第50話 [野菜魔物]
「紅羽く〜〜ん!!」
「うー…………んぁ……?」
誰かから呼ばれ、俺は夢の中から引きずり出される。
寝ぼけ眼で声の方を見ると、毛ダルマで涙目の色葉の姿があった
「その毛は……。あー……色葉、冬支度か。俺も一緒に冬眠する……」
「違うよ! 動物さんたちに囲まれて大変だったんだよぉ……。それに、紅羽くん探すの大変だったんだから!」
「ごめんごめん……」
……いや、でも待ってくれ。
俺はあの仮面を着けていてバレないはずでは……? そういえばあのイライラしてる爆発頭も俺を見つけてたな……。
〝大罪〟……か? ス○ンド使いがスタ○ド使いに引かれ合うように、大罪の持ち主同士は引かれ合うんだろうか……。
ま、どうでもいいか……。考えるだけ無駄ッ。
「それで……? 無事に第2ステージに来たけど、何すんだ……?」
「律ちゃんに呼ばれたから私もわかんないかな……」
「そっか……。ん〜……! よく寝たし、ちょっと動いてまた寝よ」
「ま、また寝るんだね……」
ぐいっと伸びをして背筋を伸ばした後、また猫背にして立ち上がる。
色葉と話しているから、仮面の効果が無くなって人がこちらをチラチラと見ている。早くここから立ち去ろう……。
「動くと面倒ごとに巻き込まれそうだけど……まぁそん時はそん時か……」
「あ、そういえば裏ストーリー? みたいなのがアナウンスされてたね。えっと、私も手伝えることあったら一緒にするよ!」
「色葉……」
そのまま一生養ってほしい。
そんな考えが頭をよぎるが、本人の前では言わないでおくことにした。
二人でこの王国内を歩き始める。
このままだらりと散歩をするつもりだったのに、早速面倒ごとに巻き込まれた。
『だ、誰か助けてくれ〜〜!!』
「…………なんだ、アレ」
デッサン人形が助けを求めているのだが、そいつを襲おうとしてる奴が変なのだ。
『運営大丈夫か?』となるレベルで。
「色葉、アレ……」
「野菜……だよね……?」
とりあえず鑑定をしてみた。
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にんじんくん(種族:野菜魔物)
体力/30
魔力/26
攻撃力/38
防御力/10
速さ /30
幸運/10
[スキル]
【飛行】【マッスルパンチ】【再生】
説明:にんじんが肥大化し、翼と強靭な四肢が生えた魔物。呪いが影響して生まれた。まあまあ美味。
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「……どっかで見たことある気が……。なんかの試験……? なんだったっけなぁ……」
「そ、そんなこと言ってる場合じゃないよ!」
にんじんはずんずんとこちらに向かってきて、ムキムキの腕を振り上げてきていた。俺は手をかざし、ボソッとスキル名を唱える。
「【ファイアーボール】」
にんじんに燃え移るが、あまり燃えていない……というか、再生しているみたいだった。
「めんどくさ……。【ファイアーボール】×10。【プチエクスプロージョン】」
野菜は真っ黒焦げになって倒れ込んだ。
《にんじんくんを討伐。ドロップアイテム
【にんじん★★☆☆☆】を獲得》
《スキル【模倣】を使用します。スキル【マッスルパンチ】を獲得しました》
「い、いらない……」
なんだ、【マッスルパンチ】って。俺のもやしみたいな腕がむきむきになるのか? ……いらない(二回目)。
「い、一瞬でやっつけちゃったね……」
「……色葉は怪我してないか……?」
「うん! 大丈夫! 助けてくれてありがとう」
「……ん」
このステージはさっきみたいな再生持ちの野菜の敵とかが増えるのだろうか……。こういうのを担当してくれる人が仲間になってくれたらいいんだけどなぁ……。
【鑑定】で美味って書いてあったし……。
例えば……そう――
――暴食の人とか……ね。
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