第171話 閑話・ミーナ翔ぶ
クランドが
「ミーナは艦長だから」とクランドに誤魔化されてるけど、ミーナは本当の理由を知ってる。
クランドはミーナの言葉が訛ってると思ってるんだ。
弾着観測の報告が聞き取りにくいと密かに思ってるのがその理由だ。
だから乗るなと言ってる。
そんなことを言うのはクランドだけだ。
傭兵のみんなも「ちょっとイントネーションが独特?」と言うだけだ。
解せない。どうしてクランドだけそう言うのか?
「どうしてにゃ?
「俺の【言語の極】によると、ミーナは古代ガルフ語訛りがあるってなっているぞ。
俺はスキルで会話しているから、そこで翻訳が入っている。
だから元が訛っているかは判断できない。
だが、俺にはしっかり訛りとして翻訳されていて、そう聞こえているぞ」
「にゃんだってー!!!」
どうやらクランドのスキルが優秀すぎておかしなことになってるようだ。
こんなことで
ミーナは空を愛するワイバーン騎兵なのだ。
「これはポイント11の機体じゃにゃいか!」
「そうだよ。
対火竜でこれを使おうと思ってな。
ああ、操縦はゴーレムがするからな」
これは
前にも乗ったけど、これはまた乗るしかない。
「
乗りたい。乗りたい。絶対に乗る!
「これは一瞬の判断ミスが死につながる。
あの時もゴーレムの自動操縦だっただろ?
操縦はさせられないぞ?」
クランドはワイバーン騎兵を舐めてるな。
速さこそミーナの求めるところだ。
絶対に乗る。そのためには多少の嘘はいたし方ない。
「大丈夫にゃ。乗るだけにゃ。操縦はゴーレムに任せるにゃ」
有無を言わせずコクピットに乗ってしまう。
「本当に? 絶対に操縦しようと思うなよ?」
よし、乗ることに成功したぞ。
後はどうにでもできる。
「おいおい」
「大丈夫、大丈夫」
他の機体にも獣人たちが取り着いていく。
皆空間把握能力の高い猫系の獣人たちだ。
なし崩し的に
奴らもワイバーン騎兵だ。
こんな速そうな機体、ワクワクしないはずがない。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
火竜から
操縦はゴーレムがしてるが、かなり速い。ゾクゾクする。
一応ここまではゴーレムの操縦に手を出してない。
模範的な安全運転だから、クランドも文句を言って来ない。
ゴーレムの操縦はコクピットの操縦桿やスロットルとフットペダル――これは
基本的には
今までは火竜が飛んで来たらそのまま逃げるのが通例だった。
だが、直掩の
武器は機銃というもので、高速の弾が飛んでく。
しかし、火竜の鱗に弾かれてダメージを与えてない。
「にゃんだこれ? これじゃ嫌がらせにもにゃってにゃいにゃ!」
コクピットの窓には火竜に合わせた四角い枠が出て点滅してるのに、何も有効な武器を使えてない。
これが対火竜の兵器なの? 速さしか優位な点がないぞ。
この機体にはたしか、陸上艦からワイバーンをバタバタ墜としている重力加速砲があったはず。
なんでゴーレムはそれを撃たない?
その時、ミーナは気付いてしまった。
操縦桿についているボタンが点滅してる?
四角い枠には火竜が入り続け点滅してる。そして操縦桿のボタンも点滅してる。
「押せってことかにゃ?」
好奇心に負けて、つい操縦桿のボタンを押してしまう。
ズンという重い衝撃とともに重力加速砲から弾が高速で撃ち出され火竜に直撃した。
やっぱりこの四角い枠とボタンで重力加速砲が撃てるんだ。
もう1発重力加速砲を撃つ。
重力加速砲の弾が火竜の鱗を撃ち抜き、火竜が墜落していった。
「勝てるにゃ!」
もう我慢できない。
操縦桿を動かし
機体の速さに目も操縦も追いついてる。
「イケるにゃ!」
この後、思いっきり
旋回中に身体が重くなるけど、そんなことは獣人の強靭な肉体と体力で振り払う。
獲物を追う獣人の目が火竜をとらえる。
コクピットの窓の四角に火竜を合わせると点滅する。
ゴーレムが操縦を補助して機首を火竜に向け続ける。
操縦桿のボタンを押すと重力加速砲が撃ち出され火竜が墜ちていく。
「カ・イ・カ・ン・にゃ!」
この日ミーナは大空を自由に翔けた。
乗っていた獣人も少し怪我をしたが、血を流しながらも痛みを忘れて興奮してる。
存分に空を楽しみ、その顔には笑顔があふれてる。
ミーナたち獣人には
このまま乗せてもらえるようにクランドに直談判するぞ。
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