第4話平民の男の子

 今日も俺は魔法書を借りるために街へと繰り出していた。

貴族エリアとは違う平民の住む街だ。

この日は、街の屋台の料理を食べ歩きたいという俺の要望により馬車ではなく歩きで向かっていた。

それも平民の格好をして。

貴族の子が貴族の格好をしたまま街の中を一人で出歩いていては誘拐されてしまうからだ。

「たまにはこうして一人で歩くのもいいな」

そして、街を回っている時に事件は起きた。

「この化け物!」

「この街から出ていけ!」

裏路地の方から何やら不穏な罵声が聞こえてきた。

近づいてみると、数人の男の子が一人の女の子をいじめていた。

いや、男の子か?

髪は短いがとても可愛い子だ。

どっちでもいい。これはほうってはおけないな。

「あんたら、いったい何をやってるんだ?」

俺はいじめっ子たちに向かって声をかけた。

「なんだお前?お前には関係ないだろ?」

「確かに関係はないけど一人に対して大勢でいじめてるのを見過ごせないよ」

「なんだと?お前たち、やっちまおうぜ!」

いじめっ子が定番のセリフを吐くと、いっせいに俺に襲い掛かってくる。

しかし、所詮は素人の子どものケンカだ。

主人公に対抗するため毎日鍛錬している俺にとってはかわすことなど造作もない。

「もう終わりか?一発も当たってないぞ?まだやるっていうならこっちも攻撃するがかまわないか?」

「クソっ!おぼえてろよ!」

またまた定番のセリフを吐きながらいじめっ子たちは逃げていった。

「きみ、大丈夫かい?」

俺はいじめられてた子に手を差し出す。

その手を掴みながら立ち上がる。

「あ、ありがとうございます」

「いったい何があったの?」

「気にしないでください。いつもの事なんです。僕、平民なのになぜか魔力を持ってていつもいじめられるんです。どうして魔力なんて持って生まれてしまったんだろう」

普通は魔力を持つ子は貴族からしか生まれないのだ。

僕って言ってるからやっぱり男の子か。

「なるほどね。それはきっと特別な力を持つ君に嫉妬しているんだね。そんなやつらのことなんて気にすることはないよ。他の誰にも使えない魔力が使える君は特別で素晴らしい存在なんだから」

この世界は魔力がものをいう世界だ。

「それに努力してその魔力を使いこなせるようになれば誰も君のことをいじめることはできなくなるさ。俺が保証する!俺を信じろ!」

「は、はい!」

「あっと!いけないいけない。早く図書館に行かないと!じゃあね」

俺はそう言って立ち去ろうとした。

「待ってください!あなたのお名前は?」

「俺?アレク・ノイマンだよ。んじゃっ!」

そして俺は図書館へ急いだ。

平民なのに魔力か。不思議なこともあるんだな。

そういえばあの子の名前聞くの忘れたな。

まぁいいか。平民の子にそうそうまた会うことはないだろう。


 僕の名前はエリス・クライン。ごく平凡な家庭に生まれた平民の子どもです。

優しいお父さんとお母さんと幸せに暮らしていましたが、その幸せな日常は長くは続きませんでした。

8歳になったある日のことです。近所のお兄さん達が犬をいじめているところを目撃してしまいました。

僕はやめてあげてと何度も言いましたが聞いてくれませんでした。そして感情が高ぶってしまい、「やめてよ!!」そう叫んだ時でした。

お兄さん達が立っていた地面が形を変えめちゃくちゃになってしまいました。

「ば、バケモノっ!」

お兄さん達が僕を見たその時の恐怖の表情を僕は忘れないでしょう。

その後、僕が魔力を暴走させてしまった噂は街中に広がりました。

平民なのに魔力を持つ僕のことを街の人は皆怖がりました。

そして、僕の家族の悪口まで広がりました。

街の人は皆、僕の父親は今のお父さんではなく、実は貴族だと噂し始めたのです。

お父さんは母の不貞を疑って家を出ていってしまいました。

それからの日々はまさに地獄のような毎日でした。街に出るたびにみんなにいじめられるようになったのです。

そんなある日のことです。

僕の前にあの人が現れたのは・・・。

いつものように買い出しに出かけ、やはりいじめられていました。

「この化け物!」

「この街から出ていけ!」

もうこんなこと言われるのは慣れっこでした。

そんな時でした。

「あんたら、いったい何をやってるんだ?」

一人の男の子が彼らに向かって声をかけました。

「なんだお前?お前には関係ないだろ?」

「確かに関係はないけど一人に対して大勢でいじめてるのを見過ごせないよ」

「なんだと?お前たち、やっちまおうぜ!」

彼はそう言うと、いっせいにその男の子に殴りかかったのです。

しかし男の子は全部の攻撃を見事にかわし続けました。

「もう終わりか?一発も当たってないぞ?まだやるっていうならこっちも攻撃するがかまわないか?」

男の子がそう言うと、

「クソっ!おぼえてろよ!」

と言いながら彼らは逃げていきました。

「きみ、大丈夫かい?」

男の子はそう言うと僕に手を差し出してきました。

僕はその手を握り立ち上がりました。

「あ、ありがとうございます」

「いったい何があったの?」

「気にしないでください。いつもの事なんです。僕、平民なのになぜか魔力を持ってていつもいじめられるんです。どうして魔力なんて持って生まれてしまったんだろう」

僕はそう答えました。

すると彼は思わぬことを言ってきたのです。

「なるほどね。それはきっと特別な力を持つ君に嫉妬しているんだね。そんなやつらのことなんて気にすることはないよ。他の誰にも使えない魔力が使える君は特別で素晴らしい存在なんだから」

その言葉を聞いて、僕は感動しました。

今までそんなことを言ってくれる人はいませんでした。

「それに努力してその魔力を使いこなせるようになれば誰も君のことをいじめることはできなくなるさ。俺が保証する!俺を信じろ!」

「は、はい!」

僕は思わず大きな声で返事しました。

「あっと!いけないいけない。早く図書館に行かないと!じゃあね」

男の子はそう言うと立ち去ろうとしました。

このまま行かしてはいけない!

「待ってください!あなたのお名前は?」

「俺?アレク・ノイマンだよ。んじゃっ!」

そう言うと颯爽と駆けていきました。

「アレク様・・・。なんてカッコイイ人なんだろう・・・」

そして、のちに分かったことです。

彼はノイマン伯爵の子息ということでした。

魔力を持つ人は魔法科高校に入学することになっています。

貴族のアレク様は間違いなく魔力を持っているはずですから魔法科高校に入ればまたアレク様に会えるはず、僕はそう考えました。

そしてこの日から僕は魔法の勉強を始めたのでした。

いつかまたアレク様に出会える日を信じて・・・。

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