スナイピングアスレチック攻略のコツ

ちびまるフォイ

スコープでのぞいた先で狙うもの

「スナイピングアスレチックへご参加の方ですか?」


「ええそうです」


「ではこちらで参加費を回収いたします。

 ちなみに、参加希望の陣営はどちらですか?」


「うーん、まだ悩んでいるんですよねぇ」


「でしたらスナイパー側のほうが初心者にはおすすめです。

 アスレチック側は実体力や運動神経が大きく左右されますから」


「じゃあそれで」

「では会場へ案内します」


会場と称して連れてかれたのは高層ビル群が並ぶ町中だった。

高層ビルの屋上には橋やロープ、はしごなどがかかっている。


「スナイピングアスレチックで、スナイパー陣営の方はこの高層ビルを駆け抜けるアスレチック陣営の参加者をぶち抜いてください」

「し、死なないですよね?」

「もちろん実弾じゃないです」


「アスレチッカーの人が指定のゴール地点に到着すればあなたの負け。

 到着する前にぶち抜けばあなたの勝ちです」


「ようし、頑張るぞ!」


会場の狙撃ポイントであるひときわ高い電波塔から町を見下ろした。

早々に蛍光ゼッケンを身に着けたアスレチッカーを見つけることができる。


「隠れたって無駄だぜ! おりゃーー!」


引き金を引いたが、狙った弾丸は壁に阻まれてしまった。

その瞬間にアスレチッカーは壁を超え、屋上を渡り歩いてあっという間にゴール地点の屋上へと到達してしまった。


「うそだろ……」


その運動能力の高さに舌を巻いた。


屋上ではためく白いシーツの間を駆け抜けて狙われないようにしたり、

格好の狙撃ポイントであるビル間を渡す道もビビることなく猛ダッシュ。


訓練されたパルクールをしながら逃げるアスレチッカーを撃ち抜くのはハエを箸で捕まえるよりも難しい。


「ご参加ありがとうございました。これでゲーム終了です」

「あーー! くやしい!!」


その後も悔しさまぎれに何度も挑戦したが結果は敗北だった。

何度も何度もゴールまで逃げ切られているとふと考えてしまう。


(これアスレチッカー側のほうが有利なんじゃないか……?)


動く的を狙撃するのがただでさえ難しいのに、

上下左右にめまぐるしく動くアスレチッカーを撃ち抜くなんて至難の業。


初心者におすすめなどという触れ込みだったが、実は参加料を巻き上げるための口実なんじゃないか。


「今度はアスレチッカー側で参加します!!」


「え? よろしいんですか?」


「ゴールしなくちゃ終われません!」


狙撃用のライフルを置いて、今度は高層ビルの一角の屋上へと案内された。

ゴール地点とそこまでのナビスマホを渡される。


「他の参加者があなたを狙撃銃で狙っています。

 撃ち抜かれないようにゴールまで到達してくださいね」


「さっきまで狙撃側をやっていたんですよ。

 どこにどう逃げれば撃ちにくいかなんて、体に染み付いています」


「それは結構。ではゲームスタート」


今度はアスレチッカー側でゲームを開始した。

高層ビルの間を忍者のように駆け抜けていくかに思えたが。


ばんっ!


「んぎゃ!!」


開始早々、眉間に弾を当てられてゲーム終了。

ゴールに到達するどころか隣のビルへ移動することもできなかった。


「もう1度!」

「も、もう一度!」

「くそう! もう一度だ!」


その後も何度も何度も繰り返したが、すべてスナイパー側の勝利。


全速力で駆け抜けても、壁を盾にしながら慎重に進んでもいつも撃たれてしまう。

ゴールへ近づくことすらできない。


「ちくしょう! みんなうますぎだろ!!」


結局、1度もクリアできずに悩んでいるとスナイピングアスレチックを紹介してくれた友達が声をかけた。


「よぉ、こないだスナイピングアスレチック行ったんだって?」


「面白そうだから参加してみたけど難しいな……1度もゴールできなかった。

 やっぱ、狙撃側のほうが楽なのかなぁ」


「バッカ。どう考えてもアスレチッカーのほうがかんたんだろ」


その言葉に思わずムッとした。


「うそつけっ。どう考えてもアスレチッカーのが難しいだろ!

 そっちもやってみたけど、開始早々に狙撃されちゃったぞ!」


「それはお前のやりかたが悪いからだろ」


「んなわけあるか。こちとら毎日欠かさずトレーニングして、

 軍隊での実戦経験もやったうえで参加して倒されたんだぞ!」


「アスレチッカー側にはゴールするためのコツがあるんだよ」


俺は友達にコツを教えてもらった。

その足で会場へまた向かうとスタッフも驚いていた。


「あんなにやられたのに、まだ挑戦するんですか!?」


「今度はクリアできそうな気がするんです」


「なるほど……ではスナイパー側ということで」


「いえ、アスレチッカーでお願いします」

「こないだ全然進めなかったじゃないですか……」


スタッフもしぶしぶながらアスレチッカーとして1名を登録した。

スナイパー希望者がそろうとゲームが開始された。

そして。



「おめでとうございます!! アスレチッカーでゴールできましたね!!」


俺はゴール地点で待つスタッフの祝福を受けた。


「正直おどろきました! 前回はスナイパーからあっという間に倒されてたのに!

 あれから特別な訓練でもしたんですか!? それとも立ち回りを計算したとか!?」


「いいえ、クリアするためのコツを使ったんですよ」


「コツ? そんな魔法みたいなものがあるんですか」


俺は友達から聞いたものをそのまま答えた。



「かんたんです。ビルの窓辺に下着の女性を立たせおけば、なぜか狙撃されなくなるんですよ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

スナイピングアスレチック攻略のコツ ちびまるフォイ @firestorage

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