「交響曲 第10番」 ショスタコーヴィチ

<タイトル>


交響曲 第10番 ホ短調 作品93


<作曲者>


ドミトリー・ショスタコーヴィチ


<おすすめ盤>


ヴァシリー・ペトレンコ(指揮)


ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団


<解説>


 旧ソ連の作曲家ショスタコーヴィチの交響曲です。


 第2楽章が攻撃的な曲調のため、過激系のクラシックを好む人には、この楽章だけが特に知られています。


 1953年3月にスターリンが死去し、その年の夏、この曲は一気に書き上げられました。


 タコ先生はスターリン体制にさんざん苦しめられた芸術家のひとりですので、これを意識していなかった可能性は、非常に低いと思われます。


 実際にこれまでも音楽の中で、スターリンを皮肉った実例が多数存在します。


 ドミトリー・ショスタコーヴィチのイニシャルである「DSCH」をそれぞれ音階に変換し、音楽の中に散りばめてあります。


 この「暗号」は他の曲でもしばしば用いられ、いまをもってその謎は、完全には解明されてはいないそうです。


 すべては先生の頭の中というわけですから。


 古典的な交響曲の形式による全4楽章の音楽であり、彼のエッセンスが凝縮された名曲となっております。


 楽壇の帝王と呼ばれた指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤンは、ショスタコーヴィチの全15曲ある交響曲の中で、唯一この曲だけを録音しており、しかも3種類も残しています。


 これも実に興味深いですね。


 天才どうしにしかわからない、何かがあるのか……


 聴きどころはやはり、「DSCH」の音型が変幻自在に奏でられる部分ですが、個人的に面白いのは、終楽章のコーダにハイドンの弦楽四重奏曲からの引用があるという点です。


 ハイドンは交響曲の父と呼ばれ、彼を指針とした後輩作曲家もまた、多いです。


 このミステリアス感も、楽しみのひとつと言えそうです。


 おすすめはペトレンコさんの全集からですが、非常に整然とした演奏であり、しかし細部をえぐり出すような表現にしびれます。


 ところどころ音楽というよりは、「悲鳴」に近く感じる部分があり、何度でも聴きたくなってしまいます。


 この全集はSpotifyなどの音楽アプリでも配信されていますし、CDも廉価で発売されているので、この際どっぷりタコ先生にひたるのも、悪くはありません。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る