誰にも負けない自信はあるが、集団戦に弱いからな。お前みたいな柔剣の使い手なら、戦場でも活躍できるがな」


「まあ、俺は基本回避盾タイプですから。回復役が、傷を負うわけにはいきませんし。叔父上は相手の攻撃を受け止めて、跳ね返すタイプですもんね」


「ああ。そもそも、弱い奴と戦ってもつまんねえしな」


「はは!叔父上らしいですね。では、他にも行かなくてならないところがあるので、行ってきますね」


「おう、呼び止めてすまんかったな。じゃあ、気をつけてな」


俺はそのまま家を出て、冒険者ギルドへ向かった。


冒険者ギルドに入ると、人で溢れかえっていた。


そして、聞いたことのある声がしたので振り向いた。


「おお、ユウマ殿。久しぶりだな」


「おお、ゼノスか。久しぶり。ごめんな。忙しくて、結局訪ねてないんだよな」


「いやいや、気にすんな。そういや、ウィンドルが攻めてきたとか。ユウマ殿も出陣するのか?」


「まあ、そうなるな」


「そうか。ユウマ殿の腕なら、心配ないが気をつけてな」


「ああ、ありがとな」


「そういや仲間を探しているんだろう?さっき見たな。こっちだ」


俺達は人混みを掻き分け、アロイスを発見した。


「お、いたな。ではユウマ殿、また無事に会おうぜ」


「ああ、ありがとな。助かったわ」


そうして、ゼノスはギルドから出て行った。


俺がアロイス達に近づくと、あっちが気がついたようだ。


「団長!こっちですぜ!」


「アロイス、会議室はおさえたか?」


「へい、会議室はおさえていやす」


「よし、よくやった。じゃあ、とりあえず行こう」


会議室に入ると、アテナとホムラがいた。


とりあえず挨拶をして、席に座る。


「ふう、凄い人の数だったな」


「へい……やはり、いつもと時期が違うんで皆浮き足立ってますぜ」


「まあ、そうだろうな。さて、知っての通り戦争になった。俺は当主として出陣しなくてはならない」


全員が、不安そうな顔をした。


「おいおい、大丈夫だ。俺はどうやら、後方支援らしいからな」


「まあ……ワタクシは、何も心配などしていませんが」


「はっ、よく言うぜ。さっきまでアタシにどうしよう、ユウマが帰って来なかったらどうしようとか、言ってたのは誰だい」


「な、な、なんで言っちゃうのですか!?アテナのバカ!あう~」


「はは、ホムラ。心配してくれて、ありがとな」


ホムラは、耳まで真っ赤になって俯いた。


「で、団長俺らはどうすれば?」


「そうだな……まず俺に何かあればアロイス、後のことは頼んだぞ」


「団長!?」


「落ち着け。万が一の話だ」


「ふぅー、わかりやした。任してくだせえ」


視線を感じて見てみると、ホムラが真剣な眼差しで俺を見つめていた。


「ユウマ、ワタクシも4級になりましたわ。これで、一流の冒険者に近づきましたわ」


「おお!そうか!こんな時だが、おめでとう。良かったな」


「ええ、ありがとう。それで……ユウマが帰ってきたら話したいことがありまして、聞いてくれるかしら」


「ああ、もちろん。だが……戦争前に死亡フラグみたいだな」


「え、え、ワタクシそんなつもりじゃ。ご、ごめんなさい!」


「おいおい。素の状態と、気を張った状態が混じって変になってるぞ?まあ……俺は、どっちのホムラも好きだからいいけどな」


「あ、え、好き?ユウマが?今好きって」


「おいアテナ、こいつほんとどうした?なんか悪い物でも食ったか?」


普段なら、これくらいの軽口は流すんだけどな。


「はは!まあ、気にすんな。女心は、複雑なのさ」


「はぁ、まあいいや。じゃあ、そういう訳でよろしく頼む。では俺は家に戻り、出陣する。また生きて会おう!」


「団長!お気をつけて!」「油断すんじゃないよ!」「ユウマ!待ってますから!」


俺は3人にエールを貰い、ギルドを去った。


俺が家に戻ると、玄関で皆が待っていた。


「セバス、準備ありがとう。後のことを頼む」


「はい、お気をつけていってらっしゃいませ」


俺は母上、エリカ、叔父上、クリス、セバスの顔をそれぞれ見る。


「では、行ってくる!皆の者出陣!」


そうして俺は、王都を発った。


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