現役のころの営業日報から・どうでもよいはなしを3話

h-nakai

第1話 某工場長の生き恥的な話(2009年9月29日記)

あまり暗い話はよくありませんので、最近聞いた本当の話。

某生コン工場の某工場長の話です。


先日、奈良県にある某生コン工場に出向いた時の話です。

そこの生コン工場は、私の会社を窓口としてセメントを納入させてもらっている得意先なので、担当している私としては大した用事もないのですが月に2回ほど営業として、そこの工場の社長を表敬訪問しております。

そしてその日も私は表敬訪問でその生コン工場を訪れ、苦手としている社長へのご機嫌伺いの雑談を終え、ほっとした気分でいつものように工場の喫煙室に入って一人でタバコを吸っておりました。

やがていつものように話し好きの工場長が、私と話をするためにタバコとライターを持って喫煙室に入ってまいります。

私はこの話し好きの工場長とは以前から非常にうまが合っていて、そしてその日はどういうわけか、二人の話題は運転免許証の免許停止の話になったのです。


「運転免許証の停止といえば」という事で、「私にはとても恥ずかしい経験が一つあって」と、私の方から話を切り出します。

以下が私の話です。


・・私が今の会社の大阪支店に勤めていたころ、事務所はJR大阪駅から徒歩でわずか5分ぐらいのところにあったのですが、一等地ですから事務所近辺の駐車場の料金がとても高くて、会社の駐車場は地下鉄に乗って数駅先のところにありました。

ただその駐車場まで行って帰ってでは、1時間ほど余分に時間がかかるものですから、車で得意先などを回っている折にちょっとした用事で事務所に戻らなければならない場合、時々私は横着をして事務所近くの路上に車を止めて事務所での用をすませておりました。

ですから必然的に、警察官に駐車禁止違犯の切符を私はよくきられておりました。

そしてその日も事務所近くの路上にハザードランプをつけて車を止め、10分ぐらいで見積もりを仕上げて、駅前のパチンコ屋さんの店の前に止めてある車に戻ろうとしたところ、私の営業車両の前で時計を確認して今にも駐車禁止違反の切符を切ろうとしていた婦人警官の姿が目に飛び込んできたのです。

