音声ログ4 第一強化兵中隊

ようこそエージェント。


このデータは、第一強化兵中隊の音声ログの一部になります。再生しますか?


はい


それでは再生を開始します。



『総員傾聴!これより我々は第735番惑星へ向かい、友軍と合流した後、タコ共の軍事基地を叩く!最終目標は、その隣の惑星にあるタコ共の造船拠点だ!ここはタコ共にとって最重要の造船所であり、なんとしても落とさなければならない拠点だ!なお造船拠点は特に防御が厚く、ここへは星系連合とも協力して攻撃する!以上だ!』



『星系連合的には、俺らみたいな強化兵ってどういう感じなのかな?』


『は?だろ』


『違いない』


『それか、引くわー。だな』


『いや、案外向こうもやってるんじゃないか?』


『ああ、あるかもな』


『機械化兵は見てないから、遺伝子操作が最有力だな』


『クローンかも』


『おいっ!』


『あっ!?』


『落ち着け、特務はいない。ずっと別の惑星だ』


『それでもだ。特務が唯一ピリピリする事柄なんだ。言わないに越した事はない』


『ここだけの話なんだが、特務は保安部をどうするつもりなんだ?』


『おいおい、普通は逆だろ?』


『茶化すなよ。特務のクローンだなんて、どう考えても一線を越えてる。未だにあの部署の建物が、吹っ飛んでないのが不思議なくらいなんだ』


『いくら特務でも生存戦争の最中に、一応の味方を丸ごと吹っ飛ばしたら問題になるだろう。お礼参りは戦後だろ』


『平時ならいいのかよ』


『しゃあない。ご冥福を祈ろう』


『そうだな』


『まあでも、保安部は最近別の事で忙しいからな』


『星系連合か?』


『その通り』


『今日の友は明日の敵か…』


『保安部は何を?』


『必要以上に、星系連合に技術を渡そうとしている奴を取り締まっている』


『いや、これについては保安部の考えは正しいと思う。特務の事は最悪だが』


『まあな。握手し続ける条件は、対等であることだからな』


『特務の機体の時の技術交流は?』


『あれはどちらも利益があったからな。こっちはリヴァイアサンのお陰で、タコの技術にかなり詳しい。それにザ・ファーストが解析した結論は、特務の機体に使われた技術は、星系連合ではありふれたもので、向こうが渡しても問題ない技術だったそうだ。勿論こちら側もだがな』


『仲良くタコをぶちのめそうで済まんものか』


『そう考えると、やつらは偉大なる嫌われ者だ』


『だが…』


『ああ』


『ほんの少し。ほんの少しだけだが勝ちが見えてきた』


『長かった』


『だがそのせいで握手相手が仮想敵にランクアップだ』


『人類の業さ』


『全く…』



『艦内の第一中隊傾聴!我々の任務が決まった!これより我々は特務大尉の指揮下に直接入り、敵戦線を突破する一番槍の役目を与えられた!以上だ!』


『げっ!?』


『嘘だ!?』


『マジかよ!?』


『いやだあああああ!?』


『中隊長!?味方からの逃走は敵前逃亡に当たりますか!?銃殺刑ですか!?』


『特務の指揮下に入って悲鳴が上がるなんて、俺らのとこだけだろ』


『普通の兵に比べて無茶ぶりの度が違うからな…』



『撃て撃て撃て!』


『味方の砲撃が来るぞ!頭を出すな!』


『対戦車ランチャーの準備をしろ!』


『その水くれ。喉乾いた』


『なら機関銃に弾込めるの手伝え』


『敵の攻撃機だ!』


『対空ランチャーも準備しろ!急げ!』


『げっ!?』


『なんだ!?何があった!?』


『特務が!?特務が攻撃機に張り付いてます!』


『今なんて言った!?砲撃で耳がやられてるんだ!もっと大声で言え!』


『特務が!攻撃機に!張り付いてます!』


『浮遊円盤とは訳が違うんだぞ!しっかりしろ!』


『自分の眼は機械化した高性能レンズであります!』


『なら丸ごと交換してこい!』


『中隊長!敵機が同士討ちを!』


『なら特務だ!』


『てめえこら!俺に謝れ!』



『中隊長、損害は?』


『特務!?は、はっ!欠員ゼロ!戦闘続行可能であります!』


『流石だ。これより基地を攻略する。ついて来てくれ』


『はっ!行くぞ野郎共!』


『…さっきまで特務、空に居たよな?』


『まだそんな事をいちいち気にしてるのか?』


『なんだ、胃を機械化してないのか?』


『ええ…』



『クリア!』


『クリア!』


『ふむ……』


『どうされました特務?』


『…いや、なんでもない。それよりも造船所のデータがないか調べてくれ』


『はっ。マックス!出番だ!』


『はっ!』


『すまないが、俺は少し考え事をする』


『はっ!』


『おい、特務が考え事だってよ。明日は流星群だ』


『聞こえたら殺されるから話しかけんでくれ』


『この距離なら大丈夫だろ。大丈夫だよな?』


『大丈夫じゃないから、話しかけるなって言ってんだよ』


『中隊長ありました。警備の戦力から、タコが今何を作ってるかもです。しかしこいつは…』


『まさか…。マックス、お前の意見は?』


『多分ですが、リヴァイアサンの量産型、というよりかは粗悪品に近いものじゃないかと。装甲や主砲をかなり妥協しています。ですが数がそこそこ…』


『お前もそう思うか。リヴァイアサンそのものは無理でも、粗悪品を量産しようとしているのだな』

 

『見せてくれ』


『どうぞ特務。どうもリヴァイアサンの量産計画ではないかと…』


『……決めた。中隊長、現時点を持って全中隊員の通常回線を切り、秘匿回線での通話を義務付ける。それと極秘作戦を俺の名前で発令。諸君たちには第一級の守秘義務が課せられる。これも現時点でだ』


『イエッサー。全中隊員、通常回線を切り、秘匿回線につなげろ。特務大尉が極秘作戦を宣言。我々全員に第一級の守秘義務が課せられた』


『出来たか?』


『イエッサー』


『よし』


『特務?そこには何も』


『ぐげえっ!?』


『なんだ!?』


『特務が殴った所から何か出てきたぞ!?』


『いやこれは、光学迷彩!?』


『違うぞ、こいつはカメレオンだ!』


『タコじゃないのか!?』


『星系連合の船からずっと俺の事を見ていたが、眠って貰おう。こいつに聞かれるのは不都合だからな』


『ちょ、諜報員なのでは!?』


『だろうな。機械の類は…無いな。よし、それでは作戦を説明する。星系連合が到着する前に、我々だけで造船場を攻略し、製造中の敵戦艦を人類連合がすべて奪取する』


『イエッサー。星系連合には、流動的な戦場に対処するために、やむなく我々だけで制圧した、という事でよろしいでしょうか?』


『それでいこう、頼む。リヴァイアサンは見せ札として、切る札はこいつらという形になるだろう。リヴァイアサンは切るには大きすぎるし、使える札が多いに越した事はない』


『イエッサー。私もそう思います』


『よし、では隊を再編してくれ。カメレオンは揚陸艇に閉じこめよう。俺はザ・ファーストに連絡を入れる』


『イエッサー』


『……。後々、俺がいないから付け入る隙があると思われては困るからな』

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