ホラー

「「……」」


 映画館を出てから、おれ達は身を寄せ合いながら、震えていた。

 決して寒いのではない。怖いのだ。


 まさか、スプラッタとホラーなんて聞いてねぇよ……

 前まではアクションものだったのに、路線変えすぎだろ……


 ストーリーは、前作のラストから始まった。

 主人公の女性は無事、悪の組織を倒し、日常生活に戻ったのだが、何故か身に覚えのない出来事が頭の中に流れ込んでくる。

 さらに見知らぬ人物が周りに複数おり、何がどうなっているのかわからない中、自宅に何者かが侵入、銃で撃っても倒れず、血すら出ず、得体の知れない恐怖に主人公は怯える。

 そして、終盤で一連の出来事が明らかになる。


 実は主人公は前作のラストで命を落としており、居たのは死後の世界だった。

 なので、襲ってきた人物を撃っても倒れないのである。

 出来事が頭の中に流れてきたのは、死後、自分がいない中で現世で何が起きたのかが流れてきたからであり、現世で人を殺しすぎたからとその報いを受けるために拷問にかけられて終わるという、最悪の結末だった。

 なんで海外の映画ってこういう、誰も救われない終わり方するんだよ……


「優君、何か温かいもの飲みたい……」


 おれの腕を掴みながら、震える穂花が言った。穂花もおれもホラーとスプラッタは大の苦手なのである。それをまさかの映画館で迫力満点で見ることになるとは夢にも思わなかった。トラウマになりそうだよ、まったく……


「あ、ああ、そうだな……いつものファミレスで少しゆっくりしようか……」


 穂花をギュッと抱き寄せつつ、おれ達はエスカレーターを降り、レストランのフロアへと向かうのだった。


 そして、着いたのはここもいつも行くファミレス。

 昼を少し過ぎていたからか、そこまで混んではいなかった。


「二名様ご来店でーす」


 店員さんに案内され、通路側のテーブル席に案内される。


「とりあえず、ドリンクバーとポテトで……」


 おれはメニューを見る前に店員さんにそう言う。

 そして、程なくしてドリンクバー用のコップが運ばれてきた。


「穂花は紅茶でいいか?」


「うん……」


 携帯でネコの画像を見ながら、穂花は頷いた。頼んだぞ、ネコ。穂花の心を癒してくれ。

 ついでにおれの心も頼む。


 心の中で頼みつつ、おれはドリンクバーでホットのコーヒーと紅茶を入れ、席に戻る。


「はぁ……」


 そして、一口飲み、ため息を吐く。


 温かいコーヒーがおれの身体を温めてくれる。


「……」


 向いに座る穂花も同じことを思っているのか、暖かいコップに手を当て、暖めているようだ。


 何かこの気持ちを忘れられるような楽しいことを考えないとな……

 おれはそう考えるのだった。

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