そして物語は

『敵旗艦を奪取した。繰り返す。敵旗艦を奪取した』


『なんだ今の声は!?』


『全周波で流れたぞ!』


『どういう意味だ!?』


『何が起こった!?』


『軍曹主砲を撃て』


『特務!操作方法が全く分かりません!』


『なに? そんなのは適当にやったら撃てる。例えばこれだ』


『敵大型戦艦のエネルギーが急上昇しています!』


『いかん! 全艦回避運動!』


『敵艦発砲!』


『総員対ショック姿勢!』


『言った通りだろう?』


『サーイエッサアアアアアアアア!』


『敵大型戦艦が同士討ちをしています!』


『意味が分からん! 一体どうなっているんだ!』


『こちら人類連合元帥! 貴官の所属と姓名を述べよ!』


『人類連合所属、特務大尉であります』


『何!? いや、特務大尉! 貴官は敵の大型戦艦を奪取したのだな!?』


『はっ。その通りであります』


『敵大型戦艦、尚もガル星人艦隊を攻撃中! 圧倒しています!』


『ではそのまま攻撃出来るのだな!?』


『可能であります』


『よくやってくれた! よろしい! ではそのまま攻撃を続行したまえ!』


『はっ』


『全艦全面攻勢を掛けよ! あの大型戦艦の邪魔はするなよ! ここで死のう!』



≪緊急速報・センター外域での艦隊決戦に勝利≫

≪緊急速報・人類連合、センター外域での戦いに勝利≫

≪緊急速報・我が軍勝利≫


『緊急速報をお伝えします! 本日未明に行われたセンター外域での戦いに、我々人類連合軍は勝利いたしました! 詳しい事は分かっていませんが、ガル星人艦隊をほぼ殲滅した模様です! 繰り返します!』


『臨時のニュースです! 決戦に勝利しました! 決戦に勝利しました!』


『勝ちました! 勝ちました!』


『決戦で起こった詳細が判明し始めました! 軍の発表によると、特務大尉がガル星人艦隊の旗艦を奪取し、敵艦隊に大混乱を起こしたようです!』


『決戦艦隊はセンターに帰路を取り、その中にはあの特務大尉も含まれるようです!』


『現在センター宇宙港は、大勢の市民が押し寄せており、はい? すいません歓声が大きくて聞き取れません! 現在センターの宇宙港は! 大勢の市民が押し寄せており! 人類を救った決戦艦隊と! 特務大尉の到着を! 今か今かと待っている状態です! ああ見えました!何て大きな戦艦なんでしょう! ここからでもはっきりと見えます!』


『ご覧ください! 今まさにあの船から特務大尉が! ああ! 扉が『特務!特務!特務!』 見えますで『特務!特務!特務!』 すいません聞『特務!特務!特務!』 聞こえ『特務!特務!特務!』』


『特務大尉! 一言! 一言お願いします!』


『あの船の名前はリヴァイアサンにする』



『おい電話だぞ』


『お前が出ろよ……』


『嫌だ』


『俺だって嫌だよ。このタイミングの電話なんてあれしかないだろ』


『いいから出ろよ』


『くそ。はい。すいません、何を言っているか聞こえません。すいません、ですから何を言っているかえっ!? 勝った!? 本当に!? 嘘じゃないですよね!? 本当に!? 間違いないんですよね!? ええ! ええ! 分かりました! ええ! 本当なんですよね!? はい! はい!』


『おいっ! 勝ったってどういうことだよ!? 何があった!?』


『艦隊決戦に勝ったんだよ! センターも落ちなかったって!』


『嘘つけ!』


『俺もそう思うけど! ちゃんとした上司からの連絡なんだよ!』


『本当なんだな!?』


『おお!』


『しゃあっ!』


『あっはっはっはっは!』


『はっはっはっは! ……うん? それなら後ろの荷物さんどうすんだ?』


『あ……。いや、待てよ? 確か、あー。タコの戦艦を鹵獲したから、荷物さんはセンターに届けろって言ってたような……』


『戦艦!? 小型じゃなくて戦艦!?』


『確かそう言ってたような……』


『しっかりしろ! いや、まあいい。じゃ後ろの荷物さんには箱じゃなくて、缶詰に放り込んだらいいんだな』


『ああ。しっかりデスマーチしてもらおう』



【サードニュースペーパー


以前にお書きした、連絡の取れなくなっていたメル星の記者ですが、何故か軍人として帰還したので、ご心配をお掛けした読者の皆様にご報告させて頂きます。公務員の副業は禁じられておりますが、本業は記者ですので問題ないものと認識しております。


人類連合大勝利!】




『皆様お待たせしました! 彼等こそ特務大尉と、彼に率いられた10人の偉大なる勇者達です! この場で彼等に勲章を授与できることに、大統領としてこれ以上ない喜びを感じています!』



