「……俺だ」
仲仁へび(旧:離久)
本編
01 異世界転生してたモブ
乙女ゲームの世界に転生した。
と、いうと普通は女性をイメージするかもしれない。
けれど、転生したのは俺だ。男だ。なぜだ。
転生したのは、「ミラクル・ラブリー」という名の乙女ゲームの世界。
中世西洋って感じの舞台。で、学園もの。(でもちょっとところどころ和風要素がまじってる。後々分かると思う)
しかし「ミラクル」で「ラブリー」か。男にはきつい名前だ。
ゲームの内容には特に、格闘要素があったりロボットもの要素があったり、冒険要素があったりするわけではない。
普通に女性向けで、普通に女性に人気である。
で、あるのになぜ転生者が俺なのか。
転生先の体を眺めてみる、男だ。
どの角度からどう見ても、男だ。
不思議な力で女になるとかいう、転生ものでよくある加護やチートなどもない。
俺は男のままで生きていく、ただの男だった。
だから、女性に転生して、中身は男だけど表面上はキャッキャウフフ、な事になるわけでもない。
顔も前世とそっくり。
俺だ。俺そのものだ。
だからこそ、俺であるがゆえに謎だ。
イケメンでもなんてもないし、モブ顔だし、すれ違っても印象に残らない個性してる。
なぜチョイスを俺にした。
首をかしげる俺は、執事の声で起床を急かされた。
「ぼっちゃーん。そろそろ起きないと遅刻しますよ!」
俺はベッドで寝ていたようだ。場所は自分の部屋。
今日は学校だったな。
登校の準備をせねば。
起き上がると、使用人がばたばたと入ってきて、着替えの手伝いをしはじめた。
貴族だった。そういえば。
俺はちょっとしたお金持ちだ。
特にショッキングな流血事件や、悲しいことがあったわけでもない。
普通の日々を送っている、ちょっと裕福な家のおぼっちゃん。
小さな町の中では、知っている人がちょっといる程度の知名度。
ただ寝てて、転生の事実を思い出すとか、どういうあれだ。
転生したことを自覚したばかりなので、自己分析が恥ずかしい。
「ぼっちゃーん、ゆっくりしてないで早く支度してください」
俺は、この世界で世話になっている執事に「今日はゆっくりしたい気分なんだ」とかいいわけしつつも、ぱぱっとお着替え。
身支度してから、家……というか屋敷である建物を出た。
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