一番の宝物
仲仁へび(旧:離久)
01
友達の間で、ある物を見せ合いっこする事にした。
一番の宝物。
それぞれが大切な持ち物を持ち寄って、自慢しあうのだ。
私達は、さもそれがとても素敵な事だとばかりに、持ってくるものについてお喋りしあって、見せ合いの約束を交わした。
翌日、私達はそれぞれ自分が一番だと思う宝物を持ってきた。
ある少女は、母親が買ってくれたワンピースを紹介した。
ある少女は、誕生日に友達からもらったアクセサリーを見せた。
またある少女は、数年前になくなったらしい祖父の形見である本を持ってきた。
私も、彼女達に合わせて、修学旅行で友達と買ったお揃いのキーホルダーを自慢した。
私達はとても満足しあって、自分達が仲の良い友達だと確認し合うのだ。
けれど、それって本当に宝物?
本当に大切な宝物は、見せびらかすようなものでもないし、軽々しく持ち歩く物でもない。
どうせ、彼女等が持ってきた自称宝物は、二番目か三番目、それどころか、十番目くらいの品物なんだろう。
そんな偽物を持ってきて、確かめあっているような友情が、大したものだとは思えない。
形だけの儀式なら、やらなきゃいいのに。
でも、そう。
人間は弱い。
どこかの集団に属していないと不安になるし、何かあった際に人から守ってもらえない。
協調性のなさと、空気の読めなさは、この人間社会では致命的なのだ。
だからみな、今日も嘘の仮面をはりつけて、嘘ばかりの生活を送っていくのだろう。
一番の宝物 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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