『元帥! このリストを見てください! 奴が反逆者で狂人なのは明らかです! 即刻銃殺刑にするべきです!』


『分かった見ておく。君も職務に戻りたまえ』


『今すぐ奴を取り除かねば、必ず禍根を残すでしょう! 失礼します!』


『………はあ。奴はどうしたのだ?』


『どこかに外しますか?』


『うーむ。まあ単純にリストを見たら奴の言う通りではあるがな。やりもやったり。と言ったところだ』


『まあ……』


『だが時代遅れで悪弊もあるが、軍は古来より成果主義の面もある。ということで特務大尉が犯した罪は全て不問。そういう流れにしよう』


『はっ』


『それでも文句を言うようなら、柱に特務大尉の階級章を付けて、形だけ銃殺刑にしておこう』


『ははは。分かりました。……やはり保安部の局長は取り除いた方がいいのではないでしょうか。人類を救った自分が頂点に立つ。どうもそんな思想が……』


『うむ。だが明確な失点が無いからな……。しかし強化兵の指揮権が保安部にあるのはマズいな。保安部には過剰戦力という事で取り上げよう』


『はっ。新たな配属先はどうします?』


『ふむ。どうやら本物だったらしい特務大尉に預けるか。まあ暫くは軍の再編だがな。あの船の解析はどうだ?』


『それが……』



『親方ぁ! そもそもネジじゃないっす!』


『親方ぁ! 寸法がそもそも違います!』


『んなにいいいいいいいい!?』


『親方ぁ! ヤードポンド法じゃないっす!』


『死ね』


『何でだよ!』


『家にいた筈なのに、目が覚めたらここに缶詰なんだが……』


『私も……』


『これで! これで人類は勝てるんだ! 死んでも解析してやる!』


『特務大尉ありがとう……。これで……』


『は? え? こいつの装甲何?』


『中にモノレールって嘘だろおい』


『工具の発注からかあ』


『数学の偉い手連れてこい!』


『特務大尉これをどうやって操縦したんだ?』


『サンプル取ろうにもドリルじゃ傷一つ付かねえんだけど!』



『エージェントが船の名前をリヴァイアサンと言ったせいで、あの船がそう名付けられるのは確定事項ですね』


『海で最強だからリヴァイアサン。最後は人間に食われた所もぴったりだろ?』


『ははあ』


『それより、軍と艦隊の再編は間に合いそうか?』


『艦隊の方は完全に分かりません。なにせ私でも、あの船の解析は非常に困難です。ですが解析して利用しなければまたやられてしまいますからね』


『時間がかかるようなら、また俺がワープ船で出て時間を稼ぐ』


『またとんでもない事言ってますね』


『それと2番艦があると思うか?』


『それも分かりません。ただ、リヴァイアサンを後生大事に囲んでいたあの陣形を見るに、かなりその可能性は低いと思われます』


『……そうか。2隻目があれば私物として貰えないかと思ったが』


『んな事出来るか!』


『話を戻すが、リヴァイアサンの色は青で頼む。緑は似合わん』


『聞けや!』


『知人が花屋でな。青い薔薇が好きで俺も送られた』


『どうでもいいわ!』


『よくない。譲れん』


『何でそんな事で頑固なんだよ!』


『頼んだぞ』


『おいっ!?』



『よかった。神様ありがとう……』


『物資の輸送計画になります!』


『訓練の補給要請が!』


『鹵獲船に関する研究資材が!』


『よっしゃ!バリバリ働いてやろうじゃない!』



『よく帰って来た新兵ども! さあ、教えてない分みっちりしごいてやる!』



『俺らの配属先だけど、例の特務大尉と一緒にワープ船で後方撹乱だとよ』


『自爆兵器扱いよりはずっとましだけど、その特務大尉殿は俺らに付いて来れんのか?』


『だな。単なる生身だろ?』



『市民の皆さん! ついに! ついに我々の軍が再編されました! ご覧くださいこの勇者たちを! あの堂々とした艦隊を! 人類の反撃は今ここに始まるのです!』



『特務申し訳ありません! 部下が数名落伍しそうです!』


『あと10㎞だ。行ける』


『サーイエッサーアアアア!』



『ようこそ新しい新兵ども! 最初に言っておくが、俺の前で可哀想と言うんじゃないぞ!』



『特務からまた追加の補給要請が!』


『もう一週間帰ってないのにいいいいい!』


『あの野郎! また筆跡が別人じゃねえか! こんな丸い字じゃなかっただろ!』


『お肌があああああああ!』



『今勝率はどのくらいだ?』


『50%超えたよクソッタレ!』


『ポンコツめ』


『100じゃねえと満足しねえのかよ!』



『バードがまた返って来たぞ!』


『今度の要望は何だよ!』


『全身からレーザーを発射出来ませんか? だ!』


『出来ねえよ!』


『そんな技術が手に入ったら作ってやるって返しとけ!』



『元帥閣下! また特務大尉が無断でリヴァイアサンを持ち出しました!』


『少し待て、今胃薬を……』



【サードニュースペーパー


読者の皆さんのご想像通り、特務大尉は政府が作り出した生物兵器で、明らかに人類を超えた能力を持っているのはそのためです。関係者の話では、政府は狂気的な実験の果てに生物兵器を多数製造しており、それを応用して新たな新人類を誕生させようと目論んでいるようです


特務大尉に7回目の銃殺刑が執行されました】



『博士。申し訳ありませんが技術部まで出向願います』


『待て! 待ってくれ! この前も解析に協力したばかりだ! 休ませてくれ!』


『技術部もそう言っていました。おい』


『ああ』


『待て!? 何をす……』


『こちらA班。荷物さんを缶詰に運ぶ』



『本日の特務大尉です。特務大尉率いる部隊はパウェル、クロサンザ、ジュファン、ロックサを開放し、既に解放されたダムダッシュ、メル、ムルロア、カーシでは特務大尉の銅像を設置するとともに、特務大尉を永久名誉市民に認定しました』


『特務大尉がまたまたやりました!』


『本日のスポーツニュースです』



『行くぞ諸君。人類を守るのだ』


『『『『『『『サーイエッサー!』』』』』』』



1.名無しの兵士さん

勝利の美酒に


2.名無しの兵士さん

死ぬかと思ったゾ


3.名無しの兵士さん

勝ったあああ!


4名無しの兵士さん

いえええええい!


5名無しの兵士さん

タコ共ざまああ!


6名無しの兵士さん

特務大尉ありがとおおお!


7名無しの兵士さん

特務!特務!特務!


8名無しの兵士さん

特務うううううう!


9名無しの兵士さん

ここは特務大尉を称えるスレになりますた。

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