第223話 潜水艦サルベージ
「しばし待たれよ、今からこの地方の領主が挨拶に参る。
何卒面会の機会を!」
俺たちがタカオに戻ろうとすると、ゴードン司令が慌てて引き留めた。
「我が王を待たせるなど無礼であろう!」
「此度の扱い、王が許しても我らは許さんぞ!」
うわー、アイとティアが怒っちゃったよ。
「も、申し訳ござらん」
彼女たちも、俺が一度許したから我慢していたが、二度目はないということなのだろう。
「悪いね。次の機会にしてくれ」
ここはアイとティアを立てて、領主との面会は勘弁してもらおう。
「せめて、回収作業の視察……」
俺はゴードン司令の返事を待たずに【転移】でタカオの後甲板の転移魔法陣――陸上艦は前甲板だったが、艦首に武器を集中したため海上艦は後ろとなった――に一瞬で帰還した。
目の前から俺たちが消えたことで、西部方面艦隊司令部は大パニックになったそうだ。
「出航だ! 潜水艦の残骸を回収する」
艦橋に戻ると、俺は出航を命じた。
タカオの艦種右と艦尾左のスラスターがジェット水流を発生させる。
すると300mの巨体がその場で左回転すると沖に艦首を向けた。
そして艦尾から主機のジェット水流が発生し、タカオはいきなり50kphの巡航速度に加速、バイゼン共和国の港を後にした。
その巨艦の高速機動に、港に入っていた戦艦グラスターの乗組員は恐怖したという。
あの
その目撃情報からバイゼン共和国海軍はタカオを模した実験艦を建造したが、どれもが失敗に終わることとなる。
魔法技術がなけれなあの艦は造れないという結論に至ったのだった。
◇
潜水艦の撃破地点は、タカオの電脳が記した航海記録にしっかり残っていた。
タカオは、そこまで進出すると、左舷の重力加速砲を海面に向けて斥力場フィールドを発生させた。
タカオの位置を微調整して海底を捜索すると、潜水艦の艦体が見えた。
その艦体は水圧で破孔から拉げていた。
「【収納】!」
どのように回収するのかは悩むまでもなかった。
俺がインベントリに収納すれば良いだけだったからだ。
俺は視界に入った物をインベントリに収納できる。
潜水艦がそこに見えているならば、収納が可能なのだ。
しかも自動排除すると選択すれば、乗っている生き物を排除して収納できる。
これはネズミ1匹でもいたら収納できないといった問題を回避するためらしいのだが、俺の場合はそれが人間でも問題なく出来てしまう。
収納の極、恐るべしだ。
「あ、生存者がいたならば、助けて尋問した方が良かったか!」
しかし、そうなるとインベントリに収納では潜水艦を回収できない。
物理的に持ち上げるなどの回収作業が必要になる。
幸か不幸か生存者は居ないようだ。
おそらく遺体も一緒に回収されているだろうから、それも貴重な資料となる。
人種的特徴などを調べるならば、バイゼン共和国に協力を要請した方が良かったか。
「輸送船も回収したら、またバイゼン共和国の港に戻るぞ」
俺はタカオの後部甲板にインベントリから70mほどの潜水艦を出すと見分を始めることにした。
タカオが普通の艦ならば、後部が重くなってバランスを崩すところだが、そこは重力制御機関を持つタカオだ。
後部を軽くしてバランスを保つなどお手の物だった。
「電脳、輸送船の沈没地点に向かってくれ」
『了解しました』
俺がいなくても自動航行出来るのが電脳搭載艦の強みだな。
俺は存分に潜水艦を調べることにしよう。
だが、簡単には行かなかった。
潜水艦の艦内には思いっきり海水が充満していたのだ。
インベントリに収納されたときに、艦内の海水まで収納されていたのだ。
重力加速砲は二重構造の外壁を真上から貫通し反対側の艦底まで抜けていた。
その艦底の穴から海水が抜けるまで調査はお預けだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます