パーティーを組んだあの人は国一番の権力者

yama みそかす

第1話 迷宮での出会い

「ついにやってきた。今回は難関だ。皆、自分の命と仲間の命を第一に。イディア班とケアロス班は最も魔物が多いとされる南西部の洞窟、カレリカ班とシリア班は鉱物が多い北西部へ。迷宮都を集合地点とする。明日の早朝6時だ。解散!」

イディア班の一員である私、剣者ヴェレシア・バラトーンはイディア・カロスと一緒に南西奥の迷宮都を目指していた。

「この辺は魔物が多い。しかも最高階級ばかりだ。くれぐれも気をつけろ、ヴェレシア。」

「うん。わかってる。」

2人はしばらく黙ったまま、迷宮の奥へと進んでいった。





「そうだ。ヴェレシアおまえ、時使いというのを知ってはいないか?」

「時使い?」

「その名のとおり、時を司るものなのだが、セリランスの南の町に昔、時使いが住んでいたらしいんだ。いまだに謎が解明されてないんだけど、今年で始祖の誕生から1000年たったんだ。

もしかしたら今年中に2代目の時使いを見られたりして。」

「そうね。最先端攻略組の私たちのところにいち早く情報が回ってくるものね。それに時使いは何かといれば便利だし。」

さらにヴェレシアはイディアに尋ねた。

「そういえ始祖はどうなったの?」

「そこが問題なんだ。」

イディアは不思議そうにいった。

「神話によれば1000年前にこの迷宮にもぐったかぎりもどってきてないらしい。」

ヴェレシアはわかったようにいった。

「要するにあなたはこの迷宮になにかそれに関する手がかりがあると思うと」

「そういうことだな。」


ドォンという音と同時に天井の岩が落ちてきた。

「近くにいる。気をつけろ。」

「了解。」

その時だった。背後から大きな魔物の唸り声がした。

「なんだこいつは!」

2人が見た魔物は青い体をしていて、火薬を持っていたのだ。

「なによ、こいつ。火薬を自分で作ったっていうの!」

「これは予想外だ…」

そしてイディアは決心したようにいった。

「ひとまず、やつから火薬を奪え!」

「了解。」

イディアは重くて分厚い剣を抜くと、目では見えないくらいのスピードで正面から剣を振るった。

「前方右!」

「了解!」

イディアの合図にヴェレシアは素早く移動すると細くて丈夫なけんで魔物の手を切り落とした。

「だめだわ。どこを切り落としてもすぐ再生する!」

そうだな、とイディアはしばらく考えていった。

「こういうときはだいたい心臓だ。やつのコアをつぶせ!俺がおびき寄せるから、ヴェレシアおまえがコアをつぶすんだ!」

「了解!」

そう言うとイディアは魔物に一直線に向かっていった。

「すまないが少々あんたの体を切らせてもらう。」

イディアも目に見えないくらいのスピードで次々と体を切り落としていく。

「ヴェレシア行け!」

「了解!」

イディアの合図と同時に魔物の背後へ回ったヴェレシアは魔物の巨大な体を利用して心臓部に回りこんだ。

「はあぁー!!」

ヴェレシアの細い剣は魔物のコアにまっすぐと突き刺さっていた。

「行った!!待っ、て、、!」

ヴェレシアは焦りだした。魔物のコアから大量の熱い蒸気が出てきたのだ。

「イディア、逃げて!」

「あっつ、!」

その時だった。迷宮の乾燥した空気と熱い蒸気が触れて火が発生したのだった。


ドォォォン!


火薬に火が着火したのだ。凄まじい音とともに辺りは煙に包まれた。

魔物は倒していた。ヴェレシアは右腕にひどい火傷を負った。

「イディア!」

イディアは直接火薬のひのこのを浴び、服がボロボロになっていた。

「イディア!しっかりして!イディア!」

応答がない。ヴェレシアはイディアの厚めのマントを脱がすとイディアの心臓に耳を押し付けた。

ドクン、

(良かった…意識がないだけね…、)




ヴェレシアは自分の火傷を回復魔法で治すと、イディアをかついだ。

まだ15にもなっていないのにこの攻略組のサブリーダーを努めているイディアはこの時ヴェレシアの目にはとても弱々しく写っていた。













(ここなら大丈夫ね、)

そこは迷宮のオアシスだった。

「ちょっと待っててね。」

イディアを床に下ろすと、ヴェレシアはオアシスの水をすくいあげ、イディアに飲ませた。

「ごめんね、ちょっと痛いかも。」

そう言うと、回復魔法を使い、ヴェレシアは重傷のイディアの怪我を少しずつ治していった。


ひと段落したところでヴェレシアは周囲の見回りをしに少しイディアのもとを離れた。すると、50メートル先くらいのところに不思議な模様を見つけた。

「術?」

そこには床一面に直径10メートルくらいの術がはられていた。ヴェレシアはその円形の術跡の上に立ってみた。


「わぁっ!」

ヴェレシアの足もとの円形の術が突然動きだし、ヴェレシアは5センチほど持ち上がった術の上で呆然としていた。そのときだった。

「逃げろ!」

ヴェレシアがあわてて顔をあげると、1人の男がこちらに剣を振るってきたのであった。

「バディオ(封印)!」

男はやっと剣を振るうのをやめた。

「見苦しいことを見せて悪いな。」

「あ、」

「あんたが混乱するのもわかるよ、術の上に立ったら急に変な男に会ったなんて。」

ヴェレシアはなにがなんだかわかっていなかった。

「あんたには感謝するよ。」


「そういえばここに来る途中、魔物に出会わなかったか?」

ヴェレシアは言った。

「火薬を持ったなんだか変な魔物がいたわ。私はなんともなかったけどイディアが、、ほらこの通り。」

男はヴェレシアにもう一つ尋ねた。

「魔法が使える魔物は?」

「魔法?」

「ああ、魔法を使える魔物だよ。」

ヴェレシアはしばらく考えていった。

「そんなの見なかったよ、」

男は息をのんだ。

「まさか…


ドォォォォン!

ヴェレシアの後ろの方から大きな音がした。

「まずいぞ、これは…」

男は言った。

「おい、おまえはあそこにいる少年を守れ!あれは俺が仕留める!」

音の正体は大きな魔物だったのだ。

「わかった…」

ヴェレシアは少々不安であったが、男に全てを託すことにした。


男は魔物に向かって一直線に走っていった。


そこからは一瞬の早技だった。男は自身の魔法を使い、あっという間に倒してしまったのだ。

「何者なの…」

ヴェレシアは思わず声に出してしまった。

「時使いというのは知っているか?」

「うん…」

「時使いは昔、セリランスの南の商売町に生まれた。それは初めての出来事だったらしく、人々はひどく混乱し、また喜んだ。と言っても本当は時使いなど存在しなかった。彼が偶然一気に5つの魔法を使えただけに過ぎなかったのだ。そして、彼の父親はいいことを思いついた。分裂魔法で時使いの魂を二つに分け、同じ強さの時使いをもう1人作ろうとしたのだ。しかしそれは失敗に終わった。能力に偏りが出てしまったのだ。父親は諦めて2人を双子として育てたのだ。兄はできそこないの劣等者、弟は全ての権力を持つ優等者。彼らはすごく仲の良い兄弟であったが、ある日それは兄によって裏切られたのだ。」

男はさらさらとことを述べた。

「それって…」

ヴェレシアは悟った。

「そうさ、」

「俺の名はカロン・デトラリウス。別名、双子の優等者だ。」

「そんな…

ヴェレシアは唖然とした。

「1000年後もこの迷宮は生きていたのだな。そうだ君の名はなんだ?」

ヴェレシアは言った。

「ヴェレシア・バラトーン」

「そうか、よろしくヴェレシア。」

「よろしく、カロン。」


◆◆◆


「ヤダメス様、やつがやつの封印が解けました。今後どうするおつもりですか?」

「ディノン、やつを捕らえよ。あの日までにだ。決してやつにバレぬよう慎重にいけ。」

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