実はその日は、私の駐車違反が重なって30日間の免許停止を食らい、1週間前に講習を受けてきたばかりなのです。

ご存知のように、30日間の免許停止は、1日の講習を受けて簡単なテストに合格すれば、あとの29日間の免許停止は免除されます。

しかしその講習以降1年間に違反をした場合については、わずかな違反点数でも60日以上の免許停止処分が執行され、確実に最低でも1ケ月間は車の運転ができません。

私は仕事上郊外の建築現場に行くことも多くて、車の運転は絶対欠かすことが出来ない業務なのです。

そしてそんな事が一瞬頭の中を横切って、私は絶対許されざる行為にでてしまったのです。

私は急に大げさに片足を引きずりながら婦人警官に近づき、福井弁丸出しで(当時の営業車両は福井ナンバーだった)、

「こんなカラダなもんやでえ~何かにつけて不自由での~、ちょっと用を足すつもりが長くなってしまってえの~」

とかなんとか言いながら、必死で婦人警官にあわれみを乞うたのです。

やがて私の必死の行為が功を奏してか、若い婦人警官は何事も聞かなかったふりをして、違反通知の切符をカバンにもどしながらその場を離れていったのです。


その日の晩、晩酌で少し酔いの回った私は、ついついこの出来事を家内に話してしまいました。

家内からは「身体障害者のマネをするなんて、あんたは最低の人間!」と、バッシングを浴びせられました。

そして翌朝出社すると、私のこの愚かな行為は事務所中に知れ渡っていて、社員全員から白い目で見られました。

というのは昨日、私の会社の他の部署の女子事務員が外出していた時にたまたま私の行為を目にして、ビルの柱の影から一部始終を見ていたらしいのです。

そしてうわさは一気に広まり、馬鹿なことした私に天罰が下ったのです・・


というような話を私は工場長にしました。

話し好きの工場長は、いつもなら私の話を最後までキチンと聞かず、たいていは途中で自分の話をきりだしてくるのですが、その日は珍しく私の話を最後まで聞いてくれました。

そして私の話を聞き終えた工場長は、目一杯吸い込んだタバコの煙をゆっくり吐き出してから、ぽつりとひとこと

「そんなん、な~も大したことないわ~。ワシなんかもっとひどいことで、交通違反を免れてんねん。

天罰どころか、もっとものすごい恥ずかしい事をワシ、やってんねん」と。

こんな言葉を聞けばこちらとして聞きたいのは山々で、工場長は私の方を覗きこんで

「この話は絶対誰にもしゃべらんといてや。

女房にも話したことないし、ここの社長も知らんことやし。

こんなこと社長なんかに知れたら、ワシ絶対首やし、誰にも絶対しゃべらんといてや!」

もちろん興味津々の私は二つ返事をし、以下が工場長から聞いた話です。


・・工場長は大型車両の運転免許証も有していて、生コン工場の出荷が忙しい時にはコンクリートミキサー車にも乗るので、稼ぎのためには運転免許証は必携のものです。

ところが2年ほど前、ボーとして高速道路を車で運転していた時に、かなりのスピードを出してパトカーにつかまり、一発で60日の免許停止の処分を受けたらしいです.

ここの社長は若い時は聞かん坊でその筋の近い人とも付き合っていたとウワサされる人ですから、工場長は免許停止期間中、毎日社長から迫力ある怒声を浴びせられたそうです。

そして罵声を耐えに耐えてようやく工場長の免許停止期間が終了し、その2ケ月後の話です。


その日工場長は、大阪へ車で営業に出かけたそうです。

当日は朝から何度もトイレに行くほど工場長の体調は悪かったのですが、その日の案件は生コン工場にとっては非常に大事な案件だったので、その日の大阪での要件を断れる状況にはなく、工場長は大阪方面へ車で向かったそうです。

そして無事所用が終わって、車で「中の島出入り口」から再び阪神高速に入った時に、また腹具合が悪くなっておもらし模様だったのですが、工場長はこらえて奈良に向かったそうです。

ようやく県境の阪奈トンネルを抜けたころには、まさしく出そうな状態になったそうです。

日ごろは、このトンネルから「宝来インター」を抜けるまでがゆるやかな坂道となっていて、高速道路としては珍しくスピード・60キロ規制がかかっていて覆面パトカーが多い地帯なので、いつもこの近辺を通行する時には工場長も車のスピードについては気をつけていたのですが、その時はおもらし状態だったのでかなりスピードをあげて車を走らせていたそうです。

バックミラーにパトカーの赤色灯のきらめきが走り、パトカー独特の警告音が聞こえた時には、工場長は身もちぢんでおもらしも忘れたほどだったらしいです。


パトカーに連れ込まれて、警察官の示す工場長の車のスピードメーターは120kmを示しており、60kmのスピード違反です。

このスピードでは、免許停止どころか、免許取り上げも十分考えられる違反速度です。

社長の顔や女房・子供の顔が一瞬ひらめいて、もう何が何やら分からなくなって、どうでもなれ!とい気で、工場長は思わずエイヤーとやってしもうたそうです。

下痢気味のウンコですから、瞬く間にパトカーの中はウンコのにおいで充満。

後部座席のシーツも汚物でグショグショです。

「お・お前、何をしたんやー!」とわめく警察官に向かって、工場長は泣きながら

「だからさっきから言うてるじゃないですか、 ウンコしたくて、スピード出したんやんけ」

工場長は警察官にパトカーから引きずり降ろされて、頭を数発なぐられ

「お・お前、なんちゅうことをしてくれたんや!早う、してこい!」

で、工場長フラフラになりながらも、自分の車に戻って手ぬぐいを手にし、高速道路のガードレールをまたいで草むらの中で、着衣の汚れを落としたそうです。

そしてです!

数分経って道路に戻ったら、パトカーの姿は消えていたのだそうです。

工場長、スピード違反の調書は免れたのです・・


ゲラゲラ笑う私に向かって、工場長再び、

「あんた!この話、絶対誰にもしゃべらんといてやー!」


その後、私はこの日の生コン工場での他の用事も済ませ、社長に別れ際の挨拶をし終えたころに、工場長が机に戻ってきたのでひとこと尋ねます

「ところで一つだけ聞いていいですか。そのウンコは計算ずくでやったのですか?」

工場長はまわりに誰もいない事を確かめて、私の耳口でポツンと

「そんなん、あ・当たり前やがね!」


私は“上には上がいるものだと”内心感心し、工場長に合掌して、生コン工場を後にいたしました。

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