第104話 エリザダンジョン8

 ゴーレムが立ち上がると、やはり20mほどで、座っていた時の倍だ。つまり、上半身と下半身がほぼ一緒ということだろう。その割に腕は足先まで届きそうなくらい長い。その長い腕をこちらに向ける。


「……何だ?」


エンカはその手に何かされるのかと身構えたが、その腕はこちらに伸ばされたままピタリを止まる。


「何か来る! 避けろ!」


我の言葉でハッとしたのか、エンカは横っ飛びする。その瞬間、ゴーレムの指先が発光し、先ほどまでエンカが居た場所に穴が開く。


「何あれ! 何あれ!」

「魔法でもなさそうだし、何かしら」

「ん? 石がめり込んでいるようだぞ」


エンカは穴を見つめてそう告げる。どうやら指先の一部を高速で発射したらしい。その証拠に、よく見るとゴーレムの指先が少し欠けている。ただ、指先とはいえ全体が20mのゴーレムだ、欠片であってもこぶし大の穴が開いている。


「あんなのまともに受けたら死んじゃうじゃない! 降参、降参するわ!」


ミレは命の危険を感じて棄権を申し出る。


「まあ、ミレちゃんはしょうがないかー。じゃあバリアで守ってあげるね」


そう言うと、エリザはミレの周りにバリアを張った。ダンジョンマスター権限らしく、魔法の詠唱は無い。


「ふう、よかったー。それじゃあ、みんながんばって!」


命の危機が去って気楽になったのか、ミレは応援モードに入った……。


「私が行くわ!」


アクアがゴーレムに向かって突進する。すると、ゴーレムは片膝を立てて座る。すると、ゴーレムの膝が開き、中から筒状のものが出てきた。その筒状のモノは10本の筒を束ねたようなモノで……その筒が回転し……。


「ヒデブッ!」


アクアはミンチになった。血霧が舞う。カランとアクアが持っていた槍が地面に落ちると、ゴーレムの膝の筒の回転が止まった。


「……あたしも棄権していい?」


それを見てエンカも命の危険を感じたようだ。実際、アクアが攻撃されるまでゴーレムが何をしたのかまったく見えなかった。


「じゃあ、俺も」

「ノロイはまだ何もしてないでしょ!」

「ミレだって何もしてないだろ……」

「あんなの相手に私の護身術が通じるわけないじゃない!」

「そうねー。エンカちゃんはもう少しがんばってみて? ノロイはまだ何もしてないからダメ~」

「ミレじゃないが、あんなのとまともにやったら一瞬でアレだろうが!」


ノロイはアクアの肉片を指さす。一応、肉片が集まり始めてくっつきはじめているが。


「切り札を切るしか無いのではないか?」

「ちっ、しかたねーな。とっておきの切り札だぞ?」


ノロイはそう言って棺桶を開く。すると、中から小さな人形がいくつも出てきた。


「いけっ、ボムズ!」


ノロイが命令すると、小さな大量の人形がゴーレムへと向かって行った。

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