凡人の外来王《アウェイキング》
権兵衛
第一章 家族救出編
第一章01 陰キャの現状
《疑問:人はなぜ生きているのか》
この疑問に明確な解はないとオレは信じている。
何となく生きていて、考えることが無くなると、ふとこんなことを考えてしまう。
果たしてオレはちょっとしたヤバい奴なのか……
今の人生にある程度の満足をしている人であれば、おそらくこんな疑問は思いつかないであろう。
今日も何となく終わり、月日は経ち、あっという間に年を重ねていく。まあオレみたいな大学生の言う台詞ではないが。
オレはその大掛かりな疑問から目を背け、最近買ったゲーム機の電源を入れる。
ちなみにこれはどうでもいいが、オレが今ハマっているゲームは『怪物狩り』という怪物を狩りまくるという爽快感に長けたゲームだ。
「まあ、今が楽しければ、それでいいか」
今日からのイベントクエストは公式曰く、マルチプレイ推奨らしい。
だがオレにそんな友達は勿論いるはずもない。なんせオレは自慢することでもないが、陰キャとボッチを組み合わせた芋のような人間なのだから。
ただ勘違いしてほしくないのは”他人が嫌い”というわけではないということだ。コミュ障なだけで、コミュニケーションはしたいと思っている。勿論、友達も欲しい。
というわけで話は戻るが、マルチ推奨のクエストにいつも通りソロで挑んでいく。
『”残り時間5分です”』
ゲーム画面に表示された注意書きがオレのプレイを煽ってくる。
流石にソロで狩るのは一苦労である。内心で『わかってるよ』と思いながら、必死にプレイする。
『”メインターゲットを達成しました”』
「よしっ!」
思った以上に苦戦したため、思わず声が出てしまった。
無事ソロでの攻略に成功し、オレは眠かったため、直ぐに眠ってしまった。
(2020年7月11日)
『ピピッ、ピピッ、ピピッ』
音自体、それほどうるさくはないが、耳元で鳴られると鬱陶しい目覚ましのアラームがオレを起こす。時刻は午前11時を指していた。30分後、オレはようやく布団から出て、朝昼兼用の食事を摂ることとした。
今朝の2時過ぎまでゲームをしていたため、こんな怠けた日常を送っているのは言うまでもない。
オレは近くのカレッジ大学に通う1年生、ソウタ。
現在は故郷サンリを離れ、ここチェリーで一人暮らしをしている。一人暮らしをしてもう3か月になるが、それなりに不摂生な生活をしている。
今日は土曜日で学校も休み、オレにとっては実に有意義な曜日のはずだ。
しかし現実を見れば、既に昼間。それは1日の半分を無駄にしたと言っても過言ではない。
オレはふと月曜締め切りのレポートの存在を思い出した。
「まあ、明日やるか」
平常運行、これがいつものオレである。『明日やろうは、馬鹿野郎』なんて言葉もあるが、オレの心にはあまり響かない。
オレはレポートを机の上に置き去りにして、目の前のテレビを点けた。
偶然点けたチャンネルではリポーターと俳優との対談が放送されていた。
リポーター:「仕事をしていく上で大切なことは何だと思いますか?」
俳優A:「そうですね。継続ではないかと。私もこの仕事初めて10年になります。始め、特に1年目、2年目は辛かったですね。でもめげずにここまで努力してきたという自負があります。その結果として皆さんに認められ、こうしてテレビにも出演させてもらえているわけだと思います」
何とも眩しい、少なくともオレには言えない言葉であった。継続、努力、これらはオレの苦手とする部類だ。必ずしも結果に結び付くかは分からない。それが現実だとオレは思う。
何を隠そう、オレは熱しやすく冷めやすいタイプで、何事も三日坊主、続いて1週間というダメなやつなのだ。
(2020年7月18日)
1週間後、俳優Aは不倫疑惑で世間から多大な批判を受け、雲隠れした。オレはその時、継続して積み上げたものも崩壊するときは一瞬のことなのだと改めて感じた。それは言い換えれば、結果が全てだとも言えるかもしれない。
オレは去年、浪人生活を送っていた。朝から晩まで予備校に通いつめた。最初のうちは高校の友達とかと一緒だったが、GW、夏休みと季節が過ぎるにつれ、1人また1人と消えていった。
定期的に行われる模試の結果に一喜一憂しながらも入試に向けて諦めずに勉強した。人生で一番勉強したかもしれない。しかし現実はそう甘くはなかった。勉強に限らず他のことに関してもそうだ。必死に頑張ってきたつもりが報われない。他者の自分に対する判断材料は結果のみなのだから。
オレは報われない努力もあるのだと悟った。気づくのが遅すぎたのかもしれない。
《疑問:この世は結果が全てなのであろうか?》
また明確な答えがない疑問が頭をよぎる。
オレは暇なのである。何も刺激がないから、こんな疑問を思いつき、過去を引きずる。
オレはまた目をそらし、ベッドの上に寝ころび、天井をぼーっと見ていた。
『ゴー―ン、ゴー―ン、ゴー―ン、ゴー―ン、ゴー―ン』
町全体に17時を告げる鐘が響き渡った。
オレは今日も何となく1日を過ごし、夕方になってしまった。
『プルプルプル、プルプルプル』
オレの携帯が珍しく鳴った。と言っても相手は限られているが。
発信者を見るとそこには妹の名前が。実に珍しいことである。
オレには3つ下の妹がいる。名前はミライ、オレの自慢の妹だ。まあ妹には少し嫌われていそうだが……
「もしもし、どうした?」
「た、助けてお兄ちゃん! お母さんとお父さんが! あっ、痛い! やめて‼」
「いったいどうしたんだ! おい!」
通話は途中で切れてしまい。詳しいことは分からないが、とにかく家族が危ないと直感的に思った。それから家族とは一切連絡がつかなかった。オレは早急に実家に帰ることにした。
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