音声ログ4 第一強化兵中隊
ようこそエージェント。
このデータは、第一強化兵中隊の音声ログの一部になります。再生しますか?
はい
それでは再生を開始します。
◆
『総員傾聴!これより我々は第735番惑星へ向かい、友軍と合流した後、タコ共の軍事基地を叩く!最終目標は、その隣の惑星にあるタコ共の造船拠点だ!ここはタコ共にとって最重要の造船所であり、なんとしても落とさなければならない拠点だ!なお造船拠点は特に防御が厚く、ここへは星系連合とも協力して攻撃する!以上だ!』
◆
『星系連合的には、俺らみたいな強化兵ってどういう感じなのかな?』
『は?だろ』
『違いない』
『それか、引くわー。だな』
『いや、案外向こうもやってるんじゃないか?』
『ああ、あるかもな』
『機械化兵は見てないから、遺伝子操作が最有力だな』
『クローンかも』
『おいっ!』
『あっ!?』
『落ち着け、特務はいない。ずっと別の惑星だ』
『それでもだ。特務が唯一ピリピリする事柄なんだ。言わないに越した事はない』
『ここだけの話なんだが、特務は保安部をどうするつもりなんだ?』
『おいおい、普通は逆だろ?』
『茶化すなよ。特務のクローンだなんて、どう考えても一線を越えてる。未だにあの部署の建物が、吹っ飛んでないのが不思議なくらいなんだ』
『いくら特務でも生存戦争の最中に、一応の味方を丸ごと吹っ飛ばしたら問題になるだろう。お礼参りは戦後だろ』
『平時ならいいのかよ』
『しゃあない。ご冥福を祈ろう』
『そうだな』
『まあでも、保安部は最近別の事で忙しいからな』
『星系連合か?』
『その通り』
『今日の友は明日の敵か…』
『保安部は何を?』
『必要以上に、星系連合に技術を渡そうとしている奴を取り締まっている』
『いや、これについては保安部の考えは正しいと思う。特務の事は最悪だが』
『まあな。握手し続ける条件は、対等であることだからな』
『特務の機体の時の技術交流は?』
『あれはどちらも利益があったからな。こっちはリヴァイアサンのお陰で、タコの技術にかなり詳しい。それにザ・ファーストが解析した結論は、特務の機体に使われた技術は、星系連合ではありふれたもので、向こうが渡しても問題ない技術だったそうだ。勿論こちら側もだがな』
『仲良くタコをぶちのめそうで済まんものか』
『そう考えると、やつらは偉大なる嫌われ者だ』
『だが…』
『ああ』
『ほんの少し。ほんの少しだけだが勝ちが見えてきた』
『長かった』
『だがそのせいで握手相手が仮想敵にランクアップだ』
『人類の業さ』
『全く…』
◆
『艦内の第一中隊傾聴!我々の任務が決まった!これより我々は特務大尉の指揮下に直接入り、敵戦線を突破する一番槍の役目を与えられた!以上だ!』
『げっ!?』
『嘘だ!?』
『マジかよ!?』
『いやだあああああ!?』
『中隊長!?味方からの逃走は敵前逃亡に当たりますか!?銃殺刑ですか!?』
『特務の指揮下に入って悲鳴が上がるなんて、俺らのとこだけだろ』
『普通の兵に比べて無茶ぶりの度が違うからな…』
◆
『撃て撃て撃て!』
『味方の砲撃が来るぞ!頭を出すな!』
『対戦車ランチャーの準備をしろ!』
『その水くれ。喉乾いた』
『なら機関銃に弾込めるの手伝え』
『敵の攻撃機だ!』
『対空ランチャーも準備しろ!急げ!』
『げっ!?』
『なんだ!?何があった!?』
『特務が!?特務が攻撃機に張り付いてます!』
『今なんて言った!?砲撃で耳がやられてるんだ!もっと大声で言え!』
『特務が!攻撃機に!張り付いてます!』
『浮遊円盤とは訳が違うんだぞ!しっかりしろ!』
『自分の眼は機械化した高性能レンズであります!』
『なら丸ごと交換してこい!』
『中隊長!敵機が同士討ちを!』
『なら特務だ!』
『てめえこら!俺に謝れ!』
◆
『中隊長、損害は?』
『特務!?は、はっ!欠員ゼロ!戦闘続行可能であります!』
『流石だ。これより基地を攻略する。ついて来てくれ』
『はっ!行くぞ野郎共!』
『…さっきまで特務、空に居たよな?』
『まだそんな事をいちいち気にしてるのか?』
『なんだ、胃を機械化してないのか?』
『ええ…』
◆
『クリア!』
『クリア!』
『ふむ……』
『どうされました特務?』
『…いや、なんでもない。それよりも造船所のデータがないか調べてくれ』
『はっ。マックス!出番だ!』
『はっ!』
『すまないが、俺は少し考え事をする』
『はっ!』
『おい、特務が考え事だってよ。明日は流星群だ』
『聞こえたら殺されるから話しかけんでくれ』
『この距離なら大丈夫だろ。大丈夫だよな?』
『大丈夫じゃないから、話しかけるなって言ってんだよ』
『中隊長ありました。警備の戦力から、タコが今何を作ってるかもです。しかしこいつは…』
『まさか…。マックス、お前の意見は?』
『多分ですが、リヴァイアサンの量産型、というよりかは粗悪品に近いものじゃないかと。装甲や主砲をかなり妥協しています。ですが数がそこそこ…』
『お前もそう思うか。リヴァイアサンそのものは無理でも、粗悪品を量産しようとしているのだな』
『見せてくれ』
『どうぞ特務。どうもリヴァイアサンの量産計画ではないかと…』
『……決めた。中隊長、現時点を持って全中隊員の通常回線を切り、秘匿回線での通話を義務付ける。それと極秘作戦を俺の名前で発令。諸君たちには第一級の守秘義務が課せられる。これも現時点でだ』
『イエッサー。全中隊員、通常回線を切り、秘匿回線につなげろ。特務大尉が極秘作戦を宣言。我々全員に第一級の守秘義務が課せられた』
『出来たか?』
『イエッサー』
『よし』
『特務?そこには何も』
『ぐげえっ!?』
『なんだ!?』
『特務が殴った所から何か出てきたぞ!?』
『いやこれは、光学迷彩!?』
『違うぞ、こいつはカメレオンだ!』
『タコじゃないのか!?』
『星系連合の船からずっと俺の事を見ていたが、眠って貰おう。こいつに聞かれるのは不都合だからな』
『ちょ、諜報員なのでは!?』
『だろうな。機械の類は…無いな。よし、それでは作戦を説明する。星系連合が到着する前に、我々だけで造船場を攻略し、製造中の敵戦艦を人類連合がすべて奪取する』
『イエッサー。星系連合には、流動的な戦場に対処するために、やむなく我々だけで制圧した、という事でよろしいでしょうか?』
『それでいこう、頼む。リヴァイアサンは見せ札として、切る札はこいつらという形になるだろう。リヴァイアサンは切るには大きすぎるし、使える札が多いに越した事はない』
『イエッサー。私もそう思います』
『よし、では隊を再編してくれ。カメレオンは揚陸艇に閉じこめよう。俺はザ・ファーストに連絡を入れる』
『イエッサー』
『……。後々、俺がいないから付け入る隙があると思われては困るからな』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます