第313話 会談2

「まあその結果は想像通りだ。

おかげでいま、クランド王を案内しているわけだ」


 そこで止めるなよ!

俺がジャパーネにまで攻撃しようとしているみたいじゃないか!


「要求はなんだ?」


 コレキヨ元首がそう口を開いた。

完全に誤解されている。

コレムネのやつも、後は任せたと言うが如く、口を閉ざしてしまった。

仕方ない。俺が説明するしかないか。


「要求ではなく、これはお願いになる。

MAOシステムの侵略を絶つために、転移門ゲートを破壊してくれ」


「「「「!」」」」


 同席した要人たちが色めきだつ。

それは、この世界の経済に大打撃を与えかねない提案だからだ。


「あなた方がオリジナルと言う俺たちの世界は、転移門ゲートを全廃することでMAOシステムの侵略を防ぐことに成功した。

俺はそれだけでも構わないのだが、コレムネの世界を見捨てるのは、さすがに寝覚めが悪いので、協力することにしたのだ」


「待ってくれ、我が国は転移門ゲートにより手に入る生産物に経済が依存してしまっている。

転移門ゲートの全廃は無理だ!」


 財務大臣がそう言うのも無理からぬことだろう。

実際に資源の供給が止まればこの世界の経済は破綻するだろう。


「いや、待ってくれ。

転移門ゲートを全廃したならば、なぜここに居る?」


 コレキヨ元首が重要な点に気付いた。

そう、転移門ゲートに代わるものがあるからこそ、ここに俺とコレムネが居るのだ。


「俺はワープ装置という単独で世界を渡る装置を持っている。

転移門ゲートを全廃すれば、それを貴国に提供する用意がある」


 ワープ装置を使えば、転移門ゲートに依存することなく、その転移門ゲートの先の世界の生産物が手に入るのだ。


「待ってくれ、我が国は他の世界の防衛に艦隊を派遣している。

転移門ゲートを破壊したならば、彼らを帰還させられなくなる」


 防衛大臣と紹介された人物が、そう指摘する。

それも考慮している。


「彼らにもワープ装置を渡して帰還してもらうつもりだ。

その作業はコレムネにも手伝ってもらうつもりだ」


 俺が巻き込んだので、コレムネが腰を上げて抗議しようとしたが、何ごとか呟くとそのまま腰を下ろした。

やるしかないのは理解しているのだろう。


「その見返りはなんだ?」


「MAOシステム撲滅への武力的人的協力。

俺と行動を共にする限り、転移門ゲート無しでの移動を保証する」


 俺の歯に何かが挟まった言い様にコレキヨ元首が気付いた。


「それはワープ装置の使用制限があるということか?」


 さすが頭の良い人は違う。

1を聞いて10を知るというが、まさにそんな感じだ。


「MAOシステムは、新たな技術を奪う。

転移門ゲートシステムを始め、今では陸上戦艦を奪われた」


「陸上戦艦が奪われたですと!」


 魔法技術庁長官が椅子を蹴って飛び上がった。

その情報はコレムネからも上がっていなかったようだ。


「それは俺が保証する。

わが第3任務艦隊は陸上戦艦に寄生した魔物にやられたのだ。

やつらの戦闘力は、もはや我らを上回っている」


 コレムネの言葉に魔法技術庁長官も黙り込んだ。

由々しき事態だと思ったのだろう。驚くのも無理はない。


「つまり、ワープ装置を奪われるわけにはいかないということか?」


 コレキヨ元首が先読みしてくる。

さすがだな。


「そうだ。そのため供給するワープ装置は、行先と帰還先を固定させてもらう」


「MAOシステムの領域に勝手に行かないようにということだな?」


「そうだ。MAOシステムの領域に侵入するのは、俺と行動を共にする艦隊のみだ」


 コレキヨ元首は、しばらく考え込むと、顔を上げた。


「受け入れよう。

転移門ゲートを捨てられなかったのは、他の世界の資源を手放せなかったためだ。

転移門ゲートが無ければMAOシステムの被害から逃れられることは解っていたのだ。

その転移門ゲートが無くても資源を回収できるのであれば、なにも問題はない。

そして、艦隊の撤退への協力と、MAOシステムの撲滅、それには私の方から協力を要請するべき案件だ。

喜んで協力しよう」


「よろしく頼む」


 俺のような正体不明の輩に、よく全てを委ねる気になったな。

コレムネがフォローしてくれているとはいえ、国の行く末がかかっているというのに。

タカトウコレキヨ、なかなかの人物のようだ。

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