第2話 甘い指先にリップクリームを



5つ年上の憧れの先輩。



いつも仕事で私がミスした時に優しくフォローをしてくれる先輩が大好き。



ずっと見てるだけでいいと思っていた。



先輩が軽やかに打ち込むパソコンのキーボードを打つ姿をこっそり眺めることが出来るだけでよかった。



でも人生って何が起こるか分からないもの。



映画のタダ券を貰ったからって誘われて、今一緒に映画を観ている。



でも映画の内容なんて分からない。



だって、隣に座った先輩が私の手にその長い指を絡ませてくるから。



ドキドキしている私に先輩は言うの。



「俺の指が大好きなんだろ?いっぱい触ってやるよ」




私の手に触れている手とは逆の指先で、私の唇にそっと触れる。



「内緒な?」



「えっ?」



何が? と問う前にその指先が私の足に触れる。



「慣れないヒールで足が疲れたんじゃないか?」



もう映画どころじゃない。



身体が、触れられた場所から熱くなる。



「横向いて」



何も考えられなくてただ先輩の言葉に従う。



ペロッ



「あっ…」



…舐められた。



「ごちそーさま」



そう言ってニヤリと微笑まれると何も言えなくなってしまう。



真っ赤になって先輩を見詰めた瞬間、映画が終わったのか、パッと灯りがついた。



先輩は私を見て満面の笑みを浮かべて、ごそごそと胸ポケットをあさった。



「何をしているんですか?」



「ん?リップ取れちゃったから」



満面の笑みを浮かべたまま左手で私の顎を押さえて、右手の小指にリップクリームをたっぷりつける。



「俺の指、好きなんだろ?これからは毎朝塗ってやるよ」



私の唇に先輩の小指が器用にリップを塗っていった。






〈了〉

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