第232話 共闘
「だが、欺瞞装置の弱点も発見した。
その弱点とは正面にしか欺瞞装置を使えないということだ」
それは技術的な問題で欺瞞できる範囲が狭いということと、海上艦として動けば必ず見えてしまう航跡を隠すためだと思われる。
その解決策が正面にしか使えないということなのだろう。
「つまり、上空から監視すれば、敵艦の発見は容易なはずだ」
俺がそう言うと、バイゼン共和国側が沈痛な表情になってしまった。
「ん?」
せっかく解決策を教えたのに、どうしてその表情なんだ?
「上空からとは、不可能ということではないか……」
「んん?」
どうも話がかみ合わない。
「まさか、貴国には伝説の飛行機械が存在するのか?」
そういや、バイゼン共和国も文明レベルがちぐはくで統一感が無かったのだった。
戦艦を動かせる内燃機関を持っているのに、乗用車がなく、未だに馬車を使っていた。
つまり乗用車よりも複雑であろう航空機も存在していないため、上空からの監視など不可能だと言うのだろう。
確かに、こちらの大陸も飛行機械は伝説的存在だった。
発掘品が稼働出来ていたのは奇跡なのだろう。
第13ドックが航空機を製造できるのは、黙っておいた方が良さそうだ。
しかし、空を飛ぶのはワイバーンに騎乗すれば出来ることだ。
「まさか、ワイバーンに乗るとかもしない?」
「魔物をどうやって使役するのです?」
そういやバイゼン共和国には魔法文化も無いんだった。
ワイバーン騎兵も魔物であるワイバーンを魔法的に飼い馴らしたからこそ実現しているのだ。
バイゼン共和国にとって、空からの監視など不可能なのだ。
「となると、複数の艦で多角的に航跡や引き波を監視するしかないかな」
「なるほど、それならば対処可能ですな」
角度が付けば、面での欺瞞は意味をなさないだろう。
盾の後ろに隠れた兵も、違う角度から見れば隠れている身体が盾からはみ出して見える。
単艦だからこそ通用する装置ならば、複数の艦が違う角度から監視しあえば良いのだ。
我がタカオは、1回ぐらい撃たれても防御魔法陣で耐えられる。
その後で魔導砲を海面掃射すれば敵艦の発見は容易だ。
問題は相手が艦隊だった場合だろう。
我が国の問題は海上戦闘艦がタカオしか無いことなのだ。
複数の艦を相手にするのは、敵に欺瞞装置が無くても厳しいかもしれなかった。
常に航空機やワイバーンを上空監視で飛ばしておくのも運用上の問題が発生するか……。
撃たれた後ならば緊急発進で見つけられるだろうが……。
相手が複数だと監視の目が全てに届かないかもしれないな。
監視衛星でもあれば丸見えなんだがな。
「トラファルガー帝国の戦力は把握していないのか?
ああ、軍事機密で答えられないならば細かくは訊かない」
「海軍力は把握していたつもりでしたが、潜水艦など見えない戦力がどの程度増えているかは未知数ですな」
ああ、確かに潜水艦の配備数は把握できないだろうな。
海上と海中から同時攻撃されると面倒だしな。
「我が国も国籍表示をしているのにも関わらず攻撃を受けている。
バイゼン共和国とは、今後も共闘していきたいと思っている。
よろしく頼む」
「こちらこそお願いいたします」
とりあえず、こちらの戦力が整うまでは、バイゼン共和国の艦隊に頼るしかない。
バイゼン共和国の艦数と我が国の対抗兵器でお互いに守り合うことが出来るのはないだろうか。
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