ブラウザゲーム
『ネトゲ好きならもっと本格的なのやりそうなのにな』
考えてみれば、要求したPCのスペックも『ウェブ閲覧が問題なくできる程度』ということであって、ゲーミングPCまでは要求されなかった。この辺りも、横柄で図々しいように見えて意外と気遣うタイプなのかもしれないと感じてしまう。
やってるゲームも、割と緩い感じで気楽に遊べる、キャラクターの可愛いゲームだった。パーティを組んでモンスターを退治したりするものの、どちらかと言えば他のユーザーとのやり取りを楽しむタイプのゲームのようだ。
その中で璃音は、<璃音>という名前のままで女性戦士のキャラクターを使っているようだった。アバター名も本名だし外見も璃音自身にそっくりではあるが、人間ではない彼女ならリアルと紐付される可能性はないという判断かもしれない。
だがそれ以上に、そこに璃音の願望が透けて見える気がした。彼女は、今のままの自分を誰かに受け入れてもらいたいのではないかと。
生きている人形である彼女が、ネットの中のキャラクターとして他人と接する。二重に虚構の中に入り込んでるように見えても、これが、普通の人間ではない彼女が他人と普通に関わる為の一番の方法なのだろう。それを裏付けるように、
「璃音、おひさ~」
どうやらギルドのメンバーらしき女の子のキャラクターが話しかけてくる。赤い髪とひらひらした水色の服が特徴的な、ヒーラーと思しきキャラクターだった。
「どうしたのよ。三日ほどログインしてなかったね。レポートとか忙しかった?」
親しげに話しかけてくるその女の子の名前は、<セレナ>と表示されていた。
「あ~、そうね。締め切りが厳しくってさ」
セレナに対して砕けた感じで返す様子に、慣れを感じた。キャラクターのレベルも百を超えているところを見ると、まあまあやりこんでいるようだ。
しかし、レポートが忙しいとか、これはおそらくリアルでは大学生という<設定>でやっているんだろうなというのもピンときた。
ゲームの中では、璃音は普通の大学生の女の子なのかもしれない。
隣でちらちらと覗き込みながら様子を確認していた麗亜は、ますます璃音のことを可愛いと思ってしまったのだった。
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