第58話 [集いし大罪者]

あるじ殿、ここでは何をする場所なのでしょうか?」


 第2ステージまで向かう道中、桜丸からそんなことを聞かれた。


「んー……ここはダラダラする場所」

「成る程、そうでしたか! で、では食べるのは駄目なのでしょうか……?」

「いや……まぁ、いいと思う。好きなことしたらいいんじゃね……」

「好きなこと……」


 俺を涎垂らしながら見ないでほしい……。


「ま……俺は寝たいだけだ……。お前も好きなことしとけ。……俺を喰う以外……な」

「承知した……」


 現代社会もこのゲームもまだわからないことだらけだろうが、まぁ楽しんで学んでいったらいいんじゃないかな……。わかんないけど。


「主殿見てください! 蝉を捕まえました!」

『ミ゛ィィィイイ!!!!』

「おー……うるさいな。どうするんだ、それ」

「それは勿論……」

『ミ゜ッ――』


 ――バリバリボリボリ……


 口に放り込んで咀嚼し始めていた。

 あまりに一瞬で衝撃な場面を見せつけられ、「うわっ」と小さく声を漏らしてしまう。


「んむ……美味しい! 」

「そう……なら、いいと思う……」

「主殿の分も……」

「いらないっ(キッパリ)」


 これがコイツの楽しみ方なんだろうな。

 多分、コイツのことはどれだけ付き合いを長くしても若干の引きは一生ついてくるんだろうな。


 そんなことを思っていたその瞬間。


「っ! 主殿!」

「熱っ……。……この黒い炎は……」


 咄嗟に桜丸が俺を抱えて避ける。

 何に避けたかと言うと、嫌な思い出があるあの赤黒い炎だった。


「オイオイ! 魔物のくせにいい動きすると思ったが……プレイヤーじゃねぇか! クソが!! しかもあん時の赤目野郎!!」

「うげっ……。イラ……だっけ」


 頭トゲトゲのいつもイライラしてそうな面倒くさい相手だ。


「主殿になんて不躾な態度を。毬栗頭……中は甘いとかでしょうか」

「いや……こいつに噛み付くのはやめとけ。俺が嫌いな面倒ごとを増やすな」

「あぁん!? テメェのその言い方もなんか癪に触んなァ!!」


 爆発頭は手から赤黒い炎をメラメラと出し、桜丸は右腕から木刀を作り出している。

 一触即発とはまさにこのことだろう。


 少しだけ右目を開けてみたが、どうやら俺たち三人以外にもまだ人はいたみたいだ。


「…………色葉?」

「ひゃぁあごめんっ!」


 近くの木陰に隠れていたみたいだ。


「え、えっと……話しかけようとしたんだけど、とんでもない光景を見たせいで話しかけづらく……」

「あぁ……あれか」


 ……偶然か、それとも必然か……。

 怠惰、憤怒、色欲、暴食が集まったみたいだ。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


みなさんは蝉食べたことありますか?

僕はないです。

美味しいんでしょうか……。

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