こんなんなっちゃった
門前払 勝無
第1話
また曇りの朝が来た。
布団の中から窓を見て、また布団の中へ潜り込むー。
布団の中から時計の針の音に耳を傾けていると、ドタドタと妖怪人間トドに変身したマミーが部屋に入ってきて布団を剥がされた。
「マユコ!遅刻するよ!」
トドの口から火が吹き出してきた。
「今日は北朝鮮からミサイルが飛んできて学校が爆発するかも知れないから休みたいよ~!」
アタシは必死に布団を引っ張ったがトドのパワーはパないから勝てなかった。
テーブルの上にはゾンビトースト…いつもの朝ご飯である。食パンの上に目玉焼きが乗っていてケチャップとソースがぐちゃってなってる。
家を出て右に曲がってお寺の前を掃除してる住職が話し掛けてくる…と予測しながら曲がる。住職は大きな杉を見上げていた。アタシの事に気付いていない。
「おはようございます」
結局、アタシが話し掛けた。
「おはよう!マユコちゃんこの杉凄いでしょう?」
「昨日も一昨日も言ってましたね」
「そうだっけ?僕はね、この杉を100万円で売ろうと思ってるんだ!」
「売れるんですか?」
「さぁ…」
貧乏住職は楽しそうにしている。
「あ、遅刻しちゃうので…行ってきます!」
「いってらっしゃい」
杉の話からジャズの話に発展しなくて良かったと思いながら学校へ向かった。
国語、数学、社会の三連コンボ。
これは眠気との戦いになる。
教科書の隅に落書きしながら時間が過ぎるのをひたすら待つ、あくびは下を見ながらする。
右脳を寝かせて左脳で授業を聞いていると、大きな青い鷹が窓をコツコツ叩いてきた。アタシは窓を開けてあげた。
「遊ぼうぜ!外行こうぜ!楽しいぜ!」
アタシは気を集中させて幽体離脱して青い鷹に着いて外へ出た。
鷹の足を摑んで空へ飛び立った。
ドンドン高く上がり屋上が見下ろせる高さまできた。
屋上で誰か寝ている。
アタシはそっと寝ている男の子の近くに降りた。
「三組の斉藤くん…」
「ちげぇよ!二組の北東だよ」
「え!聞こえてるの?」
幽体離脱しているアタシの事は誰にも見えないはず、そして声も聞こえないはずなのにー。
「聞こえてるよ!俺の眠りの邪魔をするなよ」
北東くんは起き上がり煙草をくわえた。
「俺にも一本くれ!」
青い鷹が北東くんにせがんだ。
「貴方も煙草を吸うの?」
「悪ぃか?お前らはまだガキだけど俺は大人だ」
「なんで俺がキモイ鳥に煙草をあげなきゃいけないんだよ」
「くれないと奪うまでだ」
青い鷹はボクシングのような構えをしている。
「大人が子供から煙草を奪うのかよ!やってやろうじゃねぇか!おい!もののけ姫!動画撮ってくれ!」
「もののけ姫ってアタシのこと?」
「そうだよ!鳥と戦うなんて面白いじゃんかよ」
「ガキ!気安くYouTubeにアップさせねぇぞ!」
青い鷹空に飛んでドロップキックした。北東くんは倒れてパウンドをとられた。アタシは慌てて動画を撮影した。
北東くんは下から抱きついて青い鷹の脇の下をくすぐった。
「うわ!!くすぐるの無しだぞ!」
「喧嘩にルールなんてねぇ!!」
北東くんは逆に馬乗りになって青い鷹の首を絞めた。
「く、くるしぃ!」
「参ったか?ごめんなさいって言え!」
「ご、ごめんなさい…煙草を一本ください…」
「よし!もののけ姫!動画撮れたか?」
「良いのが撮れたよ!」
三人で動画を見ながら煙草を吹かした。
雲は流れて晴れ間が出てきてナポリからの爽やかな風が西から東へ走り去ってゆくー。
底無し沼の底で産まれて、蛍光灯の灯りも家族の会話も学校へ続く道にもずっと違和感を感じていて、何もかも不自然だった。でも、青い鷹と北東くんと過ごす時間が凄く馴染んでいて心地良いー。
つづく
こんなんなっちゃった 門前払 勝無 @kaburemono
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