第300話 落し所

 タカトウは俺を睨みつけて来た。

折角友好的な関係を手に入れたと思ったのに、俺の決断はタカトウを怒らせたようだ。


「タカトウは、どうするつもりだったのだ?

この世界を巻き込んで戦うつもりなのか?」


 俺のその言葉に、タカトウははっと我に返ったようだ。

自分たちのことしか考えていなかったと。


「すまない。巻き込むつもりは無いが、もう少し協力して欲しい」


「それはタカトウたちを転移門ゲートの向こうに送り出せば良いのか?」


 タカトウたちさえ送り返せば、この世界の干渉は終わりという選択肢だ。


「いや、すまないが、友軍艦の修理もお願いしたい」


「つまり、転移門ゲートでタカトウの世界の艦をこちらに引き込んで修理したいということか?」


「そうしてもらえると有難い」


 それはおかしい。

タカトウたちの世界では、いくつもの世界で第6ドックのような修理施設を持っていたはずだ。

そこに転移門ゲートで転移すれば、良いはずなのだ。

それが使えないということは、MAOシステムに負けて使用不能になったことを意味する。


「その修理の間、転移門ゲートは繋がっているのだろう?

そこからMAOシステムがこの世界に侵入して来ることは無いのか?

いや、今までの修理施設を頼れなかったということは、そうやって引き込んだ世界も戦場になっているのではないか?」


「その通りだ」


 タカトウ、それは駄目だ。

ここも戦場となる。それは俺が飲める条件ではない。


「俺はこの世界に、俺の国に、俺の家族に責任がある。

転移門ゲートは壊す。

ただし、タカトウ艦を送り出すまでは待つつもりだ」


「それが最大の譲歩か」


 タカトウが悔しそうな表情をする。

それは友軍艦隊の敗北を意味するのだろう。

だが、俺はタカトウを見捨てたわけではない。

この世界を守りつつ、タカトウを援護する方法を考えていたのだ。


「いや、この装置を託そう。

たぶん、これを使えば次元の壁も越えられる」


「なんだそれは?」


「ワープ装置だ。

その挙動は転移門ゲートにそっくりなのだ。

これを流用すれば、転移門ゲート無しに陸上艦で世界を渡れるはずだ」


 ワープ装置は転移魔法陣の応用だと思っていたのだが、どうやら、この魔法陣に転移門ゲートシステムの技術を転用すれば、陸上艦で世界を渡れる可能性があるのだ。

俺の感覚的では出来ると信じている。

それは魔導の極と生産の極が出来ると囁いているのだ。


「そんなものがあるのか!

でも、良いのか?」


「それでこの世界が安全になり、貴様を援護出来るならな」


「ありがたい。感謝する」


「気が向いたら、俺も参戦する。

こちらにMAOシステムが渡って来ないならば、俺から潰しに行っても良いだろう」


 MAOシステムがこちらのアドレスを知った可能性もある。

ならば、こちらの情報を持っている戦闘単位を他と連携する前に叩いてしまうべきだ。


「そこまで……」


 これでタカトウとの話合いは終わりだ。

だが、気になることがもう1つある。

これを解消してもらわないと、友好関係は結べない。


「おい、お前ら、いつまで俺に銃を向けている。

尤も、俺に銃は効かないと、判っているだろう?

陽葵ひまりが怒る前にやめとけ」


 陽葵ひまりがブチ切れ寸前だった。

誰かが1発でも撃っていたら、全滅していたことだろう。


「おまえら、なんて失礼なことを。

今後絶対にクランド王に銃を向けるな!」


 どうやら、俺とタカトウの友好関係は解消とはならなかったようだ。

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