優秀な人達の引き立て役
仲仁へび(旧:離久)
01
私は地味で、さえない容姿の女性。
一般的な人間の、模範のような存在だ。
身分は学生だけど、青春らしい青春は一般的な事しかした事が無い。
誰かとつきあって恋をしたり、何かの大会に出て勝敗を競ったり、目標校に進学するために勉学にはげんだりもした事が無い。
とりたてて素晴らしい部分のない私は、その存在が示す通り、地味な人生を送ってきた。
私は今高校3年生。
きっとこのまま何も特別な事は起きずに、高校生活を終えて、まあまあなランクのごく普通の大学に進学するのだろう。
けれど、そんな私にある日、転機が現れた。
学校の通学に利用している、いつものバスの停留所。
田舎だから、私一人しかいない。
そこに、一人の男性が加わる事になった。
彼は、私に気があるようなそぶりをみせ、毎回はなしかけてきた。
一般的な私には不釣り合いな、恰好良い男性が。
それから少しずつ、バス停以外で会う事も増えて、やがては彼と付き合うようになった。
それから、時をおなじくして、学校で部活に誘われる事になった。
大会に出場した経験のある部活だ。
専門性の高い技術が求められるはずなのに、なぜか私に声をかけてきた。
それで大会にも出場する事にもなったけど、結果はもちろんふるわなかった。
けれど、他の部員達と触れあいながら頑張るのは、達成感があった。
しばらくすると教師に声をかけられた。
もう少し、ランクの高い進学校を目指さないかと言われて、背中を押された。
けれど、他に目指したい高校もなかったので、断る理由もなかった。
その後私は、二番目の志望校として、進路希望用紙に書く事になった。
どうせ無理だけどと頑張った私は、無事にその学校に合格してしまった。
大学生になった今は、それなりに満ち足りた生活を送っている。
格好良い彼氏もいて、新しい同好会にも顔をだしつつ、聞く人が聞いたらちょっとだけ羨ましがられるような学校生活を。
正直、どうしてこうなったのか分からない。
今まで地味な生活をおくってきたのに、一体なにが原因だったのだろう。
自分が頑張ったから、などとうぬぼれるつもりはない。
人間は、そう簡単にはかわらない。
ごく普通の人間として生きていた私は、そのまま普通の人生を歩むつもりだった。
たぶん、明確な理由なんてない。
めぐりあわせが良かった。
運が良かった。
その程度の事なのだろう。
なあ、君は、引き立て役って知ってるか?
主役を引き立ててくれる存在だ。
アニメやマンガなんかでいうと、敵の存在がそうだよな。
敵が醜かったり頭が悪かったりすると、その分主人公が引き立つ。
こう言えば、よく分かるだろ?
創作物での話は人生にだって、あてはまる。
イケメンがイケメンに埋もれてても、宝の持ち腐れ。
少しはランクダウンした人間と付き合わないと、人間がロクに輝かないんだ。
だから俺は、ごく普通の女の子を彼女に選んだ。
すると、俺の存在が際立つ際立つ。
きっと、彼女の周りにいた妙に優秀な他の連中もそうだったろうさ。
晴れ舞台でより自分の力をアピールするために。
優秀な生徒を輩出した実績を作り出すために。
彼女はまんまと利用されていたってわけだ。
でも、別にこれでもまあいいよな。
誰にも迷惑かけてないし。
持ちつ持たれつ。
ギブ&テイク。
不幸になった人間なんていないんだから。
優秀な人達の引き立て役 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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