第309話 決意

『タカトウ、どうする?

このままだと、向こう側はMAOシステムの魔物ばかりだぞ』


 俺はワープすれば死ぬだけだという現実をタカトウに突き付けた。

MAOシステムが転移門ゲートを奪ったということは、既にその先のタカトウの味方は倒されているはずなのだ。


『我がジャパーネの首都に戻ろうと思う』


『ならば、俺も付いて行こう。

こちらの世界が助かったならば、次はそちらの世界を助ける手伝いをしよう』


 別に俺もタカトウの世界を見殺しにしたかったわけではない。

優先順位が違っただけだ。


『あなたを裏切った俺を、俺の国を助けてくれると言うのか……』


『あくまでも、助けるだけだ。

MAOシステムは危険だ。

次元の壁で隔てられるのならば、それで終わりにしたい。

だが、MAOシステムの危険に晒されている者たちがいるならば、脱出に手を貸すぐらいはしよう』


 俺が行けばMAOシステムを殲滅出来るなんていうチート勇者のお伽噺は信じちゃいない。

転移門ゲートを失くして、MAOシステムの移動を阻止する。

タカトウの国、ジャパーネも隔離出来れば良い。

駄目ならば、ワープによって人を救い出す。

それぐらいならば、俺でも出来ると思っている。


 だが、MAOシステムは、技術を盗む。

転移門ゲートシステム、そして陸上艦まで取り込んだ。

ワープシステムを奪われるわけにはいかない。


『この世界は守った。他の世界まで守ろうとする俺を許してくれ』


 俺が家族にそう言い残した時、俺たちの目の前に巨大な艦がワープアウトして来た。


『なに言ってんのよ! 主様だけを行かせるものですか!』


 サラーナの声が魔導通信機から流れて来た。


『あなた様、私も同じ気持ちですわ』


 アイリーンも来てしまっていた。


『おまえたち、お腹の子供は!』


 転移は子供に悪影響があると考えられていた。

転移の派生であるワープが子供に影響するかもしれないのだ。


『何言ってますの?』

『これはワープだから安全性は格段に上がってますわ』


 クラリスにシンシアも来ているのか。

そして、それはセバスチャンからの伝言か?


 そう、そこに出現したのは陸上航空母艦キルトタルだった。

俺たちの家、俺の帰るべき祖国。

それこそが、移動出来る国キルナール王国だった。


『お前たち、どうして……』


『魔導通信で全部聞こえていたから気が気じゃなかったわ』

『プチちゃんが、ここ掘れわんわんしたんだからね!』

『全て準備が整っていて、このスイッチを押せって』


『それでワープして来たのか……』


 なんて危ないことをという気持ちに反して、俺は皆の気持ちが嬉しかった。

この世界に来て、プチしか頼る者の居なかった俺に出来た家族。

その家族の気持ちがありがたい。


『お前たちの決意はわかった。

危険ならば、直ぐにワープで帰すからな』


『『『『うん』』』』『わん』


『行くぞタカトウ! 座標を転送しろ!』


 俺は嫁たちと共に、タカトウの国ジャパーネへの首都へとワープするのだった。

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