第97話 エリザダンジョン

「はい、という訳でここが私が作り直したダンジョンです!」

「いや……お主をダンジョンマスターにしたのは覚えているが……原型が無くないか?」


我の記憶がおかしくなければ、以前は自然の洞窟を模した入り口だったはずだ。それが今では入り口はまるでギルドの受付のようになっている。そして、自動的に何かチケットの様なものが発行される装置があり、それを受け取った冒険者が奥へと進んでいく。


「あれはなんだ?」

「ああ、あれは階層チケットと言って、希望の階層に転移できるチケットよ。ただし、行きだけね。帰りは自力で帰って来なきゃならないから、無意味に下の階へは行かないほうがいいと注意喚起はしているわ」

「そもそも、ここはそんなに深いダンジョンでは無かったはずだが?」

「言ったじゃない。世界最深のダンジョンを作るって。今じゃ50階層はあるわね」

「……やりすぎでは……それに、あれからそんな時間も経っていないと思うが」

「がんばりました!」


もはや誰も突っ込む気力は無い。なぜなら、今から我たち自身が挑むことになるダンジョンに、これ以上おかしな情報は欲しくないからだ。


「え? という事は、行きだけなら最深部にも転移できるってこと?」

「出来るわよ? ただし、命の補償はしないけど」

「私達には命の補償してよ!」


連れてきておきながら、命の補償は無いとはこれいかに。


「でもでも、ドロップ品の品質は保証するわよ? 今人気は10階層くらいかしら? そこからマジックアイテムがドロップするようになるわ。その代わり、10階層ごとにモンスターの強さは一気に変わるけど」

「10階層に行こう!」


ライカが目をきらきらさせながら提案する。


「いや、目的が違うだろう。我達が探すのは魔石だ」

「魔石は……そうね。良質のものが欲しいなら40階以降かしら? ちなみに、40階層からはドラゴンが雑魚敵よ」

「何その無理ゲー!」


我にとってはドラゴン程度なんともないが、普通の人間にとってはドラゴンに会うだけで死を覚悟するレベルだ。それが雑魚敵となると、無理と言いたくなるのは分かる。


「ちなみに、今我に使われている魔石はどの程度のものなのだ?」

「大型の魔物の中でも、リーダークラスの良質なやつだぞ。普通に市場で買ったら数千万はくらだん価値だ。まあ、うちは代々どこから手に入れてきたかわからねぇ素材が山ほどあるから、中にはもっと高価なものもありそうだがな。どこぞの王のミイラとか」

「そんなもの誰が欲しがるのだ……」


それなら、ドラゴンの魔石の方が上だろう。


「よし、それなら40階に……」

「だめよ。それじゃ面白くないもの」


ここにきてエリザが文句を言う。


「せっかく、私が、わざわざ作ったのに、あっさりと下層に行かれるのは気に入らないわ」

「いや、他の冒険者はチケットで……」

「あー、きこえなーい。あっ、チケットを発行する紙が切れたので今日のチケットは終了です」


そう言ってエリザはチケット発券機の紙を神の力で消滅させた。他の冒険者もブーブー文句を言っているが、エリザの「文句ある? あるなら1階の雑魚モンスターをサイクロプスにするわよ?」の一言でシーンとなった。

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