第127話 戦後処理3
「主君、
農園の屋敷に帰って、リーンワース王国の陸上戦艦を修理するという話をすると、リーゼロッテが反対した。
リーゼロッテによるとリーンワース王国は信用ならないと言うのだ。
「リーンワース王は、主君に対して、
「ああ、そうだったな」
それの何が問題なんだ?
ご褒美がもらえるんだから何の問題もないだろ?
「
主君はリーンワース王とは対等の王です。
それが
「そうなの?」
「しかも領地を
対等な国に対してなら割譲と言うべきです」
リーゼロッテが滅茶苦茶怒っている。
ああ、そういう見方もあるのか。
いや、俺とリーンワース王は義理の親子なんだし、
どうやら王侯儀礼的には拙いらしい。
「まあ、俺なんて亡国の姫を娶っただけのぽっと出の王様だからな。
少なくとも自分の娘を嫁に出してくれたリーンワース王なら上から目線でも
実は俺って忘れられがちだけど中身26歳の身体年齢15歳なんだよね。
この世界では15で成人だが、まだペーペーの新成人なわけだ。
60オーバーのリーンワース王からしたら、例え俺が中身の26歳だったとしても上から目線で見られる小僧だ。
暖かく見守っているというイメージじゃダメなのかね?
「それは国が嘗められているということです。
主君はルナトーク、キルト、ザールという3国の王なのですよ?
国民のためにそこは毅然とした態度をとっていただきたい。
それに主君は、既にこの世界で覇を唱えることのできる実力者なのですよ?」
またまた御冗談を。
俺には世界統一だとかの野心も何もないからな。
嫁たちと平和に暮らせればそれでいいだけだ。
目標は忘れがちだけどスローライフだ。
それにはズイオウ領だけでいい。
降りかかる火の粉は全力で払うけど、平和が一番だ。
ああ、将来的には旧キルト領と旧ルナトーク領、旧ザール領は国民のために奪い返したいな。
領土的野心といっても、そんなもんだ。
「俺は覇を唱える気はないよ」
一応否定ておこう。
「ならば、ズイオウ領を守るためにも、リーンワース王国に過剰な戦力を与えるべきではありません。
リーンワース王国の者には何度も危険な目に合わされているではありませんか。
たしかに。そこは俺も危惧していたところだ。
魔導砲の搭載はやめたけど、代わりに搭載した重力加速砲でも陸上戦艦を撃墜できる。
それは北の大峡谷での戦いで証明された。
もし、その力がこちらに向けられた時、自らを防衛する手段を用意しておかなければならない。
「そこはいろいろ考えているよ。
とにかく、変にいじられて魔導機関を自爆でもされたら味方が巻き込まれる。
陸上戦艦がアホな貴族の手に渡って、こちらに砲を向ける可能性も考慮する。
それなら大丈夫とは思わないか?」
リーゼロッテは俺の説得に溜息をつく。
俺が何もわかってないと言いたげな様子だ。
「主君、いくら義父でも、リーンワース王を信用なさらぬことです。
親切から来ているのではないのです」
まあそれは俺も薄々気付いていたよ。
この地にキルトタルを降ろしたのは偶然だけど、地理的に都合が良いとの判断で租借、譲渡されたのは想像に難くない。
「でも、娘を2人も嫁がせているんだよ?
娘を切り捨てて攻めて来るなんて有り得る?」
冗談めかして言ったのに、リーゼロッテの反応は全く違った。
「この乱世では有り得ることです。
娘も所詮は政治の道具、国益のためには一切の躊躇なく切り捨てることでしょう。
それに娘と言っても人質外交で得た妾の子。正妻の子ではないことを肝に銘じてください」
姫にも格差があるんだ……。なんか切なくなってきたな。
「陸上戦艦の修理は約束なのでやる。
だが、それが我々に向けられた時の対策は充分にする。
それでいいか?」
リーゼロッテも俺のため国のために言いにくいことを諫言してくれたんだ。
その気持ちは充分に汲んでおこう。
「出過ぎた真似をしました。お許しください」
「かまわん。今後も俺が間違えそうになったら言ってくれ。助かる」
「有難きお言葉」
リーゼロッテはそう言うと下がって行った。
さて、リーンワース王国の陸上戦艦をどうするべきかね。
北の帝国に対抗できるだけの力を与えたうえで、こちらに牙をむいた時は倒せるような戦闘力。
その匙加減が難しいな。
いっそこちらに牙をむいたら機能停止させるのが良策かね。
こちらも防衛に特化した陸上戦艦を用意するか。
幸い鹵獲した陸上戦艦が有り余ってるからな。
重力加速砲に対抗しうる防御力の艦、艦を新造できる第13ドックなら、なんらかの手段が見つかるかもしれない。
俺は北の峡谷に陸上戦艦を引き取りに行った足で、そのまま第13ドックに向かい対策を練るのだった。
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