四天王が倒せません
大黒天半太
第1章 少年勇者は後退しません
第1話 仲間と話がかみ合いません
リドア王国の西方、第三の都市ニー・デ・モアールを発って二日、勇者ノゾム一行は、魔の森を越え、死の山脈の山嶺に到達していた。
「さぁ、ここからが本当の魔軍との戦いの始まりだな」
屈強な
魔物が出没するとは言え、山嶺より東側は仮にも王国内だが、これを越えれば魔王の領土である。
山脈の麓は、越えて来た魔の森に数倍する森が広がり、その向こうには荒野が続いている。
そのはるか向こうに、魔王城はあると言う。
「その前に、あっちでしょ」
だが、そこは魔軍の東の砦であり、彼らが戦う最初の魔将がいるのだ。
地下には、地上に見えるものの数倍の広さの迷宮がある、とも言われている。
「僕もここまでの戦いで、力をつけてきた。魔軍四天王、東のライザーム。決して敵わない相手じゃないはずだ」
王国に異世界から召喚された勇者ノゾムは、仲間たちの顔を見渡す。
半年前、ノゾムは仲間たちに助けられるだけの非力な少年だった。
今は、誰もがお互いを支え合い、助け合う同志だ。
「四天王ではない、
「えー? 十二魔将とか、十二騎士とかじゃなかった?」
「十二なら、魔王を守る
ゼルドは、ケインの言葉に反応して、言い募る。
「逆に、最前線の砦に配置されてるのは、攻撃のための尖峰、つまり
ゼルドは背負った大剣を下ろし、手頃な岩に腰掛ける。
すぐにも戦いに臨みたいところだが、仲間たちのためには、ここで休息をとって、万全を期した方がいいことはわかっている。
「シルヴィアさんも、?ゼルドも、自分の知識が偏ってるって自覚はあるのかな? 東の砦の魔将は、
ケイトリンは、教会で集めた情報が最新だと、自信満々で同意を求めて、ベテラン
「
マシューは小さく咳払いする。
「ただ、私が調べたところでは、今の東の砦の五芒星将は、
ベテランらしく、未確認情報は未確認として情報提示するマシュー。その回答には、誰もが頷けるところと納得いかないところがある。まぁそういう反応になるだろうな、とマシューは苦笑する。
「そもそも『
「なぁ、ライザームって魔王領じゃありふれた名前なのかな? 人間の国でも、英雄傑物とか、ご先祖様にあやかって子どもに名付けるなんて、普通だしなぁ。あの砦に、そんな同名のライザームが四人居る可能性もあるんじゃない?」
半ば、マシューの補足もどうでもよさそうに、ケインが不規則発言をする。
何か面白いことを思いついたかのように言うケインだが、笑うのはゼルドだけで、シルヴィアもケイトリンもうんざりした顔になっている。
「その時は、俺が『
「いや、魔将クラスのヤツが残り三人もいたら、ノゾムとシルヴィアさんがいても 五人で相手するのはキツいでしょ?」
自分で振った話に自分でツッコむケインに、思わずノゾムも笑う。
「大丈夫じゃ。妾とノゾムが一人づつ引き受けよう。ケインとケイトリンで最後の一人を。マシューは状況に応じて回復薬を投げてくれればよい。それ以上は必要あるまい」
ケインが一瞬驚いた顔をするが、そのままニヤリと笑う。
「やっぱりそうなるかぁ」
「ケイン、今、私を盾にして自分の射撃だけで片付けることを考えてたでしょう!」
「まさか! ちゃんと姉御にも見せ場は残してあげるよ」
「まぁ、私はこの中でただ一人の凡人ですしね。むしろ出番は無くても結構ですよ。皆さんに足並み揃えてたら命がいくつあっても足りませんから」
自称凡人のマシューを含め、魔将クラスが、四人待ち構えていてもなんとかなると確信して揺るぎがない。
「だけど、四天王のライザームが、結局どんな相手かはわからないままだね」
「
「
「
「というような先入観に捉われると、対応を誤ります。
「で、ノゾムが読んだ百年前の資料の四天王のライザームって、今そこの砦にいるって言うライザームと同じなの、名前を継いだ別物なの?」
「ありがとう、ケイン。わかっているかわかっていないかも、わかってないってことだけは、わかったよ」
とりあえず明日のために今夜はゆっくり休もうと、ノゾムは思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます