第1話旅の始まり




 水面で顔を確認した後、私はその場で蹲っていた。

 幸いにも、服は着ていたが、いかんせん、スカートなもので、足がスースーする。

 冬場は寒そう……。

 もう一度、水面を見る。

 やっぱりそこには、二本角赤目金髪美少女が……。

 しかも、背中側に何か見える。

 これは……翼と尻尾?

 蝙蝠よりかは、ドラゴンの翼みたいだなぁ……。尻尾もドラゴンのみたいだぁ……。

 はっ!こんなことしてても意味がない!

 まず、ここは周りになにもない!

 食糧、住処、無し!

 そして、この見た目だから、人間を頼ることはできない!

 なんてことだぁ……。

 さて、人間ではないから、岩を砕いて、容器でもできないかな?


 結果、できませんでした。

 岩は粉々に砕けました。

 おい、岩。ちゃんと仕事しろ。RPGならではの破壊不能オブジェクトでいろよ。

 ほんと、使えない力かよ。

「はぁ……もう昼頃かぁ……」

 にしても、異世界か……。

 魔法とか使えんのかねぇ?

 この翼とか、角とかを透明化できたらなぁ。

 でも、どうやって魔法を使うのかわからないからなぁ。

 さて、そろそろ移動しますか。水飲んでから。


 さて、移動するにしても、どうやってだ?

 まず、周りは岩場。歩きにくそうだ。

 翼があるから空を飛んでいけばいいのか?

 翼か……翼ねぇ。どうやって動かすんだ?

 これだと、飛んでいくのも少し無理があるぞ。

 なんで、序盤の序盤から詰んでるんだよ。

「………………おーい」

「?誰だっ!?」

 突然上から声が聞こえたから、上を見ると、

「私だよ。ほら、さっきぶり」

 本当につい先ほどまで話していた顔のやつがいた。

「いや〜、ごめんねー。ちょっと説明を忘れてた」

「忘れるなよ」

「それで、まず、君の名前が変わったんだけど、えーっと……あったあった。魔族の1人。えーっと……リアリリスだね。あ、リリスではないからね」

「リア、リリス?」

「そう。リアリリス。そういえば、私の名前を言ってなかったね。私はガルゴエラ。神の1柱さ」

「ガルゴエラ……聞いたことないな」

「そりゃぁ、消えた神話に登場する神だからね」

「それで、なんで今出てきた?」

「それは、君に飛び方とか教えてなかったなぁって。おでこ、出ーして」

 言われた通り、おでこを出す。

 すると、ガルゴエラは私のおでこに手を当てた。

「っ!?」

「ちーと、痛いよ」

 突如として、激しい頭痛が襲ってきた。

 でも、それは一瞬で、すぐに治った。

「はい!一応、飛び方と魔法の使い方。そして、私の加護を与えたから、これで充分に生きて!あ、食べ物は食べる必要ないからねー」

「は?ちょっ!!なんか説明してからにしろー!!」

 ガルゴエラは、そのまま何処かへと消えていった。

 アイツ、さぼりたいのか?

「飛び方……あ、自然と頭に入ってくる」

 ガルゴエラ……ありがとう。まだ、生きていけ……ねーよ。

 どんどん頭の中に知識は入ってきても、寝る場所がどうするか決まってないんだよ。

「洞窟探すか……」

 知識としての飛び方で、空へと舞い上がり、周囲を見渡すことにした。


 一方、近くの街、ベルグボルグ。

 そこは、商業が発展した街だ。

 近くに魔族等が住む森があることで、冒険者が多く、人の往来が活発になり、道ができ、商人が通り、冒険者達が商品を求め、街ができた。

 そのベルグボルグの冒険者ギルド。そこの1つの駆け出しパーティーが、騒いでいた。

「いや、だからこそ、今回の採集クエストを4人で行くべきだ!」

「いや、危ないから明日に回そうよ」

「……このクエストは明日も受けれる。明日だ」

「そうかよ……くそっあと50ジジでどうやって過ごせばいいんだ?」

「いいじゃねぇか。俺なんて20ジジだぞ」

「しょうもないことで張り合わない。さ、宿に行こ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る