裏切られた勇者

仲仁へび(旧:離久)

01 裏切り



 闇の勢力が根城にするその場所。

 四天王の居城。

 魔王の配下である強大な魔族の四人目を倒した瞬間に、勇者である俺は仲間から裏切られた。


「勇者様、あんたはもう用済みなんですよ!」


 勝手に異世界に召喚しておいて、勝手に魔王軍とたたかわせておいて、それでこれかよ。


 背中から貫かれた大剣が、腹を突き破っているのが見える。

 背後を振り向いて誰が俺を刺したのか確かめたかったが、そうする前に剣がひきぬかれて、魔法で吹き飛ばされた。


 強い痛みにうめく俺は、かすむ目で周囲を眺める。


 多くの仲間だった者達。だが、周りに俺の味方をしてくれる人間はいないみたいだった。


 誰も、俺の元へやってこようとする人間はいない。


「勇者様は強い。けれど、俺達はその勇者様の力をコピーするすべを身につけた。これでもう、あんたに頼らずとも戦える! 強さを手に入れられるんだ」


 声の主の顏は見えない。

 けれど、声音からして、何となく誰だか想像はついた。


 ルインツ。

 俺を刺したのはアイツだ。


 俺に弟子入りして、俺の事をことごとく持ち上げてくる新米剣士。


 うっとおしいけど、良い奴だと思っていた。


 国の未来や、人々の将来を考えているのだと思っていた。


 だけど、違ったらしい。


「勇者の力を盗めるなんて事が分かったら、俺はきっと大出世だ! せいぜい良い踏み台にさせてもらいますよ」


 ルインツがあざけりの声を放ちながら近づいてくる。


 そして、高笑いしながら剣を振り上げた。


「さようなら勇者様」


 次の瞬間、仲間の剣によって俺は命を落とした。


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