悪魔の発明
「は~、コタツは人間をダメにする悪魔の発明よね~」
すっかり寒くなってきた頃、テーブルの代わりにコタツを出して裸のままそれに潜り込んで
「って、寒いなら服着なさいよ!」
と
「え~? これが気持ちいいんだよ~。璃音もやってみたら~?」
溶けた餅のようになった頭だけを出して、麗亜は至福の一時を味わっていた。そんな姿に璃音がちらちらと何度も視線を送る。
「…ホントに気持ちいいの……?」
顔は背けたままで呟くように問い掛けてきた璃音に、麗亜は嬉しそうににんまりと笑った。
「私は気持ちいいと思うよ~。他の人はどうか知らないけど~」
麗亜のその言葉の後で、璃音は急にそわそわとし始めた。そして数分が経つと、あくまで顔は背けたままで、吐き捨てるように言った。
「あんたの言ってることが本当かどうか、確かめてあげる。その代り嘘だったらもう二度としないからね!」
ドレスを脱ぐ璃音の姿を、麗亜は目を細めて見ていた。それに気付いた璃音が脱ぎ掛けたドレスで体を隠すようにしながら怒鳴る。
「見てんじゃないわよ! あっち向いとけ!!」
「は~い」
と言いながら顔を背けた麗亜だったが、その顔は満面の笑顔だった。璃音が確実に自分に気を許してきてくれてるのが感じられて嬉しくてたまらなかったからだ。
でも、まだ体を見られるのは恥ずかしいのなら、あまりデリカシーのない真似をするのも良くないと思い、璃音に言われた通りに見ないようにした。本当は見たくてたまらなかったが、とにかく我慢した。
その後ろで、ドレスも下着も脱いだ璃音がさっとコタツ布団に潜り込んだ。そうして体が見えなくなったところで、ようやく麗亜は振り向いた。
「どう? 気持ちいい?」
尋ねる麗亜に、璃音は微妙な顔をして応える。
「よく…分かんない……」
無理もない。いくら人間のように振る舞っていても彼女の体は人形のそれである。感覚が人間と同じとは限らない。だから気持ちいいと感じられなくても当然である。
けれど、璃音は言った。
「分かんないけど、悪くはないかもね……」
璃音のその言葉に、麗亜はまた嬉しそうに笑った。そして、
「もしよかったら、私の体の上に寝転がったらどう? その方が気持ちいいかも」
ダメ元で提案してみた。すると璃音は、
「…そうね。試してあげる」
と、もそもそとコタツ布団の中を移動して、麗亜の体をよじ登ったのだった。
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