25歳未婚の父。でも、俺、DTなんですけど。

間宮翔(Mamiya Kakeru)

一章 DTなのに5歳の娘ができました

第1話 プロローグ

 うーん。困った。

 25年生きてきたが、この場面は初めての経験だ。対処法がわからん。


 俺は小湊こみなと賢太けんた。今年で25歳だ。中堅映像制作会社に務める社会人だ。その他は特に無い。強いてあげれば、料理が趣味と言うくらいか。


 で、今俺は困っている。

 会社の採用面接で彼女はいますかと聞かれたとき位に困っている。実際、今の会社の面接時に面接官から問われ、いませんと答えた。いますと言った奴は同期にはいなかった。あれが決めてだったのか。たまたまなのか。


 いま重要なのはそっちじゃない。

 このままで家に入れない。仕方がない。面倒だが、覚悟を決めるか。


「お嬢ちゃん、そこは俺の家の前なんだけど」

 そう、家の玄関の前に4、5歳くらいの青い髪を二つ結びにした女の子?が、玄関のドアの前に座っている。珍しく定時にあがれたので、久々に家で晩酌しようと、近所のスーパーで食材とビールを買って帰ってきたのだがこの事態だ。何故よりもよって俺の家の玄関前で。

 俺が声をかけると幼女はハッと顔をあげた。

 やはり女の子か。可愛らしいんだろうな。よく分からんが。ここまで整った顔立ちの女の子はそうそういないと思う。青い髪に髪よりも少しだけ薄い青い大きな目、幼い子特有のぷっくりとふくれた唇。顔も小さく、手足は細い。というか細すぎる。顔色も若干青白い。面倒ごとの臭いがする。


 すると、その幼女はとんでもない爆弾を振りかぶって全力投球してきた。

「あっ。パパだ。遅いよ。ママがこれからお仕事があるからパパと一緒に暮らしなさいって」

「はぁ?」

 間抜けな声が出てしまった。これは何かの冗談だろうか。いま、パパと聞こえたんだが?

 人は理解の範疇を超えたとき、思考が停止すると言っていた人がいたが本当だな。30秒ほど活動停止してしまった。再起動準備。第1種戦闘配備。おっと、いかんいかん。

「えっと。俺はお嬢ちゃんのパパじゃないよ」

「ん?パパだよ?だって、ママが毎日写真見てパパだって言ってたもん。あやかのパパだって言ってたんだもん」

 今にも泣きそうになっている。やばい、涙が溢れてきている今にも目からこぼれそうだ。こんな玄関前ところで泣かれるとまずい。ご近所の目が……。


「わっ、わかった。わかったから泣かないで、取り敢えずお家に入ろうか!ねっ」

 俺は慌てて、取り敢えず家の中に入ってもらう。しかし、こんな幼女を家に入れて大丈夫なのか?通報されたら、捕まってしまうのではないか?未成年者なんちゃらとか最近よく聞くし。恐々と思いながらも、しかし他に方法もない。玄関の鍵を開けて中へ誘う。

「せまい家だけど、取り敢えずどうぞ」

 名も知らぬ幼女は、俺の後ろを無言でついてくる。

「えっと、このスーツケースは君の?」

 頷く幼女。玄関前にあったスーツケースも取り敢えず家にいれようと持ち上げようとしたが無理だった。重いなこのスーツケース何が入ってるんだろう。まさか死体でも入ってるんじゃ…。そんなわけ無いか。


 玄関で靴を脱いでもらい、リビングへと案内する。

「取り敢えず、そこのソファーに座ってくれる?」

 幼女はこくんと無言でうなずき、ソファーへちょこんと座った。

 姿勢がきれいだな。背筋を伸ばしてきちんと座っている。緊張しているのかもしれないな。

 っていうか、家にあげっちゃたよ。事案だよな。もし親が殴りこんできたら、確実に有罪だ。なんだこれ、新手の美人局か。だったらたちが悪すぎる。

 それにパパってなんだ。写真見てたって言ってるから、この子の親はたぶん知り合いだよな。たぶんあいつの子だよな。見るからに。やっぱり面倒ごとだったか。

 でも一つだけはっきりしていることがある。俺は断じてこの子の父親ではない。それは断言できる。


 だって、俺は、


 DTどうていだもん。

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