第9話叔父上の提案

しばらく母上と談笑していると、セバスが静かに近づいてきた。


「ユウマ様、お楽しみ中申しわけありません。そろそろ一度、お開きにしたほうがよろしいかと思いますが、如何なさいますか?」


「まあ、そうだな。皆、親睦を深めることができたし。ここらで、終わりにしよう」


俺は食堂の真ん中あたりに立ち、皆に呼びかける。


「皆!談笑してるところ悪いが、ここらでお開きにしようと思う」


皆がそれぞれ頷き、帰る準備を始めだした。


「それと、これからは自由にこの家に来てくれて構わない。俺も今のところを引き払い、ここに住むからな」


皆が了解の意を示したのを確認し、続けて言う。


「じゃあ、そういうことで。解散!」


それぞれ俺の家族に挨拶をし、帰っていった。


あれ?でもシノブがいなかったぞ?どこ行った?

俺がそんなことを考えていると、叔父上がやって来た。


「おいおい、俺は仲間はずれか?」


「いや、寝すぎでしょ?叔父上」


「仕方あるまい。深酒だったしな。相変わらず、お前は酒に強いな……イテテ」


「叔父上に散々連れ回されましたから。はいはい、動かないでください。かの者の異物を取り除け、リムーブ」


「おー!スッキリした!そういや、ユウマはここに住むんだよな?」


「ええ、そうなりますね。当主ですから」


「そうか………俺も住んで良いか?」


「良いかも何も、叔父上の家でもあるのですから。もう親父もいませんし」


「いや、こういうのは大事だ。お前が当主だからな。許可が必要だろう」


「そういうことですか。では、許可します。好きな部屋を使ってください」


「あとな、お前を一から鍛え直してやる。これから、お前は当主として戦争にいかなくてはならんからな。冒険者稼業とは勝手が違うし、煩い上司や貴族が邪魔をするしな。というわけで、死なないように、どんな状況になろうと生き残れるようにしてやる」


確かに、そうだ。

戦う相手が魔物から人になることもある。


「わかりました。師匠、よろしくお願いします!」


「お、久々にそう呼ばれたな。懐かしいな……お前が親父の横暴に耐えきれず、俺の所に転がり込んだ頃が」


「俺が14歳でしたね……そこから冒険者登録をし、叔父上に本格的に鍛えてもらいましたね」


「ああ。お前は回復魔法の修行もあったから、毎日ぼろ雑巾のようだったな……」


「でもおかげで回復魔法については、一流と言われるレベルに達しましたけどね。剣については、正直一流未満ですけど」


「わかっているならいい。どちらか一本であれば、とっくに達人の域に達していただろうな。だが、お前は両方極めると決めたんだ。ならば、俺にできるのは剣の腕を上げることだけだ」


「ええ、俺の理想とする戦闘スタイルには両方必要ですから」


「まあ、それは俺にもよくわからんが試してみるといい。さて、では飲みに行ってくるかな」


「またですか?」


「だって、これからは一緒に住むんだ。いくらでも治してもらえるじゃねえか」


「………そのために、一流になったんじゃないんですけど?」


「ハハハ!細かいことは気にすんな!ではな!」


叔父上はご機嫌の様子で、出ていった。


「さて、もうすぐ夕方だな。とりあえず、執務室で仕事だな」


俺は夕飯の時間まで、書類仕事をこなした。


親父が見栄を張り、無駄に金を使ったので我が家は火の車状態だ。


なので、人を解雇したり、無駄な骨董品を売らなくてはならない。


もちろん、解雇する人には紹介状を書き、次の働く場所を確保してからだ。


「ユウマ様、お疲れ様でございます。今日は、こんなところで終わりにしましょう」


「セバス、ありがとな。セバスが我が家を見限らすにいてくれて、良かったよ」


セバスなら、もっといい仕事あったろうにな。


「私は御恩ある亡き先代様から、頼まれていましたから。愛想尽きるまでは、仕えてくれと」


「お祖父様か……俺は、ほとんど覚えていないからなぁ」


「無理もございません。まだ、4歳くらいでしたからね」


「そうか。まあ、お祖父様に感謝だな。では、食事にするかな」


「畏まりました。では、私はこれで。ちなみに、ユウマ様」


「ん?どうした?」


「私としては、シノブ様でもホムラ様でも、いい奥方になられると思いますよ?」


そう言い残し、セバスは去って行った。


セバス……お前もか。






俺は夕食後、軽く素振りをして、風呂に入る。



そして部屋に戻って、ベットに転がった。


「いや、しかしこんなことになるとはな……。昨日は衝撃の方が強く、実感が湧かなかったし。だが、1日経ったことで実感が湧いてきたな……。そうか、親父も兄貴もいないんだな……」


俺は、複雑な思いを抱いていた。


そして、夜は更けていった。





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