第2話

第2話


霧がかった真っ暗闇の何も無い空間に、彷徨う白い着物を着た女性が1人…




女性(誰だろう、私を呼ぶのは…)




誰かに呼ばれたような気がして辺りを見渡すと女性から少し離れた場所に同じく白い着物を着た彷徨う男性の姿が…


近づこうとするも近づけず…手を伸ばそうとするも届かず、深い霧のせいで顔も見えない。




女性(貴方は誰ですか?)




しかし男性は何も答えず彷徨い続ける…その様子をただただ見送り続けた…






夢から醒めると寝台の上に横たわっていた…




(あれは夢だったのね…まるで本当にそこにいるような…ずいぶんと生々しかったけれど…)




起き上がり辺りを見渡すと、そこは豪華な中華風の装飾が施された寝室…見知らぬ場所にいるような違和感に襲われる。




女性(ここは…?どこ?)




老女「マリ様、お目覚めでしょうか?」




フードを頭から被り顔を隠した陰気な老年の女性が話しかける。




女性「ここはどこですか?私は…マリという名なのでしょうか?」




老女「はい…賊に襲われ、大怪我をされて一週間以上お眠りに…」




自分が置かれている状況に気付き、怯え青ざめるマリ




老女「マリ様?」




女性「何も…わかりません…私は本当にマリという名前なのですか?)




老女「落ち着いてください、大丈夫ですよ。今、哉藍セイラン様をお呼びいたしますから」




マリ(セイラン様??)




老女が部屋から出ていくと、マリは寝台から立ち上がり、窓から外の景色を眺めた。


そこには何一つ見覚えのない、美しい館の一辺と自然豊かな景色が広がっていた。




(何1つ思い出せない…賊に襲われたと言っていたけれど…頭や体の包帯はそのせいなの?)


(どこも痛みを感じない…治ったのかしら?)




しばらくすると背の高い、灰色の髪を持った長身の男性が先程の女官と共にやってくる。




男性「マリ!無事でよかった!!」




男性はそう言うと嬉しさからか、マリに無遠慮に近づき力強く抱きしめる


見知らぬ男性にいきなり抱きしめられ驚いたが、体を震わせ涙を流して自分の無事を喜ぶ男性を無碍に突き放す事はできず、気遣うマリ。




マリ「あなたは?」




男性「…僕がわからないのかい?何も覚えていないと聞いたけれど本当に?」




マリ「ごめんなさい…何も思い出せないのです…」




自分の無事を喜びそして本当にショックを受けている…心から心配してくれているこの人物について…自分の記憶が何もなくすぐに思い出せない事を申し訳なく感じるマリ




男性「いや、いいんだ…マリが無事なら…わからない事はこれから少しずつ思い出せばいい…」




優しくも悲しい笑顔でマリを見つめ慈しむように手をとる男性…




セイラン「僕は…僕は君の夫の哉藍セイランだよ…本当に君が無事でよかった…」




マリ(え?私の夫?…この方が???)




セイランの真摯な眼差しにマリはこの方が自分の夫なのかもしれないと思うのだった。

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