第10話シノブ傍付きになる
どうやら、いつの間にか寝てしまったらしい。
だが、すっきりとした目覚めだ。
「いや、よく寝たなぁ。ん?なんか良い匂いがする……?」
俺が隣を見ると、頬を染めたシノブがいた。
「団長、おはようございます。昨日は、激しかったですねー」
「は?え?はぁ!?なんでここに居るんだよ!?まさか……帰ってなかったのか?」
「まあまあ、落ち着いてくださいよー。朝から血圧上げたら、身体に悪いですよ?」
「誰の・せい・だ!」
「ユウマ様!何事ですか!?」
警備の者が入ってきた。
「こ、これは失礼いたしました!」
だが、シノブを見て、引き返す。
おい、待て。ここに曲者おるんですけど?
「はぁ、いつからいたんだ?」
「へへー。昨日みんなが帰る中、帰らずに天井に張り付いていました。その後は、団長の部屋に潜入してました。団長が部屋に帰ってきて、寝るのを確認して、ベットに潜り込みましたー」
そう言って、シノブは満面の笑みを浮かべる。
……シノブ、恐ろしい子!
「突っ込みどころしかないのだが?まあ、お前のそういう行動には慣れたけどな……。で、俺を驚かす為だけにやったわけじゃないんだろうな?」
「へへ、そうだって言ったらどうします?押し倒します?」
俺は無言で、アイアンクローを極める。
「イタイイタイ!!団長!冗談ですって!」
俺は仕方ないので、手を離す。
「あー痛かった。で、理由ですね。団長、私を傍付きにしてくれませんか?」
シノブは、珍しく真剣な表情だ。
「傍付き?専属の護衛みたいなものか?」
「ええ、それで大体合っています」
「その理由はなんだ?」
「団長を守るためです」
「ん?どういう意味だ?」
「団長はこれから、魑魅魍魎が蠢く、政治の世界に足を踏み入れます。そこでは、暗殺を企てたり、弱味を握り脅すなどが起こり得ます」
「いや、暗殺って……俺は、しがない男爵家当主だぞ?」
「いえ。おそらく、団長は出世をします。そして一部の汚れた人達は、団長のような真っ直ぐで優しい人を嫌悪、または嫉妬します。申し訳ないですが、父上や兄上がそうではありませんでしたか?」
「……まあ、否定は出来ないな」
「団長、極論ですけどね……私が暗殺者なら、団長は死んでいましたよ?」
俺は、一瞬何を言っている?と思った。
だがしかし、今の今まで気が付かなかったことに気づいた。
「お気付きになられましたか?まあ、私ほどの隠密はそうはいないので、お任せを。という訳でいいですかね?」
「……正直そんなことが起きるとは思えないが、死んでからじゃ遅いしな……。わかった、頼む」
「はい!お任せください!」
「では、シノブ。お前を傍付きに命ずる。俺を守ってくれ」
「はっ!この命は既に、貴方に捧げています!如何様にもお使いください!」
「ああ、わかった。ありがとな」
「いえいえ、私が好きでやっていることなんで。という訳で、伽でも何でも命じていいですからね?」
そう言い、シノブはウインクをした。
「色々台無しだよ!たく、珍しく真面目かと思ったら……」
「すみません、性分なもので。というか、私お腹減りましたよー」
「自由か!……まあ、言われてみれば。よし、食べに行くか」
2人で食堂に行くと、当たり前だが誤解をされた。
母上とエリカに説明するのは、大変だった……。
そして食べ終わり、執務室で仕事をしていると、叔父上がやってきた。
「おい、ユウマ。早速稽古するぞ。お、シノブもいんのか。じゃあ、2人まとめて稽古をつけてやる」
「え?私もですかー??」
「ああ、ついでだ」
俺とシノブは、庭に出て稽古を始める。
叔父上は、しばらく眺め言う。
「よし、どうやら剣の稽古を怠けていなかったようだな。それどころか、上がっている。これなら、稽古をして実戦を積めば、もう一段上にいけるだろう」
俺は、素直に嬉しかった。
叔父上が剣に関して褒めることは、滅多にないからだ。
「師匠!ありがとうございます!これからも、精進します!」
「おうよ。で、シノブだが……戦うところは初めて見たが、中々の腕だな。これなら傍付きになり、ユウマの足を引っ張っることもなさそうだ」
「良かったーー!シグルドさんに認められたー!そこが、一番の難所だったんですよー!団長は、最悪丸め込めば いいと思っていたので」
「おい、待て!今なんて言った!?」
「えへへ、良いじゃないですかー。過ぎたことは」
「ククク、相変わらず仲のいい奴らだ。よし!気分が良い!2人同時にかかってこい!」
そして2人同時にかかっていき……まあ、こうなるわな。
「だ、団長、生きてますか?」
「あ、ああ。なんとかな……」
俺達は、なんとか起き上がる。
ちなみに、俺らを打ちのめした叔父上は、機嫌よく飲みに出かけた。
「戦うのは初めてでしたけど、アレなんですか!?」
「うん、なんだろな?化け物かな?」
「本当ですよ!あれなら私の国の最強で、特級冒険者でもある、鬼人族の王様とも戦えますよ!」
「叔父上が冒険者登録をしていたら、間違いなく特級だからな……」
俺はその後、身体に鞭を打ち、執務室で作業をした。
王城から来た手紙に返事を書いたり、明日家庭教師が来るので、その予習をしたりした。
ちなみにシノブは、お菓子を食べた後、ソファーで寝転がっている。
あれ?傍付きって、何だっけ??
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