シロツメクサの約束

@rapanndorune

プロローグ 出会い

静かな林の中で刀を振る。 耳に届くのは空気を切る音と自分の荒い息。時々、涼やかな風がシロツメクサを揺らしている。

ただ、黙々と 自分の世界に入り込んでいた。



そこに突然、新たな音が生まれた。 疑問に思った俺は振り返ると、男が立っていた。

足元のシロツメクサが踏まれている。

男は、手に大きめの銃を持ち鈍色に光る鎧を身につけている。 軍人だろう。 胸鎧には龍が刻まれている。


それを認識した瞬間、刀を男に突き刺した。



いや、 突き刺せたと思った。 実際は素手で刀を抑えられていた。


「 おいおい、 ひでぇなぁ。何もしてねーじゃねぇか。」

間の抜けたような声が耳を通る。 その声に腹が立つ。

「 何もしてない? 俺たちの街を破壊したのはあなた達だ。」

精一杯の力で睨みつけた。




― 俺たちの町を破壊したのは、龍が護る国ドラグウェル王国。 我が国トウジシ国と1年間にわたり戦争してきた。

が、 ことごとく主要な街は 落とされ 敗北。

この王都も被害は大きかった。―



俺の言葉に男は何も答えなかった。 ただジッとこちらを見ているだけだ。

ジロジロという音が聞こえそうなほどの視線を向けられて、いたたまれなくなる。

ここから立ち去ろうと刀を男の手から引き抜こうとした。が、 強く握られて抜けない。


さらに引く力を強くしようとした時、グゥ~という音が耳に入った。 自分の腹の虫だ。


そういえば、 半壊した家から逃げだして数日。

口にしたものは、川の水と木の実を少しだけ。 そりゃあ、お腹が空く。


あまりの恥ずかしさに顔に熱が集まるのを感じる。

チラリと目線を上げると、男は笑いをこらえながら言った。



「メシ、食うか?」

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