第3話 トンネルをつくろう!
トンネルを掘り始めて二日。
これだけ時間が掛かっているのには訳がある。
船で運んできた荷物を運び入れるため、馬車でも上れる傾斜のものを作る必要があったのが一番の理由だが、空気取りのために所々崖に向けて穴を開けたり、途中の休憩所を作ったりを同時にしていたからである。
とりあえず簡易的なものだが、長いトンネルの中で過ごすには問題ない広さと快適性は備えている。
中には馬を繋ぐ場所や、簡易的に宿泊できる部屋も完備。
あまり凝りすぎると王都の屋敷から持って来た資財が足りないので、基本はトンネル工事で手に入れた素材を利用している。
なので基本は石だ。
休憩所は空気取りも兼ねていて、崖の外が見えるようになっているが、魔物の侵入を防ぐために格子状の石窓をクラフトして嵌めてある。
今のところは僕たちを除けばまともな領民は0だ。
だが、そのうちこの領地の開発が進めば、外部から移民を受け入れたりしなければならないだろう。
「レスト様、そろそろ片付けて出発しましょう」
「ああ、わかった。テリーヌ、ご飯美味しかったよ」
簡易に作ったテーブルセットに乗った空の食器を片付けながら、僕は料理を作ってくれたメイド長のテリーヌに感謝を伝える。
メイド長と言っても貴族家の屋敷に居た頃はメイド長ではなく、キエダの配下……つまり僕専属のメイドたちを束ねる立場の女性だった。
年齢も二十代中頃で、長髪を頭の後ろで綺麗にまとめている切れ長の目をした美人である。
「ありがとうございます」
彼女は軽く礼をして、僕から食器を受け取ると配下のメイドたちに仕事を振り分ける。
メイドの一人であるフェイルが僕がクリエイトした簡易キッチンで軽く食器を水洗いを始めた。
水は僕が大量に【素材】として持っているので、それなりに自由に使うことが出来る。
ちなみに排水はそのまま崖の外へ流れ出る様に作ってあるが、真下は海なので問題ないだろう。
十六になったばかりのフェイルは、この家臣団の中では最年少で、メイドとしてはまだまだ修行中ではあるが、キエダ曰くいつか化ける逸材だとのこと。
だが、僕が見る限りいつも何かしら失敗をしてはテリーヌに叱られている彼女が化けるとは思えない。
そしてフェイルは今もまたテリーヌから受け取った皿を一枚僕の目の前で手を滑らせて割ってしまった。
まぁ、食器がいくら割れようとも僕がすぐに素材化してクリエイトすれば元通りになるわけだけど。
「じゃあ僕は先に行って続きを掘ってくるよ。それと、後で直すからフェイルは割れた皿の破片だけ集めておいてね」
「はい……ごめんなさいです」
消え入りそうな声で謝るフェイルに「気にしないでいいよ」と僕は答えてからその場を去る。
休憩の前まで掘り進めた場所まで歩きながら、頭の中でキエダが書いてくれた図面を思い浮かべる。
多分キエダの計算だとそろそろ上にたどり着くはずだ。
この島は調査団の報告によれば、台形や方形ではなく凹のような形になっているらしい。
なので、外で見たよりは上面の地面までは早くたどり着く。
「じゃあやりますか」
僕は手にしたランタンを地面に置くと、行き止まりの壁に手を付け素材化の力を発動したのだった。
